FTAによって増加したのは「インドへの輸出」
インドとの包括的経済連携協定(CEPA)反対派は、FTAの下でインドばかりに利益が偏っていると指摘する。しかし、これは正しくない。FTAの下で、スリランカの輸出業者が利益を得ていたことは明らかである。
2000年のスリランカからインドへの輸出額5560万米ドルのうち、16%(860万米ドル)はFTAによるものであった。そして2013年までに輸出額は5億米ドルに成長し、FTAはこのうちの65%(3億5400万米ドル)を占めるまでになった。
これに対し、インドからの輸入は2000年に6億米ドルあり、そのうちの9%(5390万米ドル)がFTAによるものであった。それが2013年までに、輸入額は30億9200万米ドルに増えたものの、FTAによる割合はわずか13%(3億9300万米ドル)に過ぎなかった。明らかにスリランカの輸出はFTAによって成長したという事実をみれば、FTAはスリランカの輸出に大きく有利であると言えるのだが、このことは反対派の論理から抜け落ちてしまっている。
もともとスリランカの主要なFTA輸出品目は銅や植物油だったが、2005年のインドとの対立によって、翌年の輸出額は1億米ドル近く低下した。しかしその後は回復して、輸出品目も付加価値のある高茶、絶縁ワイヤーやケーブル、肌着、家具、食器、ゴム手袋、機械類などへと多様化した。その結果、FTAの下でスリランカの輸出は2000年から2013年に877%成長したが、インドからの輸入は415%成長だった。そしてFTA下でのインドとの貿易赤字は、輸出額に対する輸入額の割合で6.2倍から1.1倍にまで大幅に改善した。
しかしインドでは非関税障壁や官僚的なお役所仕事がはびこっていると主張するCEPA反対派は、これらの貿易に関する数値では納得しなかった。彼らが主張するとおり、インドとの貿易には困難が伴うが、しかしCEPAはそれらの問題に対処することを目的にしていたはずである。
CEPAを放棄することは、FTAの問題を放置することである。CEPA交渉の関係者は、インドとの貿易上の問題を解決するための方法が、CEPAには盛り込まれていると主張している。
CEPAの基本的な性格を改めて考える
CEPAとは不変の決まりではなく、また包括的な経済協定であろうとしても、そうなることもできないものだ。また協議には何年もかかる可能性がある。つまり基本合意締結後に、それを土台にして詳細を積み上げ続けることが予定されていた。両国は貿易、サービス、投資、労働流動性など各分野について交渉をし、合意したものをCEPA文書に取り決めとして組み込んでいくことができる。またその取り決めを取り消すことも可能である。
「従って、もしスリランカがある取り決めに不満があれば、CEPAから取り除くことができる」と、政策研究所専務理事で、サービス部門のCEPA協議チームのリーダーである、サーマン・カレガマ博士は言う。
スリランカ側は、スリランカが小国であることを考慮する必要性を主張してきた。そしてインド側はFTA交渉でも認めたように、「特別かつ特異的な待遇」をスリランカに付与することで、規模の格差へ配慮することに合意した。
CEPAにとって、これは非常に重要な進展だった。しかし、かつてCEPAの制定に関わった政治家、官僚、財界の人々は、この非常に重要な点について、利害関係者に伝えることに失敗し、反対派を利することになってしまった。さらに、CEPAは2008年時点での大統領のナショナリスティックな立場とも合わなかった。
次回は7年前に進んだCEPA交渉のなかで、スリランカ側が引き出したインドの譲歩について見ていきます。