(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、家族だけで行う「家族葬」や、簡便な「直葬」が増加しています。夫婦そろってお金のプロ、大江英樹氏・大江加代氏の共著『お金・仕事・生活…知らないとこわい 定年後夫婦のリアル』(日本実業出版)から一部を抜粋し、妻・加代氏によるアドバイス「最近のお葬式・お墓事情と私の選択」を見ていきましょう。

「参列者は身内だけで十分」…最近のお葬式スタイル

家族が亡くなった後の手続きは多岐にわたります。葬儀やお墓の手配に始まり、役所への届け出、SNSのアカウント閉鎖や各種サービス解約、そして残った財産の相続手続き等です。

 

一般的にはこれらは配偶者と子どもが担うわけですが、おひとりさまの場合、そんな存在はいませんから、誰かに、あるいはどこかに頼むことになります。

 

昨今は「親が亡くなった時の手続きが心理的にも経済的にも負担だった。同じ思いを子どもにさせたくない」「死ぬ前にある程度、自分で手配しておきたい」と考える方が増えています。結果、相応のマーケット生まれており、新しい形式の葬儀や墓地が主流になりつつありますし、死後の諸々の手続きを委託できるサービスやそれを行う事業者も年々増えています。

 

例えば葬儀は、(株)鎌倉新書が運営する葬儀相談依頼サイト「いい葬儀」が、2022年3月に実施したお葬式に関する全国調査によると、家族葬が半数以上になっているそうです。

 

従来の葬儀と同様、お通夜と葬儀・告別式は2日間にわたって行うのが一般的ですが、家族葬は参列者を親族のみ、またはごく一部の友人・知人に限るようなお葬式です。

 

親族のみならず知人・友人・地域や仕事関係者と、幅広い参列者がいた従来型の葬儀は、高齢で健康に不安のある親族を呼び寄せることや、関係性がわからないご近所をはじめとした多くの人に遺族として気を遣わねばならず、相当な負担だといえます。

 

存命中の思い出を語り合い、故人の冥福を祈って霊魂を鎮め、この世からあの世へと送りだす儀式を執り行うのが本来の葬儀。ご近所関係が希薄になったことで、付き合いや義理から離れ、通夜や葬式の本来的な意味合いに立ち戻って、身内だけで十分というスタイルが市民権を得られるようになったのだと思われます。

 

さらに、コロナの影響もあり、従来の一般葬はこの2年で25%にまで激減しました。通夜なしで葬儀・告別式のみを一日で行う一日葬や、通夜・葬儀・告別式を一切せず、納棺後すぐに親族だけが見守るなかで火葬する直葬・火葬式といった簡易な方法も増えているそうです。

 

私自身は家族葬を基本に、本人の希望に沿った葬儀で送りたいと思いますし、自分自身は最も簡易な直葬で送ってもらいたいと考えています。

 

そのほか、生存中に親しい方たちに集まってもらい、思い出を語ったりお礼の気持ちを伝える生前葬を選択する方もいます。私自身はそうした式を望みませんが、そうした形式もアリだなと思いますし、家族がやりたいと言った場合は手伝うつもりです。

 

そう思うのは、祖母の苦労や想いが綴られている「自分史」を読んだことがきっかけです。叔父が祖母に聞き取りをしながら作ったものですが、明治・大正・昭和・平成を生き抜いた女性の生きざまに、私は感銘を受けたのです。もし生前の祖母が、これまでの人生を本人の口から語る生前葬があったなら、孫である私にとっても貴重な機会になっただろうと思います。

近年注目の「樹木葬」とは

新しく購入されるお墓では樹木葬が人気を博しています。樹木葬は2000年くらいに登場した新しいタイプのお墓です。多くの人は桜などのシンボルツリーの根元の小高い塚に、お骨がひっそりと埋められて自然に還っていくイメージを抱いているのではないかと思います。

 

私もその印象が強くあったのですが、現在売り出されている多くの樹木葬は、昔からある墓地の一角または新たな区画に草木を植えた区画を作り、そこに埋葬するというものだそうです。

