(画像はイメージです/PIXTA)

投資家が株を選択・購入する際には、自分なりの評価基準に基づいて決定していきます。なかでも「高配当の株」は人気が高いですが、実はメリットが大きいとはいいきれず、注意が必要だとベテラン投資家は分析します。どのような点が問題になるのでしょうか? ※本記事は『難しいことはわかりませんが、老後のお金の作り方を教えてください』(自由国民社)から抜粋・再編集したものです。

 

投資でミスを防ぐには、「ミスが起こりやすい投資をしないこと」が最善です。投資初心者の50代会社員・田中さんと一緒に重要なものから順番に見ていきましょう。

 

「魔法のマネーボックスみたいだと、投資の先輩が…」

田中さん:チンさん、知り合いで高配当株投資をしている人がいて聞いたんですけど、『魔法のマネーボックス』みたいなもので理想の投資だと言ってるんですけど本当ですか?

 

チンさん:その理想の内容については聞きましたか?

 

田中さん:はい、もとの株式も長期では上がるし、配当を再投資すれば複利で雪だるまのように増えると言ってました。もしそうなら最高ですよね。

 

チンさん:そうなるなら楽しくて理想の投資と言えるかもしれませんね。しかしそうならない可能性もあります。そして実は高配当株投資はとても難易度が高いのです。だから初心者の方には、そして自分年金づくりにはおすすめできません。

 

田中さん:やっぱり初心者じゃあ無理ですか。ちょっとショック。知り合いの方はうまくいっているような話だったけど。

 

チンさん:それはその方が投資の達人なのでしょう。あるいはまだ運用期間が短いかです。

 

田中さん:どうして、高配当株投資はダメなのですか? その理由を聞かせてもらえますか?

初心者が高配当株投資をしてはいけない理由、4つ

(1)「配当が高い=優秀な会社」ではないから 

 

チンさん:後ほど詳しく話しますが、簡単に言うと配当は会社が株主に渡すお返しの3つのうちの1つでしかありません。

 

田中さん:あとの2つは何ですか?

 

チンさん:自社株買いと成長への投資です。ですからそのうちの1つだけにフォーカスして投資対象を選ぶのは適切ではないのです。

 

田中さん:そこのところ詳しく教えてください。

 

チンさん:高配当株の中にも優良な会社は多いですが、配当が少ない、あるいは出さない会社にも優秀な会社は多いのです。アップルとかマイクロソフトとかグーグルは高配当の会社ではありません。

 

田中さん:えっ!?

 

チンさん:しかし株主への還元は1社株買いを中心にしっかりなされています。

 

田中さん:意外!

 

チンさん:したがって『高配当』と制限してしまうことでこれら多くの適切な投資対象を逃してしまうことになります。

 

田中さん:もったいない…。

 

チンさん:例えば婚活で条件をつけるほど対象が少なくなって結婚が難しくなるのと似ていますね。どうしても外せない条件以外はつけない方がいいのです。そして自分年金づくりには配当という条件をつける必然性は全くありません。

 

田中さん:なぜですか? そこも教えてください!

 

(2)高配当な会社にも様々なケースがあるから 

チンさん:配当を多く出す会社にはいくつかの種類があるので見分けるのが重要です。1つ目のグループは、ブランドが確立していて収入が確実に見込める会社です。そして将来への投資がそんなに必要でない場合は利益の多くを株主に分配します。米国の株だとマクドナルドとかコカ・コーラ、プロクター・アンド・ギャンブルとかが代表です。あとはタバコの会社も配当が高いです。

 

2つ目のグループは、株価が下落していて配当が高くなっている会社です。将来性が見込めなくて株価が下落すると配当割合は高くなります。しかしこの場合は株価の下落で損をするので配当をもらってもトータルでやはり損をすることが多いです。

 

3つ目のグループは、石油の会社のように業績が石油価格次第で大きく変動する会社です。これらの会社は儲かった場合には気前よく株主に分配します。その代わり不振の時には株価も配当も下がります。

 

田中さん:じゃあ高配当株投資をする時には1つめのグループを狙ってすればいいですね。それだと失敗はなさそう。

 

チンさん:そのとおりです。しかしそれらの会社はとても人気が高いので株価も比例して高いです。ですから安く買えればいいのですが、それ自体が難しいのです。とはいえ安全度は高いので高配当を狙うならそれらの会社をおすすめします。

 

また、個別株は難しいのETFを検討しましょう。米国高配当株ETF【VYM】、米国連続増配企業ETF【VIG】、米国増配企業ETF【DGRW】は米S&P500と比べて配当はやや高くトータルの成績もそんなに遜色ありません。

 

田中さん:なるほど、要するに高配当株自体にリスクがあるし、さらに高配当株の投資信託銘柄もあるからわざわざ、個別株を買わなくても問題ないってことですね。

 

(3)税金などロスが生じるから 

田中さん:ただ、知り合いは配当をもらうのはとても嬉しいと言ってました。そのお金でまた株を買うんだって。どんどん増えるからいいなぁ!

