介護業界のイメージアップは喫緊の課題
介護業界で働いている人の多くが経済的に豊かでない層であることは事実です。貧しさの中で、歯を食いしばって生きている。だからこそ、ニーチェの言う「ルサンチマン」にさらされ、内に抱く嫉みや忿懣(ふんまん)が、先ほどの言動となって業界内部に現れる。この行き過ぎた横並び主義にこそ、介護業界固有の問題が潜在していると思います。
けれど、そんな業界に果たして上昇志向の強い若者が足を踏み入れたいと思うでしょうか。介護業界は人手不足と言われますが、様々ある要因の大きな一つとして、「若い人が参加したいと思わない」というのがあると思います。
自転車に乗って、安い服で働くとなると、どうしても「介護ってそういうもの」というオーラが出てしまいます。そうすると敬遠してしまって、介護業界に入るのをためらう人が結構な割合でいます。
たとえば、アパレルブランドメーカーにはこぞって覇気のある若者が入社しても介護業界には人が来ない。ケア現場は、医療的ケアなど高度で奥行きのある、深い仕事だと思うのですが、片やキラキラして若い人が憧れる業界、片や介護だけは最終手段みたいな(笑)。
やはり若くて、柔軟で、ビジョンや希望を持って人生をクリエイトしていこうという人たちに忌避されていると、人手不足も本当の意味で解消されません。量も質も集まらず、社会的要請にも応えられない。介護業界にはびこるルサンチマンカルチャーを脱却しないと、業界は良くならないと思っています。
目前には介護従業者が30万人以上足りなくなるという「2025年問題」も控えていて、早急な対策が必要な中で、業界を「カッコよくする」というカルチャーの面は非常に重要です。そして、それに向かっていこうとする人たちを、我々が邪魔してはいけないと思うのです。
ちなみに私自身は服も安物だし、高級車にも乗らず、日用品は100円ショップ、週の半分は大衆食堂に通っています。何度も言いますが、言わせてください(笑)。
つまり、私個人としては清貧の道を行きたいと思っていますが、「介護は聖なる領域で、お金は汚い」と捉える向きがある中で、それでも我々が生活していけるのはお金があるからこそです。介護を聖域とする現在の状況に甘んじるのではなく、業界のイメージを変え、魅力的な業種として認知してもらうためにも、いわゆる俗なる面もしっかりと保障していくべきだと考えています。高級車が本社の前にずらりと並んでいるだけで驚かれたり、陰口をたたかれたりするところから脱却しなければいけません。