苦痛で退職者続出…「非人間的」な労働環境。フォード社の強烈なマネジメント法とは【歴史のプロが解説】

苦痛で退職者続出…「非人間的」な労働環境。フォード社の強烈なマネジメント法とは【歴史のプロが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「働き方改革」という言葉も浸透しつつあるなかで、私たちの「働き方」は今後どのように変わっていくのでしょうか。世界史の面白いネタを収集するブログやYouTubeチャンネルを運営し、歴史ライターとして活動する尾登雄平氏が、著書『激動のビジネストレンドを俯瞰する 「働き方改革」の人類史』から、世界各国が歩んできた労働の歴史と、日本における働き方の未来について解説します。

 

歴史に見るマネジメントの始まり

マネジメントという手法が企業で導入されたのは、20世紀、大量生産・大量消費時代の幕開けとほぼ同時期です。アメリカの起業家フレデリック・テーラーは、労働者に一日あたりの生産量を課し、管理者に管理させることで効率的な生産が可能になる理論「科学的管理法」を確立しました。

 

彼は経営者になる前、工場で働く中で、同僚の労働者が「働くふり」をしているのを目撃しました。皆、経営者が作業にどのくらいの時間が必要かを知らないのをいいことに、できるだけ作業を遅らせていたのです。

 

そこで彼は経営者となったとき、作業時間の計測を行います。ストップウォッチで作業時間をカウントし、最も効率の良い動き方をしたときにどれくらいで製品が完成するかを集計したのです。

 

これにより経営者は、どれくらいの時間で製品が完成するかを知ることができます。そして、労働者には生産量のノルマが課せられるようになりました。

ロボットのように働け

経営者が生産量を管理すること自体、当時は画期的です。この新たな理論は、当初、社会の進歩を象徴するものであるとされ、歓迎されました。実際にテーラーの手法を導入したウォータータウン・アーセナル社が大きな利益を得たこともあり、「科学的管理法」はアメリカのみならず世界中に普及していきます。

 

テーラーは業務において、労働者が考えることや工夫する必要をなくそうと考えました。頭のスイッチを切って、言われたことだけを淡々とこなすだけでいい。労働者間のコミュニケーションは混乱やイレギュラーをもたらすものだから、必要ない。当初は人々に支持された考え方ですが、こうした「非人間的」な労働環境はやがて反発を生むようになりました。

 

1909年、USスチールの労働者は科学的管理法の「会社による非情な管理」に抗議してストライキを敢行しています。

ヘンリー・フォードの策略

効率的な生産のためのマネジメントを究極にまで推進したのが自動車王ヘンリー・フォードです。フォードは流れ作業のために組み立てラインを用意し、常に同じ動作で作業を行うように命じました。ネジを締める係は、同じ個所のネジを締め続けるだけです。まるで現代の産業用ロボットですが、発想としてはまさに同じ。機械の役割を人間に担わせたわけです。

 

1913年にハイランド・パーク工場の発電機製造で導入されたこの方式は、1台あたり20分かかっていた作業を13分にまで減少させました。フォードはこの方式を自動車製造に適用し、世界初の大衆車「モデルT」の生産に着手します。フォードはより効率的に、より大量に、そしてより安価に自動車を生産するためには、作業の規格化を徹底する必要があると考えていました。

 

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激動のビジネストレンドを俯瞰する 「働き方改革」の人類史

激動のビジネストレンドを俯瞰する 「働き方改革」の人類史

尾登 雄平

イースト・プレス

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