企業は積極的にDXを推進し始めています。変化の激しいこれからの時代、DXの流れに乗り遅れると、企業の成長に深刻な影響を及ぼしかねません。
しかしDXはこれまでのシステムを抜本的に置き換えていくものであり、負担する費用が大きくなる場合もあります。そこで、本記事ではDX推進で受けられる補助金についてまとめています。また、補助金申請の基礎知識と注意点、申請方法、2023年度以降の見通し等も解説しています。
1.【2022年度・国の補助金】DX推進に向けて実施された補助金8選
2022年度、国がDXを推進している企業に向けて実施している補助金について、代表的なものを8つ選んで解説します。
DX推進に対する補助金は今後も強化されていくことが期待されますが、まず2022年の補助金について確認していきます。
1.1. IT導入補助金
IT導入補助金は中小企業や小規模事業者に対して、ITツール導入支援のために設けられました。大企業と違って中小企業や小規模事業者はDXに使える手元資金が少ないため、非常に頼りになる補助金です。
導入された目的は、企業がITツールを導入することにより、業務効率や生産性のアップを図るためで、対象となる企業の規模やITツールの分類は予め決められています。
補助金は「A類型」と「B類型」に分けられており、A類型はITツールがひとつ以上で150万円未満、B類型はITツールが4つ以上のプロセスを担っているときに450万円以内で、補助が受けられます。
1.1.1. 補助金の対象となる事業者
補助金の対象となる事業者をわかりやすく説明するため、表にしてまとめています。
■中小企業
事業者 |
業種・組織形態 |
資本金 (資本または出資の総額) |
従業員数 |
資本金・従業員規模の一方で、 右の表記以下の場合が対象(個人事業を含む) |
製造業・建設業・運輸業 |
3億円 |
300人 |
卸売業 |
1億円 |
100人 |
|
サービス業(ソフトウェア業・情報処理サービス業 ・旅館業除く) |
5,000万円 |
100人 |
|
小売業 |
5,000万円 |
50人 |
|
ゴム製品製造業 |
3億円 |
900人 |
|
ソフトウェア業もしくは情報処理サービス業 |
3億円 |
300人 |
|
旅館業 |
5,000万円 |
200人 |
|
その他業種 |
3億円 |
300人 |
|
その他の法人 |
医療法人・社会福祉法人・学校法人 |
ー |
300人 |
商工会・都道府県商工会連合会および商工会議所 |
ー |
100人 |
|
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される 中小企業団体 |
ー |
主となる業種に記載の従業員規模 |
|
特別な法律で設立された組合もしくはその連合会 |
|||
一般または公益財団法人・一般または公益社団法人 |
|||
特定非営利活動法人 |
■小規模事業者
業種 |
従業員数 |
商業・サービス業(宿泊業、娯楽業は除く) |
5人以下 |
宿泊業・娯楽業 |
20人以下 |
製造業その他 |
20人以下 |
1.1.2. 通常枠(A類型・B類型)
通常枠は中小企業や小規模事業者の生産性向上を図るために設けられ、ITツール導入時に利用できます。
補助金にはA類型とB類型があります。
A類型 |
B類型 |
|
補助額 |
30万円~150万円未満 |
150万円~450万円以下 |
補助率 |
2分の1以内 |
|
補助対象経費区分 |
ソフトウェア購入費・最大1年分のクラウド利用料・導入関連費 |
1.1.3. セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠の補助金は、中小企業や小規模事業者などがサイバーインシデントによって企業の事業継続が難しくなるのを回避したり、サイバー攻撃の被害を受けることで生産性向上を阻害されたりするのを軽減するために導入されました。
種類 |
セキュリティ対策推進枠 |
補助額 |
5万円~100万円 |
補助率 |
2分の1以内 |
機能要件 |
独立行政法人情報処理推進機構が公表している 「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」掲載のいずれかのサービス |
補助対象 |
サービス利用料(最大2年分) |
1.1.4. デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
デジタル化基盤導入枠は中小企業や小規模事業者などの生産性向上を支援し、インボイス制度への対応も考慮して、企業間の取引のデジタル化を強く推進するために設けられました。
