国によって異なるインフレ事情
永濱:ただですね、アメリカのインフレ率は8%に対して、賃金は5~6%しか上がっていません。つまり、物価上昇が賃金上昇を上回ってしまっているんですね。
先進国の国際標準になっているインフレ目標は2%程度です。さすがに8%も上がると、賃金上昇はなかなか追いつかないので、消費者にとっては心地の良い物価上昇率ではないですね。
また、新型コロナやウクライナ侵攻などの影響で、世界中のモノやサービスの値段が上がっています。
そういった意味では、悪いインフレの側面もあります。
やすお:ヨーロッパもインフレが進んでいるのですか?
永濱:はい、進んでいます。日本ほどは悪くないけれども、悪いインフレの国のほうが多い印象です。
イギリスは需要が旺盛なのでアメリカと似た感じですが、EUは微妙ですね。加盟国によって違いはあるものの、ドイツやイタリアがロシアからたくさん化石燃料を輸入していたのが輸入できなくなり、エネルギーのコスト負担が上がっていますから。
やすお:面白いですね。インフレにも良い悪いがあるし、良いインフレ、悪いインフレのなかでも良い、悪いの度合いがあるなんて。
永濱:そうですね。ただ間違いなく言えるのは、日本の場合は100%「悪いインフレ」だということです。
こんな状況では、絶対に利上げはできません。お金が借りにくくなり、ますます景気を冷やしてしまうからです。
一方、アメリカは需要が過熱しているという要因もあるので、そこは利上げで抑えなければいけない。そういう違いがありますよね。
永濱 利廣
第一生命経済研究所
首席エコノミスト