ドル円相場=「ドルと円を交換するときの比率」
生徒:K先生、2022年から2023年にかけてドル円相場がものすごく変動しましたね! 2022年10月には1ドル150円まで円安が進みましたが、2023年1月には1ドル120円台まで円高が進んでいます。
K先生:では、今日は外国為替について勉強してみようか。ドル円相場とは何か、理解できているかな?
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生徒:じつは…あまりよくわかっていません。
K先生:これはね、お金とお金の交換比率のことなんだよ。ドル円相場というのは、ドルと円を交換するときの比率だね。一般的には「1ドルあたり、円だといくら」という比率で表すんだよね。1円いくらのドルという比率で表してもいいと思うけど、計算に使いづらいんじゃないかな。
生徒:なるほど。私たち日本人はいつも円を持っていますから、「まずドルを買おう。では、ドルはいくらで買えるかな?」って考えると、〈1ドルいくら〉って書いてくれたほうがわかりやすいですね。
K先生:そうだね。1ドル100円というのは、1ドルを買おうとするときに、100円を支払わないといけないということ。100ドルを買うときは100倍の1万円、10,000ドルを買うときは、1万倍の100万円を支払わないといけないね。
生徒:なるほど。欲しいドルの金額にドル円相場を掛けてあげると、支払う円の金額がわかるということですね。
K先生:そうだよ。でも、毎日このドル円相場は変動しているんだ。1ドル101円だと、1ドルを買おうとするときに、100円ではなく101円を支払わないといけないし、逆に、1ドル99円だと、1ドルを買おうとするときに、100円ではなく99円を支払うだけでいいんだよ。
ドル円相場は「買いたい・売りたい」の拮抗で決まる
生徒:そうなんですね。でも、変動すると、ドルを買う時期によって支払う円の金額が変わってしまって厄介ですね。なぜドル円相場は変動するのですか?
K先生:それはね、最終的には、米ドルや日本円を買いたい量と売りたい量のバランスで決まるんだ。
生徒:それは、ええと、つまり…?
K先生:米ドルの売り買いをイメージしてみようか。米ドルを売り買いする必要があるのは、世界的なメーカーや大手商社など、輸出や輸入をする大企業だよね。例えば、トヨタ自動車が、日本からアメリカに自動車を輸出した場合、その代金は米ドルで受取ることになる。一方で、日本国内の従業員へ給料や原材料費を支払うためには、販売代金として受取った米ドルを日本円に替えなければいけない。その場合、トヨタ自動車は「米ドルを売って日本円を買う」という取引をおこなうことになるんだ。そうすると、日本からの輸出が増えていくと、米ドルを売りたい、日本円を買いたい人が増えてくるから、米ドルが安く、日本円が高くなるんだよ。つまり、ドル安円高の方向に進むんだ。
生徒:そうか、買いたい人と売りたい人のバランスですね! 逆に、日本企業が輸入する場合はどうなるんでしょうか?
K先生:例えば、日本の大手商社が、アメリカからトウモロコシを輸入した場合、その代金は米ドルで支払うことになる。一方で、日本国内でのトウモロコシを販売すると、日本円を受け取っているので、仕入代金を支払うために米ドルに替えなければいけない。その場合、商社は「日本円を売って米ドルを買う」という取引をおこなうことになるんだ。そうすると、日本の輸入量が増えていくと、米ドルを買いたい、日本円を売りたい人が増えてくるから、米ドルが高く、日本円が安くなるんだよ。つまり、ドル高円安の方向に進むんだ。
生徒:なるほど。買いたい人と売りたい人のバランスが崩れて、黒字になったり、赤字になったりすると、ドル円相場が変動するんですか?
K先生:そうだよ、よくわかったね。長期的に、輸出金額と輸入金額のバランス、これを「貿易収支」っていうんだけれど、これが崩れる状態が長く続くと、円ドル通貨は変動するんだよ。
生徒:でも、2022年から2023年のドル円相場の動きは、ものすごい短期間で変動しましたよね。輸入とか輸出がそんな短期間で変動するのでしょうか?
K先生:これはね、貿易収支とは違う原因で変動したんだよ。原因となったのは、金融資産の売買なんだ。日米の金利に差がついたときに、金利が高いアメリカの金融資産で運用しようとして、ドル円の売買が発生したからなんだ。たとえば、アメリカ政府が発行する米国債を買って資産運用する場合、日本人が米国債を買うには、日本円を売って米国債を買わなければいけないよね。
生徒:はい。米国債はドルを支払わなければ買えないからですね。
K先生:日本政府が発行する日本国債よりも、米国債の金利のほうが高い状態が続くと、日本人は米国債を買いたいと思うよね。金利が高いほうが、お金を稼ぐのに有利だからね。実際に買おうとするときは、まず日本国債を売って日本円を受取り、その日本円を売って米ドルを買い、その米ドルを使って米国債を買おうとするよね。先にドル通貨そのものを買っておかないと、米国債は買えないからだ。その結果として、米ドルと日本円の売り買いのバランスが崩れるんだよ。これを「金融収支」というんだ。この結果として、ドル高円安が進んだということだね。
生徒:なるほど。資産運用を目的とする売り買いですね。高くなった輸入代金を支払おうとして米ドルを買う人たちと、高い金利で運用しようとして米ドルを買う人たちの両方が、ドル円相場を動かしたんですね。
K先生:そうだね。中期では貿易収支、短期では金融収支の影響が大きいんだよ。たとえば、2022年の日米金利差を見ると、アメリカの中央銀行が急激な利上げを続けている一方、日本銀行がゼロ金利政策を続けているために、日米金利差の拡大が続いていたんだ。2022年1月には1%未満だったけれど、12月には4.5%程度まで広がったんだよね。これが、2022年の10月に、1ドル150円という急激なドル高・円安になった原因なんだよ。金融収支がドル円相場を動かしたと考えていいね。
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生徒:アメリカの中央銀行はなぜ急激に利上げしたのでしょう?
K先生:アメリカの利上げは、高い物価上昇率を抑えるためなんだ。継続して物価上昇が続くことを「インフレ」というのだけれど、ロシアのウクライナ侵攻で、原油や穀物、貴金属などの資源価格が急騰する一方、消費者のお買い物意欲が旺盛だったので、インフレが止まらなくなったからなんだよ。アメリカでは、サラリーマンの賃金も上がっていて、稼いだお金でガンガンお買い物をしているという羨ましい状況だね。つまり、物価上昇が金利引上げをもたらして、ドル高円安になったということなんだよ。
生徒:お給料が上がるのであれば、値段が上がってもお買い物しますよ! アメリカ人の生活は豊かですね。
K先生:そうだね、日本と違って、いまのアメリカの景気はとてもいいね。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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