種類 |
デジタル化基盤導入類型 |
|
補助額 |
ITツール |
|
5万円~350万円 |
||
内、5万円~50万円以下の部分 |
内、50万円超~350万円の部分 |
|
機能要件 |
会計・受発注・決済・ECのなかから 1機能以上 |
会計・受発注・決済・ECのなかから 2機能以上 |
補助率 |
4分の3以内 |
3分の2以内 |
対象ソフトウェア |
会計・受発注・決済・ECの各ソフト |
|
賃上げ目標 |
なし |
|
補助対象 |
ソフトウェア購入費・最大2年分のクラウド利用費・導入関連費 |
1.1.5. デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)
デジタル化基盤導入枠には、「デジタル化基盤導入類型」の他に、「複数社連携IT導入類型」もあります。
複数社連携IT導入類型も中小企業や小規模事業者を対象として、企業のITツール導入を助けるために設けられた制度です。
種類 |
複数社連携IT導入類型 |
|||
補助額 |
デジタル化基盤導入類型の要件に属する経費 |
デジタル化基盤導入類型の要件に属さない、複数社類型特有の経費 |
||
(1)基盤導入経費 |
(2)消費動向等分析経費 |
(3)補助事業者が参画事業者をとりまとめる際に 必要となる事務費・外部専門家謝金・旅費 |
||
5万円~350万円 |
50万円×グループ構成員数 |
((1)+(2))×10% |
||
内、5万円~50万円以下の部分 |
内、50万円超~350万円の部分 |
|||
機能要件 |
会計・受発注・決済・ECのなかから1機能以上 |
会計・受発注・決済ECのなかから2種類以上 |
ー |
|
補助率 |
4分の3以内 |
3分の2以内 |
3分の2以内 |
3分の2以内 |
補助上限額 |
3,000万円以内 |
200万円 |
||
対象ソフトウェア |
会計・受発注・決済・EC各ソフト |
各種システム |
ー |
|
賃上げ目標 |
なし |
|||
補助対象 |
ソフトウェア購入費・最大2年分のクラウド利用費・導入関連費 |
ソフトウェア購入費・1年分のクラウド利用費・導入関連費 |
||
内ハードウェア購入費用 |
PC・タブレットなど:補助率2分の1以内、補助上限額10万円 |
AIカメラ・ビーコン・デジタルサイネージなど |
||
レジ・券売機など:補助率2分の1以内、補助上限額20万円 |
1.2. 事業再構築補助金
事業再構築補助金は2020年から続く新型コロナウイルスの影響で業績が厳しくなっている中小企業に向けて、業種を転換したり、新規事業を進めたりできるように、事業の再構築資金を補助する制度です。
多くの事業がコロナ禍の影響を受けていますが、飲食店や観光業は特に大きく売上を落としています。事業再構築補助金は苦しい業績を強いられている企業が事業を変革し、新たな道を歩むことを支援するためのものです。
補助金の通常枠では従業員数によって補助金額が違っており、最低が100万円からで、最大は8,000万円となっています。
1.2.1. 補助金を申請できる要件
事業再構築補助金の申請は売上減少だけが必要なわけではなく、「グリーン成長枠」「最低賃金枠」など、他にも企業の状況に応じた申請枠が用意されています。
事業再構築補助金の必要申請要件は下記の3つです。
- 売上減少ー2019年または2020年1~3月との比較で、6ヵ月間の内3ヵ月間で売上合計10%以上減少していること
- 事業再構築への対応ー新分野、事業転換などへの対応
- 認定経営革新等支援機関との事業計画作成ー経済産業大臣認定の支援機関を利用した事業計画の作成
事業再構築補助金の申請は補助金をもらうための事業計画ではなく、新型コロナウイルスの影響を受けている現状を踏まえて、またはウィズコロナ時代を生き抜いていくために必要な事業計画を立てるという点が重要です。その内容も机上の空論ではなく、自分自身が責任を持ってやり遂げられる事業である必要があります。
1.2.2. 通常枠
通常枠の補助金は従業員数により、上限が違ってきます。
従業員 |
補助額 |
補助率 |
20人以下 |
100万円~2,000万円 |
中小企業:2/3(6,000万円超は1/2) 中堅企業:1/2(4,000万円超は1/3) |
21~50人 |
100万円~4,000万円 |
|
51~100人 |
100万円~6,000万円 |
|
101人以上 |
100万円~8,000万円 |
1.2.3. 大規模賃金引上枠
