「首都直下地震」30年以内の発生確率は70%…恐ろしい「最悪の被害想定」の中身

「首都直下地震」30年以内の発生確率は70%…恐ろしい「最悪の被害想定」の中身
(※写真はイメージです/PIXTA)

世界有数の地震大国・日本。全国どこにいても決して安心できない以上は、大地震が起こることを前提とし、自分にできる対策を今から打っておくことが重要です。本稿では、対震構造の開発・普及に努める谷山惠一氏が、「首都直下地震」で想定される具体的被害について解説します。危機意識を高め、必要な地震対策を考えるための情報として押さえておきましょう。

30年以内に「首都直下地震」が発生する確率は70%

政府の地震調査研究推進本部は、今後30年以内(2021年3月26日公開)に震度6弱以上の激しい揺れに見舞われる確率を記した「全国地震動予測地図」を公表しています【図表】。なお、震度6弱は、古い木造住宅やブロック塀などが倒壊する目安とされています。

 

【図表】全国地震動予測地図

 

この予測地図を作成する際に用いられるデータは、地域防災対策や損害保険の料率設定、学校施設の耐震化の優先順位付けなどに使用されるほど信頼度の高いものです。

 

予測地図は、地域ごとの30年間に震度6弱以上の地震発生確率を0%以上、0.1%以上、3%以上、6%以上、26%以上に色分けしています。それぞれ約3万年、約1000年、約500年、約100年に一度、震度6弱以上の揺れが発生することを示しています。

 

この図を見ると、地震の発生率が非常に高い日本のなかでも、特に関東・東海・四国地方といった太平洋側で強い揺れが発生する確率が高いことが分かります。これはプレート境界線の影響です。

 

震度6弱以上の地震発生確率は、市町村ごとに公表されており、その上位は次のようになっています。

 

1.水戸市 81%

2.根室市 80%

3.高知市 75%

3.徳島市 75%

5.釧路市 71%

 

関東においては、以前から首都直下地震が懸念されています。首都直下地震とは、個別のプレートや活断層を震源とするものではなく、南関東全域のどこかを震源とする数種類の大地震をまとめて指す総称です。南関東の地下構造が複雑なため過去の地震の震源が特定しにくい点などがこう呼ばれるゆえんです。

 

例えば、関東地方にはほかの地域と同様に地表近くに活断層が存在し、地下には相模トラフなどプレートの境界もあります。さらに北関東では震源が深いため揺れが小さくなりがちですが、南関東では震源が浅いため揺れが大きくなりがちです。そのため必然的に大地震の確率は高くなります。

 

政府によるとその30年以内の発生確率は70%(マグニチュード7程度)です。この数字を聞いて安心できる人は少ないはずです。

「首都中枢機能への影響が特に大きい場合」の被害想定

国の有識者会議では、マグニチュード7のうち首都中枢機能への影響が最も大きい都心南部直下地震の具体的被害を次のように想定しています。

 

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【都心南部直下地震(マグニチュード7.3)の被害想定】

 

●経済被害(最悪ケースの場合)

・民間 42兆4000億円

・ライフライン 2000億円

・公共施設 4兆7000億円

・経済活動への影響 47兆9000億円

⇒合計 95兆3000億円(※四捨五入の関係上、各項目の積算値と合計の数字は一致しない。)

 

●交通被害(最悪ケースの場合)

・道路停止…主要道路の開通には少なくとも1〜2日を要する。一般道はガレキによる不通区間が大量に発生し、復旧には1ヵ月以上を要する。

・鉄道停止…運転再開には、地下鉄で1週間、JRや私鉄では1ヵ月程度を要する。

 

●電力・電話被害

・電力…5割の地域で停電が発生し、最悪の場合は1週間以上回復しない。

・電話停止…携帯電話を含め不通の状態が1日程度続き、停電が長期化すると携帯電話の使用も不安定となる。

 

●建物被害(最悪ケースの場合:冬・夕方・風速8m)

・全壊・焼失棟数 約61万棟

 

 〈原因の内訳〉

 揺れ 約17万5000棟

 液状化 約2万2000棟

 急傾斜地崩壊 約1100棟

 火災 約41万2000棟

 

●人的被害(最悪ケースの場合:冬・夕方・風速8m)

・要救助者 約7万2000人/死者 約2万3000人

 

 〈死因の内訳〉

 建物倒壊等 約6400人(そのうち屋内での収容物移動や落下が原因は約600人)

 急傾斜地崩壊 約60人

 火災 約1万6000人

 ブロック塀・自動販売機などの転倒や屋外落下物 約500人

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なお、この想定には日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)や中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)への影響は含まれません。これらの施設になんらかの損傷があれば、その被害は一気に膨れ上がります。

「都内の防災対策」はまだまだ改善の余地がある

また、東京都は1981年5月以前の旧耐震基準で建てられた建築物の耐震診断結果を公表しています。

 

震度6強以上の地震で倒壊する危険性が「高い」建物は156棟で、危険性が「ある」建物を含めると251棟となり、調査対象の3割に達しています。

 

この倒壊の危険性が「高い」建物には、新宿駅東口のランドマークといえる紀伊國屋ビルディングや渋谷109が入る道玄坂共同ビル、危険性が「ある」建物には、ホテル大手のニューオータニが宴会場として区分所有する新紀尾井町ビルなどがあります。

 

このように都内の防災対策は、まだまだ改善の余地があります。大地震発生時は、たとえ大きなビルの中にいても安心はできないのです。

 

 

谷山 惠一

株式会社ビーテクノシステム 代表取締役社長、技術士

 

日本大学理工学部交通工学科卒業後に石川島播磨重工業(現:株式会社IHI)入社。橋梁設計部配属。海外プロジェクト担当としてトルコ・イスタンブールの第1ボスポラス橋検査工事、第2ボスポラス橋建設工事等に参画。第1ボスポラス橋検査工事においては、弱冠28歳でプロジェクトマネジャーとして従事し、客先の高評価を得る。

その後、設計会社を設立し、海外での橋梁建設プロジェクトに参画。当時韓国最大の橋梁であった釜山の広安大橋建設工事などに、プロジェクトマネジャーとして従事。橋梁、建築物等の構造物設計・解析を専門とする。現在は橋梁設計のほか、独自の技術で一般住宅向け免震化工法「Noah System」を開発し、普及に努めている。元日本大学生産工学部非常勤講師。剣道五段。

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    ※本連載は、谷山惠一氏の著書『もう地震は怖くない!「免震住宅」という選択』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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