自分年金づくりを目的とする資産運用は失敗しないものでなければなりません。ところが投資で失敗する人はたくさんいます。ここでは、資産運用に当たって初心者がすべきでない、気をつけるべき投資についてその理由とともに考えていきましょう。
まず投資でミスを防ぐには、「ミスが起こりやすい投資をしないこと」が最善です。投資初心者の50代会社員・田中さんと一緒に重要なものから順番に見ていきましょう。
日本の個別株に投資してはいけない
田中さん:チンさん、資産運用をはじめる前に、してはいけないことについて聞いてもいいですか?
チンさん:田中さんの資産運用の目的はリタイアに向けての資産づくり、つまり自分年金づくりですよね。
田中さん:そうです!
チンさん:だったら投機的な投資はもちろん避けるべきですが、それ以外にもしない方がいいものがいくつかあります。まず日本株への投資はしないことです。
田中さん:えっ、それは意外! 日本人には日本株が一番適していると思っていました。日本の会社の情報は日本語ですから簡単に読めるのに、何で日本株はダメなんですか?
①自国バイアスがあるから
チンさん:どうしても自分の国のことはひいきして見てしまうことにあります。
田中さん:それが、どうしてダメなんですか?
チンさん:オリンピックでも、自国の選手の活躍を中心に見たのではないでしょうか。この傾向を『自国バイアス』と言います。投資は冷静で公平な判断が重要なので、このバイアスは邪魔になります。
②世界でのシェアが6.5%しかない
チンさん:確かに、世界の株式の時価総額割合で見ると日本は世界で2番目です。
田中さん:じゃあ、いいんじゃないですか?
チンさん:しかし、その割合はわずかに6.5%しかありません。つまり残りの93.5%には投資せずに少ないところだけに投資をするわけです。
田中さん:そうかぁ!
チンさん:投資範囲が狭く有利とは言えません。もちろん日本にもいい会社はたくさんありますけれど。
③過去30年以上リターンが低迷してきたから
チンさん:また日本は1990年のバブル崩壊以降、失われた30年と言われる低迷期が続いています。
田中さん:確かに…。
チンさん:アベノミクス以降は円安もありかなり持ち直しましたが、それでも世界や米国に対してのリターンはかなり劣っています。
[参考]過去10年の年率リターン ドル建て(2022年8月10日現在)
全世界 9.5%
米国S&P500 13.5%
日本(MSCI ジャパンインデックス) 5.7%
④情報は必要でないから
チンさん:日本株を選択される方の理由に『情報がよくわかるから』というのがあります。しかし私達が行うインデックス投資では個々の会社や業界の情報は必要ありません。したがって情報がわかりやすいから、日本株が良いとはなりません。
【解説】多くの人が日本株から投資転換している
私がTwitterで行ったアンケート結果があります。
アンケート1(2021年11月23日 回答数1184)
株式投資をはじめたのは次のどの銘柄からでしょうか。
1 日本個別株…44%
2 米国個別株…14%
3 インデックス投資、ETF…38%
4 アクティブ投資…4%
これを見ると最も多くの方が日本株から株式投資をはじめていることがわかります。そこで現在の投資に関してアンケートをお願いしました。
アンケート2(同年11月27日 回答数940)
現在の主力の投資は何ですか?
1 世界、米国インデックス投資…61%
2 米国株個別投資…22%
3 日本株個別投資…15%
4 日本株インデックス投資…2%
日本個別株からはじめた方は、その多くが現在は別の投資に移行されています。
転換先は世界、米国インデックス投資が最多です。
理由は、日本株は難しいというのが多いです。投資の先人達の経験を生かすならはじめから日本株は避けて世界型のインデックス投資に絞るべきです。そうすれば時間のロスを避けることができて投資の成績が大きく向上します。