大規模賃金引上枠は雇用している従業員数が多いなかでも賃金を引き上げ続け、従業員をさらに増やして生産性を上げようとしている中小企業を対象にしています。
条件は通常枠の申請要件を満たしたうえで、最低賃金を年額45円以上引き上げ、従業員の数を年率平均1.5%以上増やすことです。
従業員数 |
補助額 |
補助率 |
101人以上 |
8,000万円超~1億円 |
中小企業:2/3 (6,000万円超は1/2) 中堅企業:1/2 (4,000万円超は1/3) |
1.2.4. 回復・再生応援枠
回復・再生応援枠はコロナ禍で経営に苦しんでいるなかでも、事業再構築に取り組もうとしている中小企業を対象にしています。
条件は通常枠の申請要件をクリアし、2021年10月以降の月売上高が2020年または2019年の同月比30%以上減少あるいは中小企業活性化協議会等の支援を受け再生計画を立案していることです。
従業員数 |
補助額 |
補助率 |
5人以下 |
100万円~500万円 |
中小企業:3/4 中堅企業:2/3 |
6~20人 |
100万円~1,000万円 |
|
21人以上 |
100万円~1,500万円 |
1.2.5. 最低賃金枠
最低賃金枠は最低賃金を引き上げたことにより、資金繰りが困難になった中小企業を対象にしています。
通常枠から補助金の上限を引き上げて、補助率を引き上げています。
従業員数 |
補助額 |
補助率 |
5人以下 |
100万円~500万円 |
中小企業:3/4 中堅企業:2/3 |
6~20人 |
100万円~1,000万円 |
|
21人以上 |
100万円~1,500万円 |
1.2.6. グリーン成長枠
グリーン成長枠は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」に定められている14分野の実行計画を進めている中小企業、中堅企業を対象にしています。
補助金の上限額は最大で1.5億円です。必須申請要件の「売上高に対し10%減少」は問われません。
中小/中堅 |
補助額 |
補助率 |
中小企業 |
100万円~1億円 |
中小企業:1/2 中堅企業:1/3 |
中堅企業 |
100万円~1.5億円 |
1.2.7. 緊急対策枠
緊急対策枠は、予想できない経済環境の変化の影響を受けた中小企業を対象にしています。第7回緊急対策枠では、原油、物価の価格高騰の影響を受けた場合に申請対象となります。
従業員数 |
補助額 |
補助率 |
5人以下 |
100万円~1,000万円 |
中小企業:3/4 中堅企業:2/3 |
6~20人 |
100万円~2,000万円 |
|
21~50人 |
100万円~3,000万円 |
|
51人以上 |
100万円~4,000万円 |
1.3. ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり補助金とは、中小企業の生産性向上や新しいサービスの誕生を後押しし、競争を生き抜くために設けられた、開発や設備投資に使うための補助金です。
設備投資、開発費用を対象とする一般型と、日本国外の拠点として海外への進出を目指すグローバル型の2種類があります。補助金が承認されるためには、企業がどれくらい成長するか、財務基盤はしっかりしているか、賃上げは計画的に行われるかなどがみられます。
補助金額の幅は100万円から3,000万円までです。中小企業の場合は1/2~2/3まで、小規模事業者の場合は2/3までが補助率となっています。
1.3.1. 補助金の対象となる事業者
ものづくり補助金を申請できるのは下記の対象者です。
1つめは申請時点ですでに創業している企業です。法人の場合、設立登記を行っていなければならず、個人事業主は税務署に開業届を提出済である必要があります。
2つめは企業規模です。業種ごとに資本金、従業員数の上限が決まっており、いずれかが基準以下でなければなりません。たとえば製造業などは資本金が3億円以下、従業員数が300人以下である必要がある一方、その他のサービス業は資本金5,000万円以下、従業員数100人以下と、業種が違えば基準値は大きく違ってきます。
3つめは賃金の引き上げ計画です。営業利益と人件費、減価償却費をプラスした付加価値額と、賃金引き上げ要件を満たす事業計画をつくり、従業員に表明していることが条件です。
1.3.2. 補助額と補助率
補助率は原則1/2であるものの、従業員5名以下の小規模事業者の場合は補助率が2/3となります。
