団塊の世代、2025年には全員が後期高齢者に
2022年、戦後の第1次ベビーブーム(1947年~1949年)に生まれた「団塊の世代」は、75歳の後期高齢者に突入した。そして、団塊の世代のすべてが75歳となる3年後は「2025年問題」と称され、世間の耳目を集めている。
総務省によれば、団塊の世代は各年齢において200万人。つまり、高齢者は毎年200万人ずつ増え、2025年には2,180万人ほどになると予測されている。たった3年後、日本人の4人に1人が75歳以上という、予想もつかない未来が待っている。
一番の懸念はやはり、医療費の増大だろう。厚生労働省によると、健康寿命(日常的・継続的な医療・介護に依存せず、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる)は、2019年値で、女性75.38歳、男性72.68歳だ。団塊の世代の人たちは、これから手厚い医療や介護が必要になる。
厚生労働省『令和3年度 医療費の動向』によれば、75歳未満の1人あたりの医療費は23万5,000円だが、75歳以上だと93万9,000円。およそ4倍だ。
医療費全体では、2020年が42.2兆円、2021年が44.2兆円となり、およそ2兆円の増加となった。もちろん、新型コロナの影響等もあり、すべてが高齢者の増加によるものではないが、それでも今後1年間で1兆円ずつ増加していくと予想されている。
親の介護に直面…団塊ジュニアの切実な問題
当然だが、介護状態となる人の割合は加齢とともに増加する。厚生労働省『介護給付費等実態統計月報』によると、「70~74歳」では5.8%だが、「75~79歳」では12.7%、「80~84歳」では26.4%、「85歳以上」では59.8%と増加していく。
実は、介護は費用以前に「誰が介護をするのか」という根本的な問題がある。
厚生労働省『国民生活基礎調査の概況』(2019年)では、主な介護者は54.4%が同居している家族であり、その内訳は、「配偶者」が23.8%と最多で、「子ども」20.7%、「子の配偶者」7.5%と続く。「子どもには世話になりたくない」という高齢者は多いが、そうはいいつつも、子どもに面倒を見てもらっているのが実情だ。
年齢からみて、団塊の世代はこれから続々と介護状態となることが予想される。そして、その子どもは親の介護問題に直面することになるだろう。その子ども世代は、いわゆる「団塊ジュニア」だ。
介護費用については、介護保険のほか親の年金もあるだろうから心配は少ないが、実際の介護となるとまた少し話は違ってくる。厚生労働省『雇用動向調査』によれば、介護離職する人は、毎年7万~10万人にも及ぶ。今後、介護を理由に仕事を辞めざるを得ない団塊ジュニアが増える可能性は高い。
正社員の平均給与(所定内給与額)は40代後半で36.1万円、50代前半で38.8万円。50代後半で39.3万円だ(厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』)。この年代は会社員としての給与がピークになるが、その給与をあきらめて介護離職する人も少なくないはずだ。平均介護期間は61ヵ月とされているので、もし55歳で介護離職したとして、復職できるときには還暦を過ぎている可能性もある。そうなれば、以前のような給与を得ることは極めて難しい。
非正規の団塊ジュニア、介護を引き受けた先には…
非正規で働く団塊ジュニアはもっと厳しい状況だ。就職氷河期世代でもあり、大学卒でも多くが非正規社員となったこの世代は、せっかく雇用環境が改善してもキャリア不足が足かせとなり、非正規の立場から脱せなかった人が少なくない。
前述の厚労省の調査によれば、非正規の平均給与は40代後半で20.9万円、50代前半で21.2万円、50代後半で21.0万円だ。手取りにすると16万円程度、社会人になって以降、ほぼ同じ給与水準のまま50代に突入する。
このまま65歳を迎えたときに手にする年金は月10.5万円程度だが、もし55歳で介護離職したら、ただでさえ少ない年金額は、さらに減少することになる。
非正規という厳しい状況にありながら介護離職を余儀なくされ、その後は生活を支えるにはあまりにも少ない年金しか受け取れず、再び非正規としての就労が続く。
このような人たちを、国は一体どのようにサポートしていくのか。解決の糸口はまだ見えない。
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