男性に知ってほしい…「妻が喜ぶ家事分担」「ありがた迷惑な家事分担」の決定的差 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦で家事を分担をしようにも、妻にイライラされたり、そもそも何から始めればいいのかわからない男性も少なくないでしょう。そこで本稿では、大江英樹氏・大江加代氏の共著『お金・仕事・生活…知らないとこわい 定年後夫婦のリアル』(日本実業出版)から、夫・英樹氏による「家事分担のアドバイス」を紹介します。

夫婦喧嘩を招きがちな「家事分担」

これは必ずしも定年後だけの問題ではないのですが、男性がある一定の年齢になってくると家事を手伝おうという人が増えます。

 

これはとてもよいことです。家族はフラットな関係であるべきですし、少なくとも会社員を引退したら、家事も夫婦で分担してやるべきだと思います。

 

ただ、若いうちから共働きで家事も育児も分担してやってきたのであればともかく、定年後、あるいはある程度の年輩になってから家事分担をする場合には、誰もが陥りがちな注意点がいくつかあります。これを知っておかないと、よかれと思ってやったことが夫婦の間で思わぬバトルになりかねないので気をつける必要があります。

男性が陥りがちな「家事の趣味化・ブランド化」

それまでやっていなかった家事を夫が始める場合、何をするかによって、状況がまったく変わってきます。

 

最近では料理をしようという人が増えているようです。かくいう私も週の内、何度か料理を作っていますし、食後の片づけは原則、私が全部やるようにしています。片づけをやってくれる夫に対しては、妻の多くがありがたいと思うでしょう。

 

でも料理を作る場合は必ずしもそういうわけではありません。

 

一般的に男性は料理に時間とお金をかけすぎる傾向があります。これは料理を趣味でやっているからです。男性が一旦料理にハマると、「最高の材料を使いたい」「下ごしらえにも手間をかけてじっくりと作りたい」という気持ちが前面に出てくることが多いのです。つまり料理の趣味化です。

 

一方、女性にとって料理は日常業務だったわけですから、コストパフォーマンスを考え、なるべく手間をかけず簡単に、安く作ることを重視します。これは毎日のことですから当然です。

 

そんななかで夫が手間ひまかけて料理を作り始めると、最初の数回は妻も嬉しく感じるでしょうが、そんな金に糸目をつけずに材料をふんだんに散らかして作る料理には、次第にうんざりしてきます。

 

さらに料理を作った後もきちんと片づけて掃除をしてくれればよいですが、作るだけ作って「後の片づけは任せる」とばかりにほったらかしでは、たまったものではありません。シェフ気取り・芸術家気取りでやられたのでは結局、手間が増えるだけになってしまいます。

 

だからこそ家事である料理を趣味化・ブランド化してはいけないのです。分担するのであれば、あくまでも「家事としての料理」を指向すべきなのです。

 

これが料理ではなく、掃除や洗濯、片づけといったジャンルの家事であれば料理ほどバトルが起きる可能性は少ないでしょうが、それでも家事にまつわる行き違いや衝突は常に起こりうるので注意が必要です。

シェフ並みの料理以前に「名もなき家事」こそ担うべき

男性の場合、家事というと前述したように料理を作るとか、掃除をして家中をピカピカに磨き上げるといった大がかりなことを想定しがちですが、実はもっと大切なことがあります。それが「名もなき家事」です。

 

「名もなき家事」とは、以前大和ハウス工業が「家庭によって異なる日常生活におけるごく些細な家事だけど面倒なものにはどんなものがあるか」ということを一般の方から投稿を募ったものです。ちなみにどんなものがあるのか、ベスト3を挙げてみましょう。

 

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第1位:裏返しに脱いだ衣類・丸まったままの靴下をひっくり返す作業

第2位:玄関で脱ぎっぱなしの靴の片づけ・下駄箱へ入れる/靴を揃える

第3位:トイレットペーパーの補充・交換

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他にもシャンプーやハンドソープの中身の補充、飲み終わったペットボトルの片づけ、お風呂や洗面台の排水溝に溜まった髪の毛を取り除くなどが上位にランクインされています。

 

では、男性諸氏にお聞きしたいのですが、これらをきちんとやっているでしょうか? 衣類は脱いだら脱ぎっぱなし、トイレでも「おい、紙がなかったぞ」と言うだけ──そんなことになっているのではありませんか?

