お金のプロ、定年前の預貯金「わずか150万円」でも「生活費の不安ゼロ」だった理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

経済コラムニスト・大江英樹氏が定年を迎えたとき、預貯金はたったの150万円。しかし、老後生活費の心配はまったくなかったといいます。世間では老後2000万円問題が取り沙汰されているにもかかわらず、一体どうしてでしょうか? 夫婦そろってお金のプロ、大江英樹氏と大江加代氏による共著『お金・仕事・生活…知らないとこわい 定年後夫婦のリアル』(日本実業出版)より、第3章の一部を抜粋します。

定年前に老後のお金を「見える化」していた

第3章はお金の話です。私も妻も同じ証券会社出身ですし、今も広い意味では、「お金」にまつわる仕事をしていますので、いわば本章は我々の本業部分といってもいいかもしれません。

 

ただ、本書のテーマは「夫婦で定年」です。お金に関するテクニック的なことに偏るのもいけませんし、お金は大事ですが、定年後に考えるべきことはお金ばかりではありません。

 

いや、むしろお金以上に考えるべきことはたくさんあります。コミュニケーションや健康の問題のほうがお金よりもはるかに重要だと私は思っています。

 

こういうと、「それは経済的に恵まれた環境にあるからそんなことが言えるのだ」と突っ込まれるかもしれません。たしかに今の時点では生活に困っていることはありません。

 

でも、定年時の私の預貯金はたった150万円しかなかったのですから(商売に失敗した父親の借金の肩代わりもしたし子どもの教育費も馬鹿にならず)、決してたくさんお金を持っていたわけでも、経済的に恵まれていたわけでもありません。

 

ですが、私はお金に関してはまったく心配はしていませんでした。その最大の理由は定年になる前に自分の老後のお金を「見える化」していたからです。

老後不安は「見えない」「わからない」から生じる

老後不安、特に老後のお金に関する不安の最大の原因は「見えないこと」「わからないこと」にあります。

 

私の知人に有名なファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんがいらっしゃいます。とても優秀な方で、彼女の記事を私はいつも参考にしているのですが、NHKの報道番組「クローズアップ現代」に出られた時に、「老後の不安は遊園地のお化け屋敷みたいなものだ」と言われていたことがとても印象に残っています。

 

子どもの頃、お化け屋敷に入るととても怖かった、その理由は、暗くて先が見えないからです。薄明かりがついていて、次にどうなるかがわかっていれば、怖くも何ともありません。

 

老後のお金も同様で、その不安は“わからないから”というところにあります。

 

でもそれはそうです。だって定年前の人で「自分はかつて一度70歳だったことがある」という人は一人もいません(笑)。みんな、これから行く世界ですから、わからないのは当然です。

 

であるならば、わからないことを、なんとかわかるようにすれば不安はなくなるのです。

「老後のリアル」は自分で調べるしかない

ところが、誰も老後不安を解消するために現実を語ってくれません。

 

マスコミは老後不安をあおる記事ばかりですし、金融機関も年金不安をあおります。彼らにとっては「老後不安」は最大の商材だからです。メディアは、不安をあおるような報道をするほど記事もよく読まれますし、視聴率も上がります。金融機関にとっては、年金があてにならないほうが、金融商品がよく売れるので、ますます不安をあおりがちになります。

 

いちばん参考になりそうなのは“老後”の体験者、すなわち高齢者ですが、困ったことに彼らも不満は声高に言うものの「年金があるから安心」とか「生活はそれほど問題ない」とは決して言いません。「十分な年金をもらっている」などと発言しようものなら「年金が減らされるのではないか?」と思うからです(笑)。

 

誰も教えてくれないならどうすればいいのか、それは自分で調べるしかありません。それが「見える化」なのです。

老後のお金の「見える化」は意外と簡単

私は定年前に老後のお金の「見える化」をしたわけですが、これはそれほど難しくはありません。要は「入」と「出」を把握すればよいのです。

 

サラリーマンの場合は比較的簡単です。

 

サラリーマンにとって老後の収入の最大のものは公的年金です。公的年金がいくら受け取れるかは年に一回送られてくる「ねんきん定期便」を見ればわかります。

 

もっと簡単に見ようと思うなら、2022年4月から厚生労働省が試験運用を始めた「公的年金シミュレーター」を使えば簡単に自分の年金額がわかります。

 

60歳まで働いたサラリーマン夫婦世帯であれば、仮に90歳まで生きたとして、公的年金の受取総額はおよそ6500万円を超えるぐらいになります。

 

