●物価の伸びは前月からおおむね鈍化との見方が優勢、結果次第で株価は大きく上下する公算大。
●CPIの前年比伸び率については、CPI全体の6割近くを占めるサービスの寄与度拡大が続いている。
●サービスのうち、構成比率の高い帰属家賃は上昇が続いており、今回のCPIをみる上では要注目。
物価の伸びは前月からおおむね鈍化との見方が優勢、結果次第で株価は大きく上下する公算大
米国では12月13日に、11月の消費者物価指数(CPI)が発表されます。今回は、米連邦公開市場委員会(FOMC)開催中(12月13日、14日)の発表であることから、一段と注目度が高まっています。直近の市場予想では、総合指数が前月比+0.3%(10月は+0.4%)、前年同月比+7.3%(同+7.7%)となっており、食品とエネルギーを除くコア指数は前月比+0.3%(同+0.3%)、前年同月比+6.1%(同+6.3%)となっています。
このように、物価の伸びは10月からおおむね鈍化するとの見方が現時点では優勢です。そのため、仮に予想を大きく上回る物価の高い伸びが示されれば、米金融引き締めの長期化や、それによる景気のさらなる冷え込みへの警戒が強まり、株価は下落の反応が見込まれます。逆に、物価の伸びが予想を大きく下回れば、米金融引き締めがさほど長期化せず、景気減速も軽微にとどまるとの期待から、株高の反応となる公算が大きいと思われます。
CPIの前年比伸び率については、CPI全体の6割近くを占めるサービスの寄与度拡大が続いている
さて、ここで改めてCPIの中身、すなわち構成項目を詳しくみてみます。CPIは、「食品」、「エネルギー」、「食品とエネルギーを除く項目(いわゆるコア項目)」という3つの大きな項目で構成され、コア項目は、「財」と「サービス」に分類されます。直近の構成比率は、食品が13.7%、エネルギーが8.0%、コア項目が78.3%で、コア項目のうち財が21.2%、サービスが57.1%となっています。
このように、サービスがCPI全体に占める割合は、6割近くに達していることが分かります。次に、食品、エネルギー、財、サービスの4項目について、CPIの前年比伸び率への寄与度を確認してみます。その結果は図表1の通りで、このところ、エネルギーと財の寄与度が低下している一方、食品の寄与度は高止まりが続いており、サービスの寄与度は拡大傾向が示されています。
サービスのうち、構成比率の高い帰属家賃上昇が続いており、今回のCPIをみる上では要注意
このサービスは、「住居」、「医療」、「輸送」などの8項目に分類され、8項目のうち構成比率が最も高いのは住居の32.6%です。住居はさらに細かく分類されますが、そのうち構成比率が最も高いのは「帰属家賃」(持ち家に住んでいる人が、その家を借家とした場合に支払う想定家賃)の24.0%です。サービスと帰属家賃は、いずれも前年比で高い伸びが続いており(図表2)、CPIの高止まりの一因となっています。
なお、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は11月30日の講演で、住宅サービスのインフレ率は、インフレ率の転換点付近で、他の物価に遅れる傾向があり、来年あたりから下がり始めるとの見方を示しました。この点を踏まえると、今回もサービスや帰属家賃の動向は注目ポイントであり、価格が落ち着かなければ、11月CPIは市場予想ほど伸びが鈍化しないことも、想定しておく必要があると思われます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年11月「米CPI」発表直前のチェックポイント【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト