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わが子への叱咤激励のつもりが、「キツい一撃」に
「勉強しなさい」「成績、上がってないね」「志望校を変えたら?」「どこでもいいから受かってね」「あなたにはお金をかけてきたのよ」…これらは、受験生が親に言われたくない言葉です。
厳しい言葉での叱咤激励は、受験生に発破をかけるための親心かもしれませんが、本人にとってはキツい一撃になります。
とりわけコロナ禍の受験生は、授業やテストを受ける機会が限られたために、自信がなく、メンタルの折れやすい子が少なくありません。
親の「良かれ」と思った言動が裏目に出てしまわないように、まずは受験生・浪人生から聞いた「親のNGな対応」をみていきましょう。
受験生・浪人生から聞いた「親のNGな対応」
■NG①:過干渉
偏差値、点数、志望校の定員数…受験生の希望を無視し、すべてを数字で判断するのは避けましょう。また、模試などのテスト結果で親に一喜一憂されるのも、受験生にとって苦痛です。塾の三者面談で受けたアドバイスを、繰り返し伝え続けることもNGです。
■NG②:無関心すぎ
模試なども含め試験の直前に、映画や買い物などに誘ったりするのも、受験生のイライラにつながります。「受験勉強の気晴らしに」という気遣いであっても、勉強の調子が乗っているときかもしれません。本番直前の大事な時期であれば、様子を見てそっとしてあげてください。
また、「受験勉強なんて意味がないから…」などと、受験自体を否定するような親御さんもいます。受験生は自ら望んで勉強していますので、意志を尊重してあげてください。
■NG③:他人と比較する
「XX君はすごいね。あなたはどうなの?」と比較されることも、受験生の心の傷になります。浪人生からは、「不合格になったとき、友人や知人の合格を知らされたのが一番イヤだった!」といった声をよく聞きます。
■NG④:愚痴る
予備校の費用や受験費用、ひいては医学部合格後の学費まで、経済的な負担について、延々と愚痴る親御さんがいます。「お前が大学に落ちたらウチはおしまいだ」「私立に行かせる金はないぞ」「予備校代は高いんだぞ」など、勉学の成果のみならず、お金にまつわる不安までかぶせられたら、受験生はたまったものではありません。
「浪人するか、諦めるか」で迷う子も多いが…
1月下旬は、浪人を視野に入れる医学部受験生が増えてくる時期です。
文部科学省の「学校基本調査」では、年度の大学進学者のうち、現役高校生が占める割合は約8割、浪人生は約2割と報告しています。つまり、大学生の5人に1人は「浪人生」ということになります。
では、医学部進学者に絞った場合はどうでしょうか。医学部の浪人生の割合は大学によってさまざまですが、7割以上が浪人生という私立医学部もめずらしい話ではありません。
また一見すると現役生が数十名入学しているように見えても、実はそれはほとんどが推薦入試合格者であって、一般入試での合格者は数名という話も聞きます。他学部と比較し、難関である医学部において、浪人はごく当たり前に選択肢なのです。
ただ、子どもが浪人する場合、一番ネックになるのはやはり費用の面でしょう。予備校に通う授業料や入試費用をもう一度捻出しなければならず、経済的な負担が家計にのしかかります。
できれば「お金は気にするな!」と言ってあげたい
以下は、ある受験生から実際に聞いた声です。
「受験した医学部全部に落ちてしまい、母が浪人をすすめてくるようになった。高校時代、自分も親も『浪人はナシ』と決めていたから、いさぎよく諦めて、他学部に進学するつもりだった。沢山お金もかかるだろうし、そもそも1年間も浪人生として頑張れる自信も、確実に合格できる保証もない。でも母から、『医師になれなくて後悔しない?』と聞かれると、正直、答えに迷う」。
浪人するとなると、予備校に通うにも、他の学習手段を取るにしても、さまざまな費用がかかってくることになります。一般的な医学部予備校の年間授業料は、医学部の学費と同等、またはそれより高額な場合もあります。受験生にとって、この出費はたまりません。親に申し訳ないと考え、浪人を諦めようとする子も多いものです。
もちろん予備校に通うとしても先立つものが必要ではありますが、ここで親御さんが「経済的なことは気にするな!」と後押ししてあげれば、お子さんの気持ちは変わってくるはずです。
とはいえ、実際どれくらいの経済的負担がかかるものなのか、把握しないわけにもいきません。
