「俺は残業するんだから、お前も定時で帰るな」…日本の労働時間が長い根本要因【歴史のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「働き方改革」という言葉も浸透しつつあるなかで、私たちの「働き方」は今後どのように変わっていくのでしょうか。世界史の面白いネタを収集するブログやYouTubeチャンネルを運営し、歴史ライターとして活動する尾登雄平氏が、著書『激動のビジネストレンドを俯瞰する 「働き方改革」の人類史』から、世界各国が歩んできた労働の歴史と、日本における働き方の未来について解説します。

 

波平さんの勤め先はホワイト企業?

昭和時代が舞台のアニメ「サザエさん」。作中に描かれる家族の生活は、現代の平均的な暮らしと比べ豊かなものに見えます。

 

一戸建ての持ち家に2世帯暮らしで母と娘がどちらも専業主婦というのは、現代の都会なら相当に裕福な暮らしです。必ず家族全員揃って夕食をとるというのも、忙しい現代人にはなかなかハードルが高いでしょう。

 

そして磯野家の大黒柱である波平さんと婿であるマスオさんの働き方も、現代人には羨ましく見えます。朝の何時に出勤しているかよくわかりませんが、少なくとも日が落ちる前には退勤。退勤後には、よく上司や同僚とお酒を飲んでいます。もしかしたらあるのかもしれませんが、波平さんが残業しているエピソードを私は見たことがありません。「サザエさん」の世界では1日8時間労働が遵守されているようです。

 

「1日8時間、週40時間労働」は、現代の日本の労働基準法で定められているものです。法の上では、日本の労働者は全員、波平さんやマスオさんのような働き方をすることが保証されています。

 

しかしいったい、どれだけの人が実践できているでしょうか。

 

時間外労働が習慣化してしまっている人も多いのではないでしょうか。

 

例えば夜の9時まで残業したら、家に帰るのは10時を越えてしまう。風呂に入って、ご飯を食べ、家事をして、少しテレビを見たりスマホを触ったりしたらもう寝る時間です。寝るために帰宅しているような人も少なくないと思います。

 

日本人が諸外国に比べ長時間労働をしていることは、高度経済成長期から常識のように言われてきました。特に、昔の日本人の労働時間は今よりもずっと長かったことがデータからわかります。厚生労働省の資料(「毎月勤労統計調査」)によると、昭和35年(1960年)、労働者一人あたりの平均年間総実労働時間は2426時間。2426時間を単純に12で割ると202時間で、1か月22日働くとすると、1日の労働時間は9時間以上にもなります。盆休みや正月休みなどの連休を考慮すると、もっと長いかもしれません。

 

一方で平成21年(2009年)には1777時間となっており、参照元は異なりますが、OECDのデータによると2020年には1598時間にまで減っています。

 

しかし、厚生労働省の資料「総労働時間の推移」には、「平成8年度頃から平成16年度頃にかけて、パートタイム労働者比率が高まったことが要因となって総実労働時間は減少傾向で推移してきた」と記載されています。

 

こうなると話が変わってきます。フルタイムの労働時間は年間1598時間よりもはるかに長いことが予想されるからです。それに、申告されない「サービス残業」の時間を入れるともっと長くなるでしょう。胸を張って「労働時間が減った」とはとても言えない状態です。

 

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    歴史ライター

    1984年福岡県生まれ。出版社にて勤務する傍ら、世界史の面白いネタを収集するブログ「歴ログ-世界史専門ブログ-」、YouTubeチャンネル「歴ログ-世界史専門チャンネル-」を運営。歴史ライターとしても活動し、ビジネス雑誌、企業オウンドメディア、会報誌などに寄稿する。著書に『あなたの教養レベルを劇的に上げる 驚きの世界史』(KADOKAWA)がある。

    著者紹介

    連載日本のビジネスパーソンが今こそ学ぶべき「働き方改革」の人類史!

    激動のビジネストレンドを俯瞰する 「働き方改革」の人類史

    激動のビジネストレンドを俯瞰する 「働き方改革」の人類史

    尾登 雄平

    イースト・プレス

    ・なぜ、日本型組織は「時代遅れ」になったのか? ・なぜ、ビジネスパーソンに「自己啓発」が求められるのか? ・「イノベーション」は労苦を軽減するのか? 古今東西の歴史知識を収集する著者が、 いちビジネスパーソン…

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