先端設備導入計画、経営革新計画の認定を受けている場合も同様に補助率は2/3です。原則は1/2であるにもかかわらず、補助率を上げるハードルが低いため、ほとんどの申請者は補助率2/3での申請を選択しています。
2020年以降、多くの事業で新型コロナウイルスの影響を受けていますが、コロナ禍で導入された「小規模事業者持続化補助金」の補助率は3/4となっています。
1.4. 成長型中小企業等研究開発支援事業
成長型中小企業等研究開発支援事業は「商業・サービス競争力強化連携支援事業」と「戦略的基盤技術高度化支援事業」が統合されてできた制度です。
ものづくり基盤技術とサービスの高度化を実現するために、大学や公設試験研究機関等と連携して実施する研究開発等を行っている中小企業が対象となります。具体的には製造業が精密加工や立体造形等、基盤技術を向上させるために研究開発したり、新しい販路を開拓したりすることを後押しします。
補助金の上限は単年度で4,500万円以下、3年間合計で9,750万円以下となっており、補助率は2/3以内です。ただし出資獲得枠(ファンド等の出資者からの出資が見込まれる事業者)に該当する事業者の場合は、単年度で1億円以下、2年間合計で2億円以下、3年間合計で3億円以下となり、補助上限額はファンド等から出資を受ける予定金額の2倍までとなります。
1.5. 中小企業デジタル化応援隊事業
中小企業デジタル化応援隊事業※は中小企業がITツール等の導入で業務のやり方を変えるべく、ITの専門家からサポートを受けるために設けられた補助制度です。
※ 中小企業デジタル化応援隊事業第Ⅱ期は2022年2月28日で終了しています
2020年以降のコロナ禍により、コロナ対策や働き方を変える必要性が高まっています。中小企業の場合、テレワークやデジタルツールへの関心はあるものの、ノウハウが大企業ほど十分ではなく、ITが定着していません。
中小企業デジタル化応援隊事業を利用することにより、支援希望の中小企業はIT専門家とマッチングした支援を受けることが可能です。この事業を利用すると、支援を受けた中小企業はIT専門家に対して、本来支払うべき時間単価から最大3,500円を引いた金額の支払いで抑えられます。ただし、実費負担は1時間あたり最低500円以上でなければなりません。
1.6. 地域新成長産業創出促進事業費補助金(地域DX促進活動支援事業)
地域新成長産業創出促進事業費補助金は、資金不足やIT人材不足が影響し、DX推進で後れを取っている地域の事業者を支援し、地域企業の生産性向上を図るための補助金制度です。
地域企業のDX導入には経営やデジタルについての専門的知見やノウハウの補完が必要で、この補助金は地域企業がITツールなどDX推進をする活動の費用となります。
単独の都道府県内に留まる事業者が対象のA類型の場合は2,000万円、2都道府県に跨がる事業者が対象のB類型の場合は2,500万円、3つ以上の都道府県に跨がる事業者が対象のC類型の場合は3,000万円が補助上限額となっています。
補助率はいずれも10/10で、電子申請システムからのみ申請できます。
1.7. 地域新成長産業創出促進事業費補助金(地域デジタルイノベーション促進事業)
地域新成長産業創出促進事業費補助金は経済産業省が新たなビジネスを構築すべく、試作品の製作や事業性の評価などに取り組む地域企業を対象とした補助金です。
補助率は経費の対象となる金額の3分の2以内、中小企業以外は2分の1以内で、補助の上限額は1企業あたり1,500万円まで、中小企業以外は1,100万円までとなっています。なお、応募の条件は実証企業とITベンダー、地域金融機関、大学、商工団体などの協力団体を含んだコンソーシアムの形成が必須です。
1.8. 小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自社の経営計画をつくって販路の開拓や業務効率化に取り組むのを支援するための補助金です。
賃上げや事業規模の拡大を計画し、創業や後継ぎの候補となる人材の確保や育成、インボイス発行事業者へと変わるためなど、社会の変化に対応するための取り組みに対して、補助金が給付されます。
通常枠の場合は50万円、賃金引き上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠がそれぞれ200万円、インボイス枠は100万円が補助上限額となっています。補助率はいずれも2/3です。ただし、賃金引上げ枠のうち、赤字事業者の場合は3/4となります。
補助金の対象となるのは機械装置等の費用、広報費、Webサイト関連費、旅費、開発費、資料購入費、委託・外注費などです。
2.【2022年度・自治体】DX推進に向けて実施された補助金一部抜粋
