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小論文の「ありえない失敗」で合格を逃すケースが多発
医学部受験において小論文は、学力試験同等、またはそれ以上のウェイトを占める試験です。小論文の受験対策は他科目の勉強法とはまったく異なるため、医学部受験生の悩みの種となっています。答えが一つだけの数学などと違い、小論文の答えは出題されたテーマによってさまざまです。そして、受験生がどのような考え方をもって解答するかによって、大学側はその人の「資質」を量ります。
決してないがしろにできない小論文ですが、受験生からは軽く見られがちな傾向にあり、毎年、ありえない失敗によって不合格となっているケースが多発しているのも事実です。些細なことでチャンスを逃すことのないよう、ここに先輩方の典型的な小論文の失敗例を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
①初歩的なミス…解答用紙の使い方を間違えてしまった
解答(原稿)用紙の使い方は、小学校高学年のときに学習した内容です。それほど難しいことではないのですが、近年のSNS普及などの影響で文章表現が簡素化されてしまったためか、正しい文章の書き方を忘れている人も少なくありません。解答用紙の使い方を間違わないよう、初心に戻り、原稿用紙の使い方の基本をマスターしましょう。
<原稿用紙の使い方>
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●段落の頭は1マスあけて書きはじめます。
●行の最後の句読点は最後のマス目の文字と一緒に書きます【図表】。ただし、小文字や音引き(っ・ゃ・ゅ・ょ・ー)などは、行の頭のマスに来てもよいです。
●会話文は改行し、頭を1マスあけてかぎかっこから書きはじめ、最後はかぎかっこでくくります。
●数字を書き入れる場合(タテ書きの場合)は漢数字が原則です。
●アルファベットを書き入れる場合(タテ書きの場合)は1マスに1文字ずつ書くのが原則です。
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以上、基本的なルールですが、一部の大学の小論文試験では、「改行はせず、マスもあけずにすべて詰めて書くこと」というルールもあるようですので、各大学の設問をしっかり熟読してから書きはじめてください。
②既定の文字数を書き切れなかった/オーバーした
小論文試験では既定の文字数がありますが、それより多く書いてしまったり、文字数が足りなかったりすると減点の対象になります。規定文字数ピッタリで書き上げるのが理想ですが、それはなかなか難しいことです。
文字数オーバーの場合は、超えたのがたった1字であっても「0点」になってしまいます。一方、文字数が足りない場合はというと、実は規定文字数の8割から9割まで書けていれば許容範囲内といわれます(若干の減点がある場合もあります)。たとえば規定文字数が800字なら、少なくとも640字以上、できれば720字以上は書き上げたいところです。
「文字数が少なくても、理論的にまとまっていれば良いのでは?」という意見もありますが、大学側は「課題としたテーマについて語るためには800字程度は必要」と考えた上での設定ですので、文字数が著しく少ない場合は、「テーマについて詳細に語りきれていない」と減点判定されてしまいます。
<制限時間内に既定文字数で書き上げる方法>
小論文試験スタート時点の迅速な判断がもっとも重要です。解答用紙が配られたらすぐに提示された課題やテーマを読み、何について書くべきかと、文字数配分を考えます。書くべき事柄は序論・本論・結論の3つに分けて、それぞれのあらすじを箇条書きでメモします。さらに、それぞれ何文字ずつ書くかを決めます。
この作業を試験開始後の5分程度で確定してから本文を書きはじめます。途中で「いや、やっぱり文字の配分を変えて…」とやり直す時間はありません。作戦の途中変更は、文章構成のブレにつながり、最終的には支離滅裂な小論文になってしまいます。
失敗をしないコツは、スタート時点であらすじをメモする際に「結論」から先に決めていくことです。テーマに対して賛成か反対か、肯定か否定か、自分の方向性を固めてから文章構成していくと、意外とスムーズにペンが進みます。