講習会や個別指導はまったく受けないという方から、予備校費用に年間で1000万円を費やす方までいるため、人それぞれではあります。後者は特に地方の開業医の子弟に多く、それくらい教育に投資しても元が取れるという判断のようです。
特に、地方にお住まいの医師は借り入れが非常に容易なため、簡単に資金調達ができるという背景もあります。
基本的には、予備校費用が大学の学費を侵食することのないよう、ある程度のラインを設けているご家庭が多いようです。
浪人を諦めた結果、30~40代で再受験する人々も
やはり大学進学は、お子さんの将来を決める重要なターニングポイントです。社会人になってから改めて医学部を再受験する30~40代の方もいるご時世です。たとえ今年の受験では、全部の大学に落ちてしまったとしても、また来年を目指し、粘り強く勉強を続けてほしいと思います。
何より、10代~20代前半の浪人生は、現役生と同等の知識も身についていますので、社会人受験生と比較して、合格の可能性は非常に高いです。
浪人すれば丸々1年遅れを取る形にはなりますが、長い人生のたった1年です。たとえ回り道になったとしても、本人の望む道を辿らせてあげるのが、ベストな選択でしょう。
浪人も視野に…医学部を目指す子へ、親がかけたい言葉
続いては、経済面での心配を解く以外に、親から医学部志望生にかけたい言葉についてみていきましょう。
■かけたい言葉:「医師を諦めていいの?」
同じ医療系の学部だったとしても、医学部と薬学部、歯学部、看護学部では、それぞれ大きな違いがあります。受験生は医師を志して医学部受験を選んだわけですから、そこはブレないように誘導してあげないといけません。医学部でしか受けられないカリキュラムや実習、研究内容など、医師の卵の世界には魅力がたくさんある事実を再認識させてあげましょう。
■かけたい言葉②:「視野が広がるよ」
高校時代は日々の勉強や部活動などもあり、進路についてじっくり考える時間が少なかったと思います。志望校を選ぶにも、先生やクラスメイトからの情報を鵜呑みにして安易に決めていたのではないでしょうか。
高校時代は日々忙しく、他人の意見に左右されがちなため、自分自身の感性で進路を選ぶことができませんでした。しかし、浪人すれば自由な時間が増えるので、自分のペースで勉強ができる上、さまざまな受験情報の中から視野を広げてじっくり精査することができます。
■かけたい言葉③:「不安は努力して向き合ってきた証拠だよ」
本番の試験直前には誰もが不安になりやすく、自信も持てなくなるかもしれません。そんな様子を感じたら「不安は努力して受験に向き合ってきた証拠だよ」と、声をかけてあげてください。これまで一所懸命に努力してきたからこそ、本番前に不安を感じるのだということを教えてあげてください。
■かけたい言葉④:「終わったことは気にしないのが大切だよ」
例えば本番の試験中でも、1限目の数学で失敗したことを引きずって、その日の調子を崩す人がいます。ですが後になって、実はその問題はかなり厄介な問題であったためみんな解けず、合否に影響しなかったことがわかりました。
また、いまの時期は私立の学科試験の合否が判明する時期ですが、自分ではできたつもりでいた大学から不合格通知が届いてしまい、戦意を喪失する人も多いです。これは現役生の推薦試験でよく起こる現象ですが、医学部の推薦試験は失敗する確率もそれなりに心得ておかなければいけません。それにも拘わらず、面接官の印象が良かったからといって合格したと思い込み、不合格通知を受け取ったあと絶望的な気持ちになり、その年の入試を棒に振る人も必ず一定数います。
特にこの1月中旬から2月上旬は私立の一次入試が怒涛のように続きますが、このような短期決戦では、うまくいかない日があっても、気持ちを切り替えて次の試験に挑めるか否かが重要です。私の経験では、終わったことは気にせず、明日のことを考えて勝負に挑める人が勝っていくように思います。
受験生にとって、親は「最強のサポーター」
「必ず合格できるよ!」とエールを送れば、お子さんも期待に応えたいという気持ちが強くなり、より勉学に励めるというものです。
医学部進学で得られる経験や学位は貴重なものです。親御さんには、できる限りお子さんの支えになっていただきたいと思います。
亀井 孝祥
医学部受験専門予備校メディカ 代表、数学講師
愛知・東海高校から東京理科大学へ。
塾講師を経て医学部受験予備校YMSにて数学科主任、教学部長など9年務めたあと、姉妹校設立のため独立。
姉妹校提携解消後、医学部受験専門予備校メディカを設立。現在に至る。