米中間の「地政学的緊張」の高まり
米中間の地政学的緊張の高まりから、アジア株式市場のリスクプレミアムも高まっています。
米国は中国への技術の輸出規制を強化し、中国を「戦略的競争相手」としてより明確に位置付けました。
一方中国では、習近平氏が国家主席として3期目を続投することが決まりました。中央政治局常務委員会(PSC)は7名で構成され、最も重要な意思決定を行います。
新たに政治局常務委員に選ばれた4名(李強氏、蔡奇氏、丁薛祥氏、李希氏)は総書記と仕事上、もしくは個人的に関係が深く、メンバーは習主席に忠実な人物で固められました。中国共産党の政治局委員24名についても同様の傾向となり、習主席とつながりがあるとされるメンバーが多く選出されました。
中国共産党第20回全国代表大会後のこれらの発表を受けて、海外の投資家は中国に対して慎重な見方を強めました。
習主席がこれまで表明してきた政策目標を反映し、中国本土では市場原理や民間セクターの活力の余地が少なくなり、国家権力が介入する政策スタンスが一段と強まることが懸念されています。
こういった地政学的緊張は、今後、世界の2大経済大国の「デカップリング」がより顕著になるリスク要因であり、さらには中国株式市場への資金流入にマイナスの影響をおよぼす可能性があると考えられます。
2023年のアジア株式市場にくすぶる「2つの懸念要因」
懸念事項①中国の「ゼロ・コロナ政策」に懸念が残る
2023年のアジア株式市場の見通しを左右する2つの重要な懸念要因があると考えています。
第1の懸念要因は、新型コロナの感染再拡大に対する中国政府の対応です。
株式市場は過去1年半の期間に低迷したため、中国政府によるゼロ・コロナ政策の緩和を、市場は非常にポジティブに受け止め、企業利益と株価バリュエーションを押し上げる可能性があります。
中国のゼロ・コロナ政策の緩和は1回限りではなく、むしろ段階的に実施されると考えています。段階的な緩和でも現在の落ち込んだ市場心理を改善し、経済成長を押し上げるのに十分な効果が期待できます。
さらに香港市場についても下支えし、また緊密な貿易関係を通じてアジアの他の国々の経済成長にも波及効果があると予想しています。