書きはじめたら、最後まで方向性を変えないことがもっとも重要です。書いている途中で文字の配分を変えたい、結論を変更したいと思ったら「ブレ」のはじまりです。迷いは捨てて、初志貫徹で進みましょう。
③テーマ・課題に対する答えが的外れだった
提示されたテーマや課題について不勉強だったため、その背景を知らなかったり、勘違いして覚えていたりすると、内容的にちんぷんかんぷんな小論文ができあがってしまいます。テーマについて勉強していなかったため、苦し紛れに「このテーマと絡めて、私がこの大学を選んだ理由について語りたいと思います…」などと書いてしまう人もいるようですが、これでは提示されたテーマに対しての答えになっていませんので、評価は高くありません。
<どんな設問にも正しく答えるための準備>
課題やテーマに対する勘違いを回避するため、試験開始時には設問をしっかり読み込むことが必要です。うわべだけ読んで、思い込みで書き出すと、途中で勘違いに気づいてすべてやり直すことになってしまいます。時間は限られていますので、スタート時点での正しい判断が肝心です。
また、提示されたテーマや課題について「知らなかった」ということがないように、日頃から新聞などのニュース報道に興味を持ち、どんな内容を出題されても答えられるような、深く幅広い知識を蓄えておきましょう。とくに医療系のニュースは、新聞をスクラップしておいたり、ネット情報を蓄積しておいたりなど、日々の努力を怠らないようにしましょう。
ご参考までに、私たちが行う情報収集の方法と対策を一つ紹介します。
ここ数年の医学部の英語長文では「感染症」、特に新型コロナウイルス感染症(コロナウイルス感染症2019)をテーマにした出題が多いことに気がつきます。であれば、小論文でも当然「感染症」をテーマにした問題が狙われることは容易に予想できます。
では、どんな準備をすれば説得力のある内容が書けるのでしょうか? インターネットで文献を調べるだけでは駄目です。なぜなら、「感染症」の出題を予想した受験生はみな同じ文献を見て、そして同じような内容を書くからです。
私たちの生徒には、夏期に 国立ハンセン病資料館に出向いてもらい、学芸員の方からお話を伺ったり、ビデオや展示資料から過去に起きた偏見や差別の歴史を学んだりして、その上で昨今のコロナウイルス感染症の問題と比較をし、自身が感じたことや考えたことを文章化できるようにしっかりと準備をしてもらいます。このようなことはもちろん面接の対策にもなっています。
④倫理性を欠き、持論を爆発させてしまった
小論文には正解がいくつもあり、「これぞ正しい答え」というものがないことが普通です。いまだ解決されていない社会問題なども課題やテーマに取り上げられることがあるので、賛否両論あって当たり前なのです。だからといって、ここで自分の「ぶっちゃけ」的な感想や、非人道的と取られるような意見を書いてしまったら即失格です。世の中の知識人たちが試行錯誤するほどの社会問題等に対して、受験生自身がどのように受け止め、どんなアイディアで解決していこうと考えているかが、大学側の知りたいところです。ですから、解答内容は道徳的であり、倫理的、理論的でなくてはいけません。
<将来の医師に相応しいと評価される文章作り>
ややもすれば「きれいごと」ばかりの文章になってしまうかもしれませんが、ここは照れずに、まっすぐな思いを書きましょう。書きはじめる前に、以下の内容をチェックしてください。
●提示された課題やテーマを先入観なく正しく読み解くこと。
●勘違いや的外れに注意し、課題やテーマに対する問題提起をすること。
●ブレないように注意し、課題やテーマに対する道徳的な結論を導き出すこと。
これらのチェックポイントを念頭に置きつつ、書きたいことをすばやく箇条書きでまとめましょう。考えをまとめてから文章を書きはじめれば、途中で語りたいことを忘れたり、ブレたりすることはありません。
亀井 孝祥
医学部受験専門予備校メディカ 代表、数学講師
愛知・東海高校から東京理科大学へ。
塾講師を経て医学部受験予備校YMSにて数学科主任、教学部長など9年務めたあと、姉妹校設立のため独立。
姉妹校提携解消後、医学部受験専門予備校メディカを設立。現在に至る。