 

チンさん:お金がもらえるのは誰でも嬉しいですね。だから幸福感が強い投資法と言えます。しかし細かいことを言うと、実は現金を受け取ることはロスでもあるんです。

 

田中さん:どういうことですか?

 

チンさん:まず配当の20.315%は所得税として差し引かれます。米国株なら外国税と合わせて28%ほど引かれます。

 

田中さん:えっ、何で米国株は税金が高いんですか?

 

チンさん:外国税が米国で10%引かれるからです。残りの90%に対して20.315%の税率がかかるので合計で28%ほどになります。

 

田中さん:なんと!

 

チンさん:外国税は確定申告すれば一部分を取り戻せます。さらに再投資には手数料がかかりますからこれもロスになります。

 

田中さん:税金も考えなきゃいけないんですね。わかりました。

 

(4)資産からお金を受け取るにはさらに有利な方法があるから 

田中さん:そういえば、知り合いは『将来仕事をやめた時に配当があると収入の代わりになるので心強い』って言ってました。これってすごいことじゃないですか?

 

チンさん:確かにそれは魅力的ですね。しかし実は配当よりも、もっと良いお金の受け取り方があるんですよ。だからわざわざ高配当株投資をする必要はないんです。

 

田中さん:それはどんな方法なんですか?

 

チンさん:はい、投資資産からお金を引き出すと、どうしても税金が発生してしまいます。だから基本的には、働いていてお金が必要でない時は受け取らないようにして、必要になったら必要な分だけ受け取る方法です。これだと払う税金が最小限で済みます。

 

◆一部を現金化すると利益の20.315%が税金 

チンさん:投信などを売って現金化すると、利益部分に対して20.315%の税金がかかります。配当との違いは現金化する金額は自分で調節できることです。本当に必要な分だけ現金化すれば税金を最小限にして資産を最大化できます。

 

田中さん:じゃあ実際にお金が必要になれば有利な方法で現金化できるってことですね。安心しました。

 

チンさん:将来お金がいつどれだけ必要かは現時点ではわからないですから、今から考えなくて大丈夫ですよ。

 

田中さん:おかげでよくわかりました。今は考えなくって大丈夫ってことですね。

 

チンさん:日本じゃまだ一般的ではないですが、毎月5万円ずつ引き出す自動現金化システムもあるんです。現在楽天証券にありますが、そのうちどの証券会社でも可能になるでしょう。

 

田中さん:どんどん便利になりますね。最後にお金を生み出す『魔法のマネーボックス』についてはどうなんですか?

 

チンさん:魅力的なパワーワードですね。実は株式投資は正しく実行すればどの方法でも『魔法のマネーボックス』なんですよ。高配当株投資に限ったことではないのです。

 

田中さん:うーん、わかってはいるけど、魅力的なんですよね。

 

チンさん:確かに配当がもらえるという点がイメージしやすいのはありますね。だからはじめて株式投資をするのに高配当株投資から入られる方が一番多いんです。私が運営するサロンではそのような経験をよく聞きます。

 

田中さん:その人達はその後どうなったんですか?

 

チンさん:ほとんどの方がインデックス投資など他の方法に転換しています。

 

田中さん:移った理由は何なんですか?

 

チンさん:難しすぎるということです。そして難しい割にはインデックスを上回る収益を上げるのが難しいということです。

 

田中さん:やはりここでもインデックスの壁は高いんですね。はじめる前に聞いといて良かったです。


チンさん:そうですね、学習することにより経験する時間が短縮できることは多いですね。みなさんに最短距離で自分に最適な投資を見つけてほしくて私は情報発信を発信しているんですよ。私自身も回り道はいっぱいしました。高配当株投資もリタイア後の収入目的でやりました。そしてみなさんと同じように難しくて今のインデックス投信中心の方法に変えたんです。

 

 

チンさん凡人投資家 兼 YouTuber

難しいことはわかりませんが、老後のお金の作り方を教えてください

難しいことはわかりませんが、老後のお金の作り方を教えてください

チンさん凡人投資家

自由国民社

70歳投資ユーチューバーが教える! 老後のお金の作り方大公開。 老後のお金は株式インデックス投信の長期積立1択です! 米国株でも、日本株でもなく、また、債券などを組み入れた投信でもなく株式による投信の長期積立が…

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