 

たしかにこれらは家事とはいえないほどのことかもしれませんが、誰かがやらないといけないのは間違いありません。多くの場合、妻が黙ってやっています。

 

妻は妻で、この「名もなき家事」の負担が大きいことに気づかず、他の家事が片づかずにイライラすることもよくあります。

 

ゴミ出しもそうです。「あなたゴミ出ししといてね」と言われ、「うん、わかった。で、ゴミはどこにあるの?」と聞く夫の多いこと。

 

ゴミは一人で勝手に歩いてきてくれるわけではありません。家中にあるゴミ箱を回って回収する。特に台所の生ゴミは汁がこぼれていないかチェックし、漏れていたらゴミ箱を洗って乾かし、新しい袋を入れると同時に生ゴミはしっかりと口を縛る。そういう地味なことをやって一つの袋にゴミを入れた後に集積所に持って行って、初めて「ゴミ出し」が完了するのです。

 

シェフ気取りで立派な料理を作るのもよいですが、立派な家事をやる以前に「名もなき家事」を黙ってやることのほうが重要です。あなたの創作意欲を満たすためではなく、家事の負担を分担するためにこそ、誰でもできることはやるべきでしょう。

妻側の「寛容の精神」も大事

ここまでは夫が分担して家事を始めるにあたって、トラブルになりそうなことをお話ししてきましたが、実は妻の側にも気をつけてほしいことがあります。むしろ夫が家事をやりだして起きるトラブルやバトルのかなりの部分は、この妻の対応にもある気がしています。

 

それは夫が行う家事に対して、何もかも頭から否定するのではなく、うまくいかなくても寛容の精神でもって接してほしいということです。これはこれで大事ですし、女性に心がけてほしいことなのです。

 

 

大江 英樹

経済コラムニスト

 

1952年大阪府生まれ。野村証券で定年まで勤務した後に独立。以後は経済コラムニストとして、主に「資産運用」「年金」「行動経済学」、そして「シニア層のライフプラン」などをテーマに執筆、講演、メディアへの出演などの活動を続けている。

現在、NHKラジオ深夜便「大人の教養講座」のレギュラー解説、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」水曜午後キャスター。連載コラムは「日経ヴェリタス」「ダイヤモンドオンライン」等、著書は合計32冊で部数は累計40万部。

 

 

株式会社オフィス・リベルタス 取締役 

経済コラムニスト。専門分野はシニア層のライフプランニング、資産運用及び確定拠出年金、行動経済学等。大手証券会社を退職し、2012年にサラリーマンの老後支援を目的に(株)オフィス・リベルタスを設立。書籍やコラム執筆のかたわら、資産運用、年金、シニアライフプラン等のテーマで全国で年間140回を超える講演を行っている。CFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。主著に、『定年男子 定年女子』(共著、日経BP)、『経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)、『定年前』(朝日新書)、『資産寿命』(朝日新書)、『定年前、しなくていい5つのこと「定年の常識」にダマされるな!』(光文社)など多数ある。

著者紹介

確定拠出年金アナリスト
株式会社 オフィス・リベルタス 代表取締役 

大手証券会社に一般職として入社。その後、総合職への転換を経て22年間勤務し、その間一貫して「サラリーマンの資産形成」に関わる仕事に従事。退社後、紆余曲折を経て再び「サラリーマンの資産形成」をライフワークとして講演活動などを行う。

確定拠出年金の分野においては草分け的な存在で、NPO法人確定拠出年金教育協会の理事として月間10万人以上が利用する「iDeCoナビ」を立ち上げるなどiDeCoの普及活動も行っている。厚生労働省社会保障審議会の企業年金・個人年金部会委員。

主な著書に『サラリーマン女子、定年後に備える』(日経BP社、2021年)『最強の老後資産づくりiDeCoのトリセツ』(ソシム、2022年)がある。

著者紹介

連載お金・仕事・生活…知らないとこわい「定年後夫婦のリアル」

※本連載は、大江英樹氏と大江加代氏による共著『お金・仕事・生活…知らないとこわい 定年後夫婦のリアル』(日本実業出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

お金・仕事・生活…知らないとこわい 定年後夫婦のリアル

お金・仕事・生活…知らないとこわい 定年後夫婦のリアル

大江 英樹
大江 加代

日本実業出版社

【共働き夫婦、必読!】 「老後資金は2000万円ないと破産する」 「定年後は夫婦で共通の趣味を持つといい」 「シニア夫婦は“阿吽の呼吸”で生活を」etc. 巷でよく耳にするこれらのフレーズによって、「老後不安」を増…

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