インフレが来ると株価には「上がっていく力」が働く
株式会社は、株主から資本を集めてビジネスを行なっています。株主は、金を出しているわけですから、会社の所有者です。「100万分の1オーナー社長」というイメージですね。
多くの株主が少しずつ会社を持っているわけですから、会社の利益は株主が配当という形で山分けします。会社が解散する時も、資産を売って借金を返した残りは株主が山分けしますから、会社が儲かったり財産が増えたりすれば、株主は将来戻って来る金額が増えると期待していいことになります。
オーナー社長との違いは、持っている株数だけです(笑)。オーナー社長の意見は株主総会で通りますが、零細株主の意見はあまり通らない、という違いはありますが、本稿の想定する庶民の株式投資は会社を経営することには興味がない、としておきましょう。
インフレが来ると、会社の売り上げもコストも増えますから、売り上げとコストの差額である利益も増える場合が多いでしょう。会社が持っている財産も将来高く売れるようになるでしょう。したがって、インフレが来ると株価には上がっていく力が働くのです。
株価は頻繁に変動する。長期的な観点で保有の継続を
株価は頻繁に変動します。短期的には、株価が本来あるべき水準より高くなったり低くなったりしますが、長い間持っていれば、本来あるべき水準の周りを回りながら動いていくわけですから、インフレになって本来あるべき株価の水準が上がれば、株価も上がっていくと考えてよいでしょう。
もっとも、会社によって成長する会社と衰退する会社はあるでしょうから、経済全体としてはインフレで株価が上がっていくとしても、株主全員が利益を受けるわけではありません。
たまたま株を持っている会社が衰退してしまうと、株価が長期的に下がってしまうことになりかねませんので、そうしたリスクに備えておく必要があります。最も簡単なのは、多くの会社の株を少しずつ持つことです。
なかには大儲けできる株と大損する株があるでしょうが、平均すればインフレで値上がりして儲かると期待できるからです。具体的には、投資信託を買うことで、多くの会社の株を少しずつ買ったのと同じ効果が得られますから、手軽でいいと筆者は考えています。
つまり、日本がインフレになれば、株が値上がりするので、老後資金の一部を株で持っておけば、その部分については目減りが避けられるのです。
ちなみに、インフレが来ると日銀が金融を引き締めるので、株価が一時的に暴落する可能性もあります。しかし、インフレが収まれば日銀が金融を緩和するので、老後資金で買った株は長い目で見て持ち続けましょう。金融引き締め時に株価が暴落したのを見て狼狽売りをしてしまうことだけは避けましょう。
米ドルが「日本のインフレに強い」ワケ
米ドルも、インフレに強い資産です。それを理解するためには、「日本と米国の物価が同じになるようにドルの値段が決まる」という理屈から考えてみましょう。日本がインフレになって物が値上がりすれば、人々は「米国で買った方が安い」と考えて、米国に買い物に行きます。
米国で買い物をするためには銀行でドルを買う必要があります。多くの人が米国に買い物に行けば、銀行には大量のドル買い注文が来るので、ドルは値上がりするでしょう。
どこまで値上がりするかといえば、人々が「日本と米国で同じ値段なら、日本で買うから米国に買い物に行く必要はない」と考えるようになるまで、です。
つまり、日本がインフレになれば、ドルが値上がりするので、老後資金の一部をドルで持っておけば、その部分については目減りが避けられるのです。
米ドルが「米国のインフレに弱い」ことも忘れずに
日本がインフレになるリスクを考えると、ドルを持っていることが安心なのですが、米国がインフレになるリスクを考えると、ドルを持っているのはリスクです。米国人がドルを円に替えて日本に買い物に来るようになると、ドルが値下がりしてしまうからです。
しかし、それを回避する方法があります。日本のインフレのリスクに備えるためには米ドルを持つのがよく、米国のインフレのリスクに備えるためには米ドルを使って米国の株を買えばいいのです。
具体的には、多くの米国株を少しずつ買ったのと同じ効果が得られる米国株の投資信託を持っておけばよいでしょう。
米ドル以外の外貨もインフレには強いが…
米ドル以外の外国通貨も、日本がインフレになれば値上がりする可能性が高いわけですが、途上国の通貨には高いリスクがあるかもしれませんから、慎重に検討しましょう。
特に、高金利通貨として金融機関に勧められる通貨については、なぜ高金利なのかを考えてみる必要があります。「世界中の銀行から安い金利で借りようとしたが、失敗したから、高い金利で私から借りようとしている」ということなのです。
高金利通貨への投資も、悪いとは思いませんが、大切な老後資金を投入するのではなく、小遣いの範囲内で賭けごとのつもりで投資してみる程度にしておきましょう。
本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
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塚崎 公義
経済評論家
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