3―台湾と中国本土の貿易~両者は電気機器・部品などを盛んにやり取りする関係
台湾にとって中国本土は極めて重要な貿易相手である。台湾の輸出先を見ると(図表3)、中国本土が全体の3割弱を占め、香港を含めると4割を超える。輸入元として見ても中国本土は(図表4)、全体の2割強を占め、日本を上回り、米国の2倍超のシェアがある。
一方、中国本土から見ても台湾は有力な貿易相手で、特に輸入元としては最重要である。中国本土の輸出先を見ると(図表5)、米国が2割弱を占める第1位で、台湾は2%強にとどまる。しかし、輸入元としては、有力な貿易相手である韓国・日本・米国を抑えて第1位である(図表6)。
それでは、台湾と中国本土はどんなモノを貿易しているのだろうか。中国本土が台湾へ輸出しているモノを見ると、「電気機器・部品」が44.8%、「工業原料類」が21.9%、「機械・部品」が14.2%で、これらを合わせると8割を超える。残る2割は「生活用品類」、「食品類」などである。
一方、中国本土が台湾から輸入しているモノを見ると、「電気機器・部品」が約7割と飛び抜けている。残る3割も「工業原料類」、「機械・部品」、「精密機械・部品」がほとんどで、「輸送機械・部品」、「生活用品類」、「食品類」、「エネルギー類」はどれも1%未満でしかない。
このように台湾と中国本土は「電気機器・部品」を中心に「工業原料類」、「機械・部品」、「精密機械・部品」などを盛んにやり取りする関係と言える。このことは「電気機器・部品」などを製造する供給網(サプライチェーン)が緊密に結び付いていることを示す。
4―台湾と中国本土の投資~台湾から中国本土への一方通行の色彩
台湾にとって中国本土は極めて重要な投資先でもある。台湾の対外投資を見ると(図表7)、中国本土への投資は2010年代計で約951億ドルと全体の5割を超えている。対米国が5.3%、対欧州が4.7%、対日本が4.4%に過ぎないことを踏まえれば突出している。中国本土にとっても台湾からの投資は重要である。日本や韓国からの投資ほどではないが、米国・ドイツと並ぶ存在感がある。そして、この台湾の対中投資が両者のサプライチェーンを緊密に結び付けた背景でもある。
一方、投資元としての中国本土は台湾にとって目立つ存在ではない。台湾の対内投資を見ると(図表8)、中国本土からの投資は2010年代計で約23億ドルと全体の3%以下にとどまる。欧州が4割近くを占め、日本も8.9%を占める中では存在感が薄い。その背景には台湾が厳しく規制していることがある。したがって、両者の投資関係は台湾から中国本土への一方通行に近いと言える。
5―台湾と中国本土の人的交流~平常時は日本と同等も、緊急時にはその重要性が垣間見られる
最後に台湾と中国本土の人的交流を確認しておきたい。
両者の人的交流は言葉が通じることもあっては盛んである。台湾交通部観光局が発表した出入境の統計を見ると、コロナ前(2017年~19年の平均値)は、日本と中国本土がそれぞれ全体の4分の1を占めるトップで、香港・マカオが14.5%、韓国が7.8%などとなっていた。そしてコロナ後の2021年、台湾への出入境者はどこの国・地域からも激減したが、日本が4.8%と大きくシェアを落とした一方、中国本土は28.4%とシェアを増やした。台湾と中国本土の人的交流はこうした緊急事態下でも完全には止め切れない重要性があるのだろう。
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