(※写真はイメージです/PIXTA)

相続トラブルはできれば避けたいもの。とはいえ、富裕層でもない限り、ドロ沼の相続争いなんて無縁だろう……と考えている人も多いでしょう。しかし、「相続争いの4分の3は“財産額5,000万円以下の家庭”で起こる」と、元税務調査官の税理士、秋山清成氏はいいます。今回、相続専門40年のベテラン税理士秋山氏が「争族」に発展しやすい6つのケースと、それぞれの解決策についてみていきましょう。

「1人だけ介護」「極端な遺言書」もトラブルのもとに

4.特定の人物だけが亡くなった人の介護をしていた

特定の人物だけが亡くなった人の介護をしていた家族も、相続争いが発生しやすいです。親と同居する長男家族が、長年、認知症を患う親の介護をしていました。その親が亡くなり、いざ、相続となったときに、独立して家に寄りつかず、親の介護をしなかった次男や三男が、兄弟間での均等な遺産分割を主張するというケースがあります。

 

長男の立場からすると、自分と妻は長年、親の介護をし、最後を看取ったのに、何もしなかった次男や三男と同じ金額しかもらえないのは納得できないでしょう。このような家族の解決法は、親が認知症を患っていないのであれば、長男に対して感謝の意味を込めた遺言書を作成しましょう。

 

もし、親が認知症を患い、遺言書の作成ができない場合は、「寄与分」という法制度があります。これは、「亡くなった人の生前に、相続人が療養看護その他の方法によって、亡くなった人の財産の維持や増加について特別の寄与をした場合には、その分、他の相続人に対し多くの財産を相続することができる」というものです。

 

このケースであれば、長男が寄与分を兄弟に主張し、それで納得を得られれば、長男は親を介護した分を寄与分制度に定められた範囲でもらうことができます。長男の主張が通らない場合は、家庭裁判所に調停を申し立て、遺産分割調停や遺産分割審判を受ける手段もあります。

 

5.亡くなった人が極端な遺言書を書いていた

相続争いを回避するために遺言書を作成するのは有効な手段ですが、内容が極端に偏っていると相続争いのもとになることがあります。

 

遺言書は決して万能ではありません。作成者の偏った考え方や、過去の援助額を無視した遺言書を残すと、遺言書がない場合よりも相続人同士が揉める原因になります。偏った内容とは、「全財産を長男に相続させる」「全財産を妻(後妻)に相続させる」、逆に「次男には一銭も相続させない」、稀(まれ)に「他人に相続させる」「全額を寄附する」と書かれる人もいます。

 

このような極端な内容の遺言書だと、財産をもらえない相続人は「はい、そうですか」とすんなり納得できるわけがありません。「この遺言は無効だ」と争いに発展していくでしょう。

 

親が遺言書を作成するなら、自分の考えを遺言書にまとめた後、子どもの前で読み聞かせることをお勧めします。同じ内容の遺言書でも、活字で読むのと、親の口から直接聞くのとでは、相続人の受ける印象がまったく違うからです。

 

お盆や正月など子どもたちが一堂に会したとき、財産の内容を公表し、自分のどの財産を、どのような理由で、誰に相続して欲しいという気持ちを具体的に伝えましょう。

 

このとき肝心なのは、子どもの配偶者も同席させること。相続争いが生じて話が余計にこじれる原因の多くは、「もらえる権利があるのなら、もらったほうがよい」という相続人ではない配偶者の意見であることも見受けられます。冷静な目で子どもの意見や反応を確かめ、改めて遺言書を作り直すと、相続争いが少なくなるでしょう。

 

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※本連載は、秋山清成氏による著書『元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全

元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全

秋山 清成

KADOKAWA

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