ポケモンGOのスポンサー「マクドナルド」
たとえばマクドナルドです。マクドナルドは、2016年にナイアンテックとスポンサー契約を締結しました。ポケモンGOの国内における1日のアクティブユーザーは常に220万人以上とされ、多いときには250万人にものぼるとされています。
もしもこのうち10%のユーザーがマクドナルドの店舗へ誘導されると、22万人になります。マクドナルドの平均の客単価は570円とされていますが、仮に一番安い150円の飲み物をユーザーが買ったとしても、1日の売り上げは3,300万円になり、年間では約1,200億円の売り上げになるという計算になります。
もちろん、これらの数字は机上の計算ではありますが、企業にとっては売り上げアップにつながる、非常に魅力的なものであることが理解できます。テレビや雑誌といったメディア媒体に高いお金をかけるより費用対効果がよく、企業にとってナイアンテックへの支払いは決して高くはないわけです。
つまり、ARの人を誘導する力とポケモンの高い認知度を掛け合わせ、一般のユーザーを特定の場所へ誘導してお金を落としてもらう仕組みが、このポケモンGOなのです。
「人手不足解消」の手段にもなるAR
ARはさまざまな活用方法があります。日本の場合、特に注目すべきは人材不足の問題ですが、ARはこの人手不足を解消する有効な手段となり得ます。
たとえば、CGモデルで複雑な機械や設備を再現し、アニメーションを使って設備や機械のメンテナンスのトレーニングを行うことができます。また、倉庫における在庫のピッキングでは、作業員はARグラスをかけ、グラスに投影される製品置き場への案内やピッキングする在庫品の情報などを見ることで、効率のいい作業ができます。
ウェディング業界でビジネスを28年間展開している、株式会社ファーストページの小池社長は、“ウェディング業界では人手不足の問題を抱えており、ARの可能性について、ウェディングドレス試着などへのARの活用は確実にドレスの試着の短縮や人手不足の解消に貢献する”と述べています。
ARはマーケティングのみならずトレーニングやメンテナンス作業、インストラクションの分野においても非常に有効なツールなのです。
今後さらに整えられるARの利用環境
AR普及の鍵となる日本のスマホの普及率は、令和3年の総務省の情報通信白書の調査によると、90%弱に達しています。またマイクロソフトは、ARのホロレンズをすでに開発・販売し、ビジネスの世界で実際に利用されるようになりました。アップルもARアップルグラスを開発しており、近々販売されることが予測されています。
総務省によると、2023年には5Gの人口カバー率が90%を超えると予測しており、ARを利用する環境は今後ますます進化すると考えられます。
それにより、ARは一般ユーザーにとって、より一層手軽に利用できるテクノロジーになり、企業にとっては、ビジネスの規模に関係なく、インフラとして今後なくてはならないツールになるでしょう。
石光 正彦
34LLCコンサルティング
代表 米国公認会計士
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