これだけでずっと安泰というわけではありませんが、何もしなくても老後はこれだけのお金が入ってくると考えれば一定の安心感はあります。

 

それにサラリーマンなら会社によっては退職金や企業年金が受け取れる場合もあるでしょう。

 

要は、「自分の貯めたお金以外に、定年後に何もしなくても入ってくるお金がどれくらいあるか?」を調べればよいのです。

支出チェックで大事なのは「固定費」と「使途不明金」

次に「出」を調べます。これは現役時代と定年後ではかなり金額が違ってきますが、まずは今の時点での支出を確認します。

 

そのために必要なのは家計簿をつけることです。私も定年になる2年前からこの習慣を身につけて支出金額を把握しました。今は家計簿をつけるといっても「家計簿アプリ」を使えば簡単にできます。

 

家計簿アプリは支出の「見える化」だけでなく、もう一つの効用があります。それが「使途不明金」の把握です。

 

大体、お金というものは「いつの間にかなくなってしまっている」という性格が強いものです。「何に使ったのかわからない」という使途不明金が結構あるからです。

 

ところが、家計簿アプリを使うと、会社の帰りに毎日寄っているコンビニの利用状況とか、アマゾンや楽天などの通販サイトで買った金額がずらーっと並ぶことで、いかに自分がそういうものをたくさん利用していたかが白日のもとに晒されるのです。

 

このように家計簿アプリ等を使って日常生活の使途不明金を把握することは重要ですが、それと同じくらい、いや場合によってはそれ以上に大事なのが惰性でほったらかし状態になっている固定費です。

 

具体的には不要な保険や使っていないサブスクのサービスといったものです。どこかの時点でこういった無駄な固定費がないかどうかのチェックはすべきでしょう。

 

 

このように定年後のお金に対する漠然とした不安は、この「見える化」をすることで解消されます。私自身が定年になる少し前からこの「見える化」を続けてきたので、それはよくわかります。

 

結局、大事なことは特別なノウハウでもなんでもなく、収支をちゃんと把握するというごく当たり前のことなのです。

 

 

大江 英樹

経済コラムニスト

 

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    株式会社オフィス・リベルタス 取締役 

    経済コラムニスト。専門分野はシニア層のライフプランニング、資産運用及び確定拠出年金、行動経済学等。大手証券会社を退職し、2012年にサラリーマンの老後支援を目的に(株)オフィス・リベルタスを設立。書籍やコラム執筆のかたわら、資産運用、年金、シニアライフプラン等のテーマで全国で年間140回を超える講演を行っている。CFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。主著に、『定年男子 定年女子』(共著、日経BP)、『経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)、『定年前』(朝日新書)、『資産寿命』(朝日新書)、『定年前、しなくていい5つのこと「定年の常識」にダマされるな!』(光文社)など多数ある。

    著者紹介

    確定拠出年金アナリスト
    株式会社 オフィス・リベルタス 代表取締役 

    大手証券会社に一般職として入社。その後、総合職への転換を経て22年間勤務し、その間一貫して「サラリーマンの資産形成」に関わる仕事に従事。退社後、紆余曲折を経て再び「サラリーマンの資産形成」をライフワークとして講演活動などを行う。

    確定拠出年金の分野においては草分け的な存在で、NPO法人確定拠出年金教育協会の理事として月間10万人以上が利用する「iDeCoナビ」を立ち上げるなどiDeCoの普及活動も行っている。厚生労働省社会保障審議会の企業年金・個人年金部会委員。

    主な著書に『サラリーマン女子、定年後に備える』(日経BP社、2021年)『最強の老後資産づくりiDeCoのトリセツ』(ソシム、2022年)がある。

    著者紹介

    連載お金・仕事・生活…知らないとこわい「定年後夫婦のリアル」

    ※本連載は、大江英樹氏と大江加代氏による共著『お金・仕事・生活…知らないとこわい 定年後夫婦のリアル』(日本実業出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

    お金・仕事・生活…知らないとこわい 定年後夫婦のリアル

    お金・仕事・生活…知らないとこわい 定年後夫婦のリアル

    大江 英樹
    大江 加代

    日本実業出版社

    【共働き夫婦、必読!】 「老後資金は2000万円ないと破産する」 「定年後は夫婦で共通の趣味を持つといい」 「シニア夫婦は“阿吽の呼吸”で生活を」etc. 巷でよく耳にするこれらのフレーズによって、「老後不安」を増…

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