不確実性の高い相場に備える心構え
政府・与党で2023年度税制改正大綱が決まり、少額投資非課税制度(NISA)の非課税枠が2024年から大幅に拡大する予定です。
おそらく、販売会社は、ここぞとばかりにキャンペーンを繰り広げ、NISA口座の獲得と投資商品の勧誘をおこなうのではないかと、いささか心配です。
政府が後押しする制度であるといったお墨付きの下、非課税を売りにしたり、人の欲を煽ったりするかたちでリスク性の投資商品の残高を増やそうとすると、往々にして厳しい市場環境にさらされて結果がともなわず、健全な投資に対する信頼を失いかねないからです。
筆者が社長を務める資産運用会社では、市場環境や経済環境を予測した運用は行っていませんが、世界的にインフレなき経済成長を支えてきた環境が、大きく変わってきたことに対しては、慎重に向き合う必要があるでしょう。
たとえば、
2. 世界中どこからでも仕入れ、販売することができるグローバル経済の転換
3. インフレによる低金利から金利高への転換(金融緩和政策の大規模な変更)
4. 企業活動における地球環境問題という制約条件の重荷
などです。
これらは、不可逆的で、株式市場にはマイナスの影響を与えるでしょう。とりわけ、足元のインフレと金利上昇の圧力は根深く、経済や市場環境に与えるマイナスの影響を注視しなくてはなりません。
インフレには2つの種類がある
インフレには、大きく2つの種類があります。景気が好調で、人の購買意欲や旺盛な需要によって価格が上昇するデマンド・プル型インフレと、原材料価格や資源価格の上昇に起因するコスト・プッシュ型インフレです。
足元のインフレは、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけにエネルギーや農産物の価格が上昇したことや、新型コロナ感染拡大を含めたさまざまな要因によって世界的な物資の供給網が変化し、いままでのように安価に原材料を調達することが難しくなってきたことなどが背景としてあります。
つまり、今回は、コスト・プッシュ型インフレで、上記のような構造的な要因が背景にあるだけに、短期間でインフレが収束することを期待するのは難しいでしょう。
こうした状況下、日本を除く各国中央銀行は、昨年後半から利上げに転じ、超金融緩和政策によって世界中で膨張したマネーは、縮小に転じはじめました。実体経済をはるかに上回る規模で膨れ上がった金融マネーの動きも要注意です。
こうした環境下では、債券市場も株式市場も同時に値下がりしやすいので、運用者としては、リスク管理をしっかりと行う必要があります。
その一方で、こうした環境下だからこそ、仮に株価が値下がりしても、実態としての価値が高まる投資先に腰を据えて投資していくことが最終的によい成果につながると考えます。
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