写真:Presidential Secretariat of Sri Lanka

インドとの経済協定に関するスリランカ国内の議論についてお伝えしている本連載。最終回は、経済的利益だけでは割り切れない事情として浮上する、ナショナリズムの問題について見ていきます。

CEPAに基づく投資には制限も

CEPA/FTAの反対者は、インドのスリランカに対する10億米ドルをやや上回る投資、そしてパイプラインでの10億米ドルの投資についてほとんど不満はない。CEPAの下で、スリランカは投資の準備段階から、インド企業が国内の企業と同じ地位を得ることを約束した。

 

しかし、インドからスリランカのある分野へ投資することを許可するかどうかについては、スリランカ側はケース・バイ・ケースで決定することができた。これは、動産・不動産、株式、株・社債などを含む広い範囲の投資に及ぶ。また投資開始前、開始後を通じたすべての期間が、CEPAの適用範囲である。一方で、課税、インセンティブ、補助金、政府調達などは、政治的自由のためCEPAの対象から除かれた。

根本的な問題は「信頼」の欠如

FTAの成功とCEPAの保護条項にかかわらず、反対派はCEPAがスリランカを救う可能性を信じない。根本的な問題は信頼の欠如である。CEPA反対派はマヒンダ・ラージャパクサ前大統領の動機を信頼せず、CEPAを行き詰まらせた。CEPAを活用しスリランカ経済に利益を与えるためには、政策立案者は信頼を形成する必要がある。

 

CEPAが反対されるのには理由もある。製造業者の中にはインドのお役所仕事に損害を受けた者もいるし、インドの輸入品によって損害を受けた者もいる。反対派は目的達成のためにデータを選択的に用いて恐怖心に訴え、スリランカの輸入業者や製造業者のインドでの成功を無視する。さらに悪いことに、国民が自分たちのために商品やサービスを選択する経済的自由を否定したがっているようでもある。

 

反対派はナショナリズム的な手法を使うことが好きなので、おそらくスローガンは次のようなもののはずである。インド市民に与えるよりも、スリランカ市民である我々に与えよと。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年5月に掲載した「The Anti-CEPA Lobby’s Twisted Trade Argument」を、翻訳・編集したものです。

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