(写真はイメージです/PIXTA)

アフリカの世紀とされる、21世紀。今年1月にはアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の運用が開始されました。今後にのアフリカについて、ニッセイ基礎研究所の斉藤誠氏によるレポートです。

世界人口はアフリカを中心に増加へ

国連の世界人口推計(2022年7月発表)によると、世界人口は2022年に80億人を突破した。中国は2016年まで一人っ子政策を続けた影響で少子化に歯止めがかからず、2022年に人口減少に転じ、2023年にはインドが中国に代わり人口世界一の国になるとみられている。

 

今後、世界人口は2037年頃に90億人、2058年頃に100億人を突破した後、2080年代に約104億人でピークを迎えると予測されている。地域別にみると、これまでの世界人口の増加はアジア中心だったが、2050年までに増加すると見込まれる人口の過半数はナイジェリア、コンゴ民主共和国、エジプト、エチオピア、タンザニアなどサブサハラアフリカの国々が中心になっていく(図表1)

 

人口増加は理論上、労働投入量の増加や社会保障負担の減少、貯蓄率の上昇などが経済成長にプラスに働くため、アフリカの潜在成長力は非常に高いと言える。しかしながら、必ずしも成長が約束されている訳ではない。経済成長の波に乗るには、急激な労働力人口の増加に見合った雇用の創出が必要だ。仮に雇用が不足したまま人口の増加が進むと、飢餓の深刻化や保健・教育制度の普及が困難になるほか、スラム人口が増加するなど貧困問題が悪化する可能性もある。

 

そのため、雇用の受け皿となる産業として食品加工や縫製、製靴といった雇用創出能力の高い労働集約型の製造業を育成する必要があるが、アフリカは経済規模が比較的小規模な国が多い上、法制度やインフラの未整備、汚職や治安などの問題を抱えていることもあり、これまで先進国からの投資が伸び悩んできた。その結果、アフリカでは工業化が進まず、原油や天然ガス、金などの一次産品が輸出の大半を占める脆弱な経済基盤が続くこととなっている(図表2)

 

【図表1】【図表2】
【図表1】【図表2】

単一市場創設により域内貿易活性化へ

アフリカでは現在のモノカルチャー経済から脱却するための取組みの1つとして、2021年1月にアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の運用が開始されている。

 

AfCFTAはアフリカの物品関税の撤廃、サービス貿易や投資を促進する自由貿易協定であり、アフリカ連合(AU)に加盟する55カ国・地域を結び付け、EUのような単一市場の創設を目指している。(現在、エリトリアを除く54カ国・地域が署名、44カ国・地域が批准)。AfCFTAにより人口規模13 億人、GDP3.4兆ドルの自由貿易圏が出来上がれば、アフリカ企業が複数国にビジネスを展開するようになるのは勿論、アフリカに進出する海外企業もより広大な市場にアクセスできるようになるため海外直接投資が拡大するだろう。その結果、域内貿易が加速するだけでなく(図表3)、雇用機会の創出や貧困削減などアフリカ大陸の持続的な経済発展に寄与することが期待されており、長期的には国際市場におけるアフリカの存在感も増していくものと考えられる。

 

【図表3】
【図表3】

 

世界銀行の報告書*1によると、AfCFTAによる関税と非関税障壁の撤廃が機能すれば2035年までに実質所得が7%(約4450 億ドル)押し上げられ、4,000万人が極度の貧困状態から抜け出すことができる可能性がある。

 

現在、AfCFTAは物品貿易ではタリフライン(関税率表の細目)ベースで90%以上の関税撤廃と、サービス貿易に対する障壁の削減に着手しているが、繊維や自動車など一部の原産地規則に関する交渉が終わっておらず、また各国が提出する譲許表*2も出揃っていないため、実質的には取引が始まっていない。

 

2023年2月に開催されたアフリカ連合首脳会議(AUサミット)では2023年のAUのテーマとして「AfCFTAの年:アフリカ大陸自由貿易圏の実施の加速」が採択された。政治的コミットメントが高まり、AfCFTAの本格的な運用に向けて加速していくことが期待される。

 

*1:The World Bank (2022) ”Making the Most of the African Continental Free Trade Area”

*2:個別品目の関税撤廃・削減の方法やスケジュールについて規定された表。

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年3月1日に公開したレポートを転載したものです。

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