(※写真はイメージです/PIXTA)

昨今の相次ぐ物価上昇は一向に収まる気配がありません。そんななか、重要性を増しているのが「値上げして、適正な価格で販売すること」です。本連載では「感性と行動の科学」に基づいたビジネス理論を研究するオラクルひと・しくみ研究所代表の小阪裕司氏が、著書「『価格上昇』時代のマーケティング なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか」から、適正な「値上げ」をして、かつ売上を高める「戦略」について解説します。

「墓じまい」が「建墓」に!?

作り手・売り手が価値を伝えることに全力になると、どんなことが起こるのか。その大きな力を物語る実例がある。「墓じまい」の相談があったお客さんが、結果として、300万円を超える予算で新しいお墓を建てることになったというものだ。

 

それは、福井県越前市の石材業「宝木石材」に、1通の「墓じまい」問い合わせメールが来たことから始まった。

 

そのメールの主によれば、同県に一人でお住まいだったお母さまが亡くなり、地元には誰もいなくなった。自分は遠方に住む親族だが、今後はお墓参りも一苦労。この機会に墓じまいし、お寺とも離檀したいとのことだった。

 

そこで同社社長・宝木幹夫氏は、まずはお寺名とお墓の場所を聞き現場を確認したうえで、その方が実家の整理に来る際に来店してもらい、話し合いの機会を持つことにした。

 

「墓じまい」とは、お墓を解体して更地に戻すことで、最近、増えている。その後の供養まで含め、サービスとして提供している業者も多い。

 

にもかかわらず、なぜ墓じまいの作業だけをさっさと受けないのか。それは、同社のポリシーによる。同社では依頼人本人たちからしっかりヒアリングし、プロとして状況を判断、お墓を残す可能性も含めさまざまな方法を検討し、お客さんが納得のいく結論を出すようにしているのだ。

 

実際の話し合いの際、宝木氏は、自分たちのお墓への思いや、墓じまいに関わった経験から思う問題点を伝えた。問題点とはたとえば、「こちらの親戚・友人との縁が薄れてしまうこと」「お子様、お孫様たちの田舎(両親・祖父母の故郷)がなくなってしまうこと」などだ。それらの話を通じて、お墓を残す意義や必要性を説いた。

 

また、残す方法もいくつか提案した。たとえば「お墓参りに来られないときは、こちらの親戚や知り合いにお願いできないか」など。

 

あわせて、1年、2年かかってもいいのでゆっくりと時間をかけて納得いくまで話し合うことの必要性・大切さを力説した。

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