(※画像はイメージです/PIXTA)

会社の社長・役員が、株主や取引先等から、個人として、高額な損害賠償を請求される事例が急増しています。しかし、賠償リスクの萎縮効果によって会社役員のなり手がいなくなっては、会社、ひいては取引社会全体が立ち行かなくなります。そこで、賠償リスクに備える「役員賠償責任保険(D&O保険)」を活用することが必須となりつつあります。本記事では、その補償内容について解説します。

役員賠償責任保険(D&O保険)とは

役員賠償責任保険は、役員としての個人責任を問われ、損害賠償金の支払い義務を負うことになった場合に、賠償金等の額をカバーするものです。

 

会社が役員のために契約するものです。なお、保険料は、原則として株主総会決議(取締役会設置会社の場合は取締役会決議)を経れば、会社の経費(損金)として計上することができます。

 

賠償責任の性質は、おおむね以下の2つに分けられます。

 

1. 取引先・顧客、従業員等の「第三者」に対する責任(対第三者責任)

2. 会社に対する責任

 

役員賠償責任保険は、役員個人がこれらの賠償責任を問われた場合に、賠償金のほか、以下の費用をカバーしてくれます。

 

・訴訟費用

・弁護士費用

・初期対応の費用

・内部調査の費用

 

また、多くの保険会社では、加入より10年前の行為まで遡って補償対象としています。これは、役員の責任の重大性に鑑みたものであり、保険の補償範囲としてはかなり特殊といえます。

 

以下、上述した2種類の法的責任のそれぞれについて解説します。

取引先・顧客、従業員等の「第三者」に対する責任(対第三者責任)

取引先・顧客、従業員等の「第三者」に対する責任(対第三者責任)は、以下のいずれかです。

 

・民法上の「不法行為責任」(民法709条)

・会社法上の「対第三者責任」(会社法429条)

 

「対第三者責任」(会社法429条)における「第三者」は、典型的なのは取引先・顧客ですが、自社の「従業員」も含まれることがあります。

 

なぜなら、会社は独立した法人格を持っており、会社からみれば、従業員は別人格をもつ「第三者」ということになるからです。

 

なお、その理屈からすれば、「株主」も「第三者」にあたる可能性があります。しかし、判例・通説によれば、株主による役員の責任追及は、特段の事情がない限り、後述する「株主代表訴訟」等を通じて行うべきとされています。

 

◆取引先・顧客からの責任追及

取引先・顧客からの責任追及は、以下のようなケースが考えられます。

 

・会社が倒産し、顧客の売掛債権が回収不能になったことについて責任を問われた

・製造・販売した商品が欠陥商品であり、それによって被害を受けた顧客から管理責任を問われた

・業務提携をしていた会社と提携解消したところ、その会社が提携中に支払ったコストが無駄になったことについて責任を問われた

 

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