「ショート動画ブーム」による可処分時間の奪い合い
2023年2月1日から、「YouTube Shorts」の収益化が始まった。
「YouTube Shorts」とは、最大60秒までの縦型動画を投稿できるYouTube内の機能のひとつ。2021年7月にサービスを開始した。「ショート動画ブーム」の昨今、InstagramやTikTokなどさまざまなプラットフォームがあるなか、ユーザーの可処分時間をより多く獲得し、少しでも長くアプリに滞在してもらうことが狙いだ。
YouTubeがこのようなサービスを導入し、今回収益化に至った背景として、同じショート動画プラットフォームとして地位を確立している「TikTok」との差別化があるのではないだろうか。TikTokの全世界の月間アクティブユーザー数は10億人を突破し、先日Apptopiaが発表した2022年ダウンロードランキングでは6億7,200万インストールを記録。昨年「世界で1番インストールされたアプリ」となった。
このようにいま世界でもっともホットなアプリであるTikTokだが、日本ではまだ再生回数に応じた収益化の仕組みは実装されていない。クリエイターがマネタイズするには、企業の商品をPRする(いわゆる「プロモーション動画」の作成)、ほかにはライブ配信で視聴者から投げ銭を得るなど、限られた方法をとるしかない。
今回のYouTube Shortsの収益化に伴い、日本のショート動画市場がさらに白熱し、今後「YouTube Shorts」と「TikTok」のどちらが市場の覇権をとるか注目が集まっている。
YouTube ShortsとTikTokの違い
YouTube ShortsとTikTokの具体的な違いは下記図表のとおりである。
YouTube Shortsは、YouTubeという巨大な動画プラットフォームの特性を活かし、TikTokに比べて利用者が多く、年齢層も幅広いといわれている。一方でTikTokは若年層の利用者が多く、トレンドや「バズ」が生み出されやすいのが特徴的だ。それぞれのフィードに流れる仕組み(アルゴリズム)にほとんど差異はないが、そもそものYouTubeとTikTokでは成り立ちが大きく異なり、各プラットフォームの特性を理解するうえで重要な意味を持つ。
YouTubeがユーザーに与えた「新しさ」とは?
YouTubeはもともと、テレビなどのマスメディアに対するアンチテーゼとして生まれたサービスとして考えるとわかりやすい。
YouTubeが画期的だったのは、観たい番組があっても決まった時間に決まった場所(家など)でしか視聴できないテレビと異なり、スマホがあればいつでもどこでも観られるという点だ。さらに、テレビは“ひな壇芸人”という言葉が象徴するように通常大勢の人たちによって構成されているが、YouTubeは少人数で撮影・編集が行われるために視聴者それぞれの「推し動画」を観ることができる。
また、YouTubeは視聴回数がチャンネル登録者数と比例し、人気であればあるほど多くの人に「検索」され、結果的に多くのユーザーに動画が見られる仕組みとなっているのが特徴的だ。
TikTokが生み出した「新しさ」とは?
一方で、TikTokはそんなYouTubeのサービスに対するアンチテーゼとして生まれたプラットフォームであると考える。
スマホを横にする必要がない「縦型動画」、推し動画を検索する必要がないAIを活用した「レコメンドシステム」、長尺動画を見るのが億劫になってきた若年層に向けた「ショート動画」……。結果的にトレンドに敏感な若年層を中心に、一気に世界中へ広まった。
このようにして加速度的に勢いを増すTikTokに対し、無視できなくなったYouTubeが自分たちのこれまでの技術を集結させたショート動画サービスこそが「YouTube Shorts」である。
そして今回、YouTube ShortsがTikTokでまだ実装しきれていない「収益化」を実現したことで、まさに「追いつけ追い越せ」の状況がここ数年、両者間で行われるようになったと感じる部分がある。
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