 

私が見学に行ったお寺が運営している樹木葬は、いずれも共同墓・合祀墓という形式でした。これは、当初は遺骨を一人ひとり埋めますが、一定期間が過ぎると骨を粉にし、他の遺骨と一緒に納め、その後の供養や維持管理はお寺で行ってくれるというものです。

 

樹木葬が人気なのは、このように共同墓・合祀墓での永代供養がセットになっているので、おひとりさまでもお墓の維持管理の心配がなく、一般的なお墓に比べて安いことです。子どもにも負担をかけずに済むことのほか、ペットも一緒に入れることでも注目されています。

従来のお墓は数百万円、樹木葬は「10分の1」程度だが

樹木葬の値段には幅がありますが、初期費用は従来のお墓の10分の1くらいで済みます。

 

従来型のお墓は、土台になる石を数段敷いた上に、「〇〇家の墓」のような墓石を建てるので、一区画の大きさもある程度必要で、工事も大規模になるため、費用が数百万円かかります。

 

一方、私が見学した樹木葬は、納骨できる程度の面積の上に厚みのあるプレートのような墓石を地面に直接載せる感じですから、石の大きさや数が格段に少なくなります。

 

ちなみに、一人だけが入るいちばん小さなタイプの墓石は直径15cmくらいの円石でした。そうなると多くのお墓が作れますから、単価が安くてもお寺の収益は落ちません。

 

墓石は、「遺族からお参りする際、どこに埋められているかわからないと困るし、寂しいという声を受けて置くようにしている」と説明されました。大理石のような高級な石に、5万円以上の加工賃を払って思い思いのデザインを施すのが基本パターンといわれると、(これまでお取引のあった墓石業者の方も潤う仕組みとして考えられたのではないか)と私などは勘ぐってしまいます。

 

費用はというと、私が見学したところでは、初期費用として墓石と永代供養料含めて一人だけ入るタイプなら60万円、4人+ペットもOKというタイプは170万円、さらにお墓の購入後にあらかじめそのお墓に入ると決めた人が入り終えるまでは、年間護持費がお墓の規模別に3千円から1万3千円かかることを学びました。

 

諸々考えると、樹木葬はお寺の経営にとって新たな顧客を呼び込み、安定収入を得られるプラスの面がどうも多いようです。だからこそ多くのお寺が経営維持のために参入し、ここまで広がっているのだろうと思うと、ちょっと複雑な気持ちになりました。私としては、当初思い描いていたような「目立たず自然に還る」タイプの樹木葬を引き続き探そうと思っています。

「献体」という選択肢も

また、自分の死後の話として最近増えているのが、大学病院等への献体という方法です。

 

献体とは、自分が亡くなった後、遺体を医学部や歯学部における解剖学の教育・研究のために無条件・無報酬で提供するもので、認知度の高まりとともに「医学の進歩に貢献したい」「死後も役に立ちたい」と考える人も増えたのでしょう。

 

大学によっては合祀墓を持っていて、遺族の意向に従ってそちらに埋葬し、定期的に供養することもあるようで、お墓を見てくれる人がいないおひとりさまが、合祀墓に入ることも目的に献体を登録するケースもあるようです。

 

 

献体は宗教観なども影響しますが、自分が死んだ後も世の中の役に立つことを考えるのであれば、こうした選択肢もあってもよい気がします。

 

これ以外にも、今後いろいろな選択肢が登場しそうなので、現時点では情報収集に徹し、何を選ぶかをゆっくりじっくり考えてみたいと思います。

 

 

大江 加代

確定拠出年金アナリスト

※本連載は、大江英樹氏と大江加代氏による共著『お金・仕事・生活…知らないとこわい 定年後夫婦のリアル』(日本実業出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

お金・仕事・生活…知らないとこわい 定年後夫婦のリアル

お金・仕事・生活…知らないとこわい 定年後夫婦のリアル

大江 英樹
大江 加代

日本実業出版社

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