(※写真はイメージです/PIXTA)

未婚率と高齢化率の上昇が止まらない日本。今後も結婚しない人は増加の一途をたどると推察されている。現在の「おひとり様高齢者」のなかにも、厳しい状況に置かれている人が一定数以上存在するが、懸念されるのはやはり「おひとり様高齢者予備軍」となる人たちだ。状況を見ていく。

かつては自由の証左だった「未婚者の増加」だが…

時代の移り変わりのなかで、大きく様変わりした日本人の婚姻の状況。近年も上昇が止まらない「未婚率」だが、上昇が目立ちはじめたのは1985年のあたりだった(下記図表参照)。

 

経済に勢いがあったバブル前からバブル当時は「独身貴族」なる言葉があり、配偶者や子どもを持つことよりも、自身の収入を自由に使って人生を謳歌することに熱心な人たちが注目されていた。この時代の未婚者の増加は、豊かな社会と価値観の多様化の証左だと考えられていた。

 

その後、長い不況へと突入。未婚率は変わらず上昇を続けてきたが、その背景はバブルのころと異なり、収入や職業の不安定さといったネガティブな要素が影響を及ぼしていると推察されている。

 

50歳になった時点で一度も結婚をしたことがない人の割合だが、内閣府『令和4年版 少子化社会対策白書』によると、2020年では、男性28.3%、女性17.8%だった。

 

出所:「令和4年版 少子化社会対策白書」第1部 少子化対策の現状(第1章3)
[図表]50歳時の未婚割合の推移 出所:「令和4年版 少子化社会対策白書」、第1部 少子化対策の現状(第1章3)

「おひとり様の高齢者」、想像以上に増えている

このような流れのなか、「おひとり様の高齢者」も増えている。

 

『令和2年国勢調査』によると、全国5,570万4,949世帯のうち、「65歳以上世帯員がいる世帯」は2,265万5,031世帯。また「65歳以上世帯員のみの世帯」は1,307万3,898世帯。さらに「おひとり様の65歳以上世帯」は671万6,806世帯。5年前の調査から113%増となった。

 

★高齢者単独世帯数の推移

 

1980年:881,494世帯

1985年:1,180,723世帯(133.9%)

1990年:1,623,433世帯(137.5%)

1995年:2,202,160世帯(135.6%)

2000年:3,032,140世帯(137.7%)

2005年:3,864,778世帯(127.5%)

2010年:4,790,768世帯(124.0%)

2015年:5,927,686世帯(123.7%)

2020年:6,716,806世帯(113.3%)

 

出所:総務省統計局『国勢調査』より

※(かっこ)内は前回調査からの増加率

 

また年齢別にみていくと、「65~69歳」が133万1,095世帯、「70~74歳」157万8,003世帯、「75~79歳」131万4,415世帯、「80~84歳」115万8,972世帯、「85歳以上」が133万4,321世帯。5年前と比較して、「85歳以上世帯」が139.9%増と長寿化の結果が色濃く反映されている。

 

都道府県別では、世帯数が最も多いのは「東京都」で81万1,408世帯。一方、総世帯数に占める割合が最も高いのが「高知県」で17.77%。5~6世帯に1世帯は、おひとり様高齢者という水準だ(関連記事:『都道府県「おひとり様高齢者率」ランキング…令和2年国勢調査より』)。

おひとり様高齢者、4人に1人が「経済的余裕なし」

高齢となった「おひとり様」の生活ぶりだが、金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和3年』によると、「金融資産を保有していない」と回答したおひとり様の割合は、60代で28.8%、70代で25.1%だった。ここでいう「金融資産」は「運用や将来に備えて蓄えている部分」、つまり、経済的に余裕のないおひとり様高齢者は4人に1人以上となっている。

 

※ 本調査では「定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用のため、または将来に備えて蓄えている部分とする。ただし、商・工業や農・林・漁業等の事業のために保有している 金融資産や、土地・住宅・貴金属等の実物資産、現金、預貯金で日常的な出し入れ・引落しに備えてい る部分は除く」としている。

 

しかし、「金融資産あり」と回答したからといって余裕があるとは限らない。

 

「金融資産あり」と回答したおひとり様高齢者の「金融資産保有額」だが、60代平均で2,645万円、中央値は1,180万円。70代で平均2,396万円、中央値で1,380万円。ライフスタイルにはよるものの、これだけ見るなら余裕のあるセカンドライフが可能と思われる金額だが、一方で、「金融資産あり」とはいえ保有額300万円未満の層も、60代で21.1%、70代で15.1%と、少ないとはいえない割合だ。「プラスαの資産の保有=悠々自適」とはいいきれないのである。

 

総務省『家計調査 家計収支編』(2022年)によると、65歳以上の単身世帯、1ヵ月の消費支出は平均14万9,208円。一方、厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、高齢者の生活のベースとなる年金額は、老齢厚生年金で平均月14万5,665円。つまり「平均的なおひとり様高齢者は、年金だけではお金が足りない」ことになる。

就職氷河期世代が高齢者となったら…

懸念されるのは、就職氷河期世代の高齢化だ。景気がよく、なおかつ正社員の立場での就労が一般的だった時代を過ごした高齢者の現状がこれだとすると、就職氷河期で割りを食らった彼らはどうなるのであろうか。

 

収入面の懸念から結婚がかなわずやむなく独身となり、その後は孤独に年齢を重ね、ついに働けなくなれば貧困の危機――。その先に見えるのは「破産」だ。

 

将来起こりうるこのようなリスクに備え、今からでも少しずつ老後資産の形成を行うことが重要だといえる。また同時に、国もいますぐこの問題に取り組み、日本に暮らす人たちの老後不安を少しでも軽減すべく、何らかの解決策を探すことが重要ではないか。

 

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