〈ハラスメント問題〉会社側、無策なら即座に「負け確定」へ…最低限取っておくべき「3つの対策」【弁護士が解説】

〈ハラスメント問題〉会社側、無策なら即座に「負け確定」へ…最低限取っておくべき「3つの対策」【弁護士が解説】

セクハラ、パワハラ、マタハラ、カスハラ…。様々なハラスメントが社会問題化しており、企業内でも危惧されています。万一企業側の対策が後手に回ると、これらの問題の発生が予防できないばかりか、被害者となった労働者、加害者の立場になった労働者の双方から責任を問われ、裁判になれば非常に苦しい立場に立たされることになります。山村法律事務所の寺田健郎弁護士が解説します。

ハラスメントの発生を阻止する「3つの対策」

ここからは具体的な対策を3つ解説していきます。万一実施していないものがある場合は、ぜひ速やかに実践してください。

 

①ハラスメントの相談窓口の設置

まず第一として、ハラスメントの相談窓口の設置です。

 

これはその名の通り、ハラスメントが起こった際に通報する、被害者が実際に相談・苦情を持ち込み、それらに適切に対応するための窓口で、担当者は相談を受けるための研修を受けた管理職、とくにセクハラの相談を受けることを考慮すると、女性の管理職が望ましいといえます。

 

とはいえ、実際に窓口を設置するとなると、まず女性管理職がいない会社の場合、女性管理職を置いて専門の研修を受けさせた上で常駐させなければいけません。そうなると、かなりの人的リソースを割くことになり、人材確保は難しいといえます。

 

また被害者側からしても、相談窓口の担当者が会社内の上層部の人間だと相談しづらい、とためらってしまう方も少なくありません。

 

そこで最近増えている例が、会社の顧問弁護士に依頼し、顧問弁護士の事務所を窓口にする、というパターンです。

 

具体的には、顧問弁護士に相談窓口になってもらうことを依頼したうえで、社内ではセクハラ・パワハラの相談窓口についてのポスターやチラシなどを休憩所などの人目に付くところに掲示する、という流れになります。

 

ポスターの内容としては、セクハラ・パワハラが起きた際には、弁護士事務所が通報・相談先になる、ということ、その事務所の連絡先、そして相談者の相談内容などの秘密が絶対に守られること、匿名での相談も可能であることなどを記載しておきましょう。

 

このようなポスターやチラシを人目の付くところに掲示しておくことで、社員にはセクハラ・パワハラの相談先を周知させることが可能ですし、会社側も十分な対策をしていたということを示すことができます。

 

ハラスメント対応は初期対応がとにかく重要です。初期の段階から適切な対応ができれば、しっかりと証拠を集めることができますし、ハラスメントか否かの判断が誤りなくおこなうことができます。

 

その後は、判断を受けた上で、被害者にはケアをし、加害者には処分を下すことになりますが、弁護士の判断の元に適切な処分をおこなうことができますので、加害者側から処分が過剰である、というような請求の可能性が格段に下がりますし、被害者側も会社側がきちんと対応したという印象が残り、こちらからも損害賠償を請求される可能性が下がります。

 

そのためにも、適切な人材に対応を任せることのできる体制を作っておくことが重要なのです。もし、社内の人員が確保できずに困った場合は弁護士に任せることも選択肢に入ってきます。

 

②就業規則・罰則規定の設定

セクハラ・パワハラ、それに加えてマタニティ・ハラスメント(マタハラ)は、といったハラスメントに関する分野は、比較的近年に生まれた概念でありながら、いまや人事労務分野の頻出課題となっており、人事担当の方、経営者の方には悩ましい問題かと思います。

 

しかしその一方で、就業規則でハラスメントに関しての懲罰規定が設定されていないことも多く、これはもし損害賠償請求に発展した場合は企業側が不利な立場になってしまう可能性が非常に高くなります。

 

とはいえ、やはり最近生まれた概念ですので、就業規則に書かれていない企業は多く、ここ10年の間に就業規則を改定していない会社は、ほぼ対応が間に合っていないのではないことが予想されます。

 

また、セクハラに関する規則だけある会社もありますが、セクハラのみでは不十分で、「セクハラ」「パワハラ」「マタハラ」「その他のハラスメント」の4つについて定義規定をおき、そのうえで窓口を設置し、懲罰規定が設定されている、ということが必須となります。

 

ここまでの「①ハラスメントの相談窓口の設置」と「②就業規則・罰則規定の設定」は、あるなしが一目瞭然で、窓口の有無は社員に聞けばわかりますし、罰則規定も就業規則を確認すればすぐわかります。

 

もし、実際にハラスメントが起こり、会社側がきちんとハラスメント対策をしていたという証拠が提出できない場合は、訴訟に発展した場合、会社側は相当不利な立場に立ってしまうことが予想されます。

 

③予防のための定期的な研修

そして、最低限の対策として、ハラスメント予防のための定期的な研修が挙げられます。

 

ハラスメント研修には管理職向けの研修と労働者向けの研修があります。

 

管理職向けの研修では、まず、ハラスメントを防止するシステムを構築するためにはどうすればいいか、もし発生してしまった場合に、どのような対応をすればいいのか、についての説明があります。

 

発生しやすいハラスメントの内容は、業種や男女比、年齢、事業内容によって異なります。そのため、研修では会社の体制に応じた、具体的にとるべき対応を詳細に解説してもらえる研修を選ぶことが重要になります。

 

また、もうひとつ面倒なハラスメントとして、カスタマーハラスメントがあります。

 

BtoC企業では顧客対応が必須になりますが、顧客対応にはどうしてもクレーマー問題、カスタマーハラスメントがついてまわります。

 

その際に、クレーマーからどのように従業員を守るのか、ということも、昨今では企業側に求められるようになりました。

 

一般的に、カスタマーハラスメントは問題に発展しづらい傾向にありますが、理不尽なクレームが何度もあり、従業員からも苦情が来ているのに何も対応をしていない、というような場合は、問題になる可能性があるため、これに関してもしっかりと対応を検討しておく必要があります。会社によるとは思いますが、管理職の方は一度、これらのことを学べる研修に参加することをお勧めします。

 

労働者の側は、加害者になり得る一方で、被害者にもなり得ます。

 

そのため、労働者向けの研修は、「こういうことをしたらハラスメントになる」といったセクハラ・パワハラの定義や具体例、おこなった場合にどのような懲罰があるのか、といった内容と、逆に「こういうことをされたら、会社にちゃんと報告してほしい」といった点を周知する内容になっています。

業種ごと・事業規模ごとの「きめ細かい対策」が必須に

上記、「①ハラスメントの相談窓口の設置」「②就業規則・罰則規定の設定」「③予防のための定期的な研修」と、3つについて説明しましたが、前述したとおり、これらの対策はすべて、セクハラ・パワハラが起きないようにするための対策として最低限のものであり、これらを怠っていると、もしハラスメントが発生した場合、会社としては勝てない、というレベルのものです。

 

ならば、それ以上の対策はなにか言う話になると、まさに企業規模や業種ごとに異なってきます。これらの点に留意したうえで、会社としては慎重な対策が求められるといえます。

 

 

寺田 健郎
山村法律事務所 弁護士

 

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