「不正競争防止法」とは?
今回の事件で問題になっているのは「不正競争防止法違反」です。
不正競争防止法は、事業者間の公正な競争等を確保することを目的として、不正競争を防止するためのルールを定めた法律です。
公正な競争を侵害する以下の10の行為類型について、広く規制しています。
1.周知な商品等表示の混同惹起(刑事罰あり)
2.著名な商品等表示の冒用(刑事罰あり)
3.他人の商品形態を模倣した商品の提供(刑事罰あり)
4.営業秘密の侵害(刑事罰あり)
5.限定提供データの不正取得等
6.技術的制限手段の効果をさまたげる装置等の提供(刑事罰あり)
7.ドメイン名の不正取得等
8.商品・サービスの原産地、品質等の誤認惹起表示(刑事罰あり)
9.信用毀損行為
10.代理人等の商標冒用
被疑事実は「営業秘密の侵害」
「4.営業秘密の侵害」「5.限定提供データの不正取得等」「6.技術的制限手段の効果をさまたげる装置等の提供」は、他人の事業上の機密情報を不正に入手、使用、第三者に開示する行為をさします。
かっぱ寿司の事件で問題となっているのはこれらのうち「4.営業秘密の侵害」です。
仕入価格、仕入先当の情報は、一般に、事業活動の根幹にかかわる機密情報であり、「営業秘密の侵害」にあたります。「営業秘密侵害罪」という犯罪に該当し、「5億円以下の罰金」が規定されています。
具体的な被疑事実は、前社長と、元商品部長とで、それぞれ以下の通りです。
【前社長の被疑事実】
・カッパ・クリエイト社の社長就任前に勤務していたライバル会社の「はま寿司」を退職する直前、仕入価格や仕入れ先等のデータを持ち出した
・カッパ・クリエイト社の社長に就任後も、はま寿司の従業員からメールでそれらの情報を入手していた
【元商品部長の被疑事実】
・前社長から受け取ったデータを他の従業員にメールで転送した
・「かっぱ寿司」と「はま寿司」の商品原価を比較するデータファイルを作成した
なお、カッパ・クリエイト社本体が起訴されたのは「両罰規定」に基づいています。これは、役員・従業員等がこれらの事実につき刑事罰を負う場合、法人本体も原則として「罰金刑」を科されるというものです。
営業秘密侵害罪の場合、「5億円以下の罰金」が科されます。しかも、この罰金刑は、被害者に対して支払わなければならない民事上の損害賠償とは別です。
カッパ・クリエイト社は、役員・従業員の選任・監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽くしたことを立証しない限り、罰金を支払う義務を免れません。