各自治体ではDX導入支援の補助金制度を設けています。
政府が定めたDXの方針では「国民の幸福な生活の実現」「誰一人取り残さないデジタル社会の実現」「国際競争力の強化」の3つを挙げています。
国は自治体と連携し、企業が従来のアナログ業務から脱却し、DXを進めていくことを後押ししようとしているのです。
地域 |
都道府県 |
補助金制度 |
北海道 |
北海道 |
札幌市:令和4年度DXモデル創出補助金 |
東北 |
岩手県 |
令和4年度沿岸地域基幹産業DX推進事業費補助金 |
山形県 |
ロボット導入加速化支援事業 |
|
関東 |
神奈川県 |
神奈川県DXプロジェクト推進事業 |
埼玉県 |
さいたま市DX推進補助金 |
|
中部 |
長野県 |
AI・IoT等先端技術活用DX推進事業 |
岐阜県 |
令和4年度岐阜県DX人材確保事業費補助金 |
|
関西 |
大阪府 |
堺市:堺市中小企業DX促進補助金 |
中四国 |
山口県 |
令和3年度 中小企業DX推進補助金 |
愛媛県 |
DX人材育成支援事業費補助金 |
|
九州 |
福岡県 |
中小企業DX促進補助金 |
長崎県 |
長崎県DXアドバイザー招へい事業補助金 |
|
沖縄 |
沖縄県 |
沖縄DX促進支援事業 令和4年度ICTビジネス高度化支援事業 |
3. 補助金の特徴
そもそも補助金とはどのようなものか、その特徴について解説します。
3.1. 補助金とは国や自治体が政策等の達成を目指して支援を行う制度
補助金とは国、地方公共団体が掲げる政策の目的に合った事業をしている企業に対して、資金面でサポートするために給付されるお金のことをいいます。
補助金の管轄は主に経済産業省や地方自治体となっており、新しい事業や創業を後押ししたり、雇用を安定させたりすることなどが目的です。補助金を受けるにはそれぞれ条件が設けられており、申請したから必ず受給できるというものではありません。
公募期間はおおよそ1ヵ月程度で、応募した企業が多ければ多いほど倍率が上がり、審査に通らない可能性も高くなります。審査に通るためには必要書類が揃っているのはもちろんのこと、事業計画書を丁寧に作り込み、アピールすることが大切です。
3.2. 補助金を受給するメリットは資金獲得以外にもある
補助金のメリットは資金獲得だけではありません。補助金を受けるためには事業内容を申請時に明らかにする必要があります。
つまり、専門家による厳しい審査を通過し、狭き門をくぐり抜けて、自社の計画が認められたということを意味するのです。補助金を受給した場合は、国などから一定の評価を得たといえます。
また、補助金の受給は金融機関からの信用にもつながります。補助金以外の融資についても、信用力の高さを活かして優先的に受けられる可能性があります。
金融機関へは金融庁から補助金受給した企業を評価するようにという通達が出ており、補助金を受けた企業に対して各金融機関でつなぎ融資なども行われています。このように、補助金の申請は準備も大変で競争率も高く、多くの企業が落とされますが、受給することができれば、それ自体が大きなメリットとなるのです。
3.3. 補助金を受給すると会計監査の対象となる可能性がある
企業が国や地方自治体から補助金を受給した場合、会計監査の対象になる可能性があります。
会計監査の対象となると、会計状況全般について調査されることになります。本来の目的以外の項目で不透明な点が見つかった場合、余計な指摘を受ける可能性があります。会計監査が入った場合に対応できるよう、自社の財務状況についても見直し、内容を把握しておく必要があります。
3.4. 補助金は予算が限られている
補助金は予算が決まっているため、申請期間に間に合ったとしても、補助金を受けられない可能性があります。
補助金によっては予定の上限額に達した時点で期限前でも締め切ってしまう場合がありますので、補助金を受給するために情報収集と早めの準備は欠かせません。
中小企業庁が運営している中小企業向けの補助金総合支援サイト「ミラサポPlus」では補助金の最新情報を掲載していますので、有効活用することをおすすめします。
4. 補助金を検討する際の8つの注意点
補助金の受給を検討するうえで、知っておくべき8つの注意点について解説します。
4.1. 複数の補助金や助成金との併用はできない場合がある
同じ政策目的で給付される複数の補助金については併用できないことがあります。
なお、補助金と同じく、国や地方自治体から受けられるお金に「助成金」があります。補助金と助成金も、併用できない場合があります。
4.2. 期間内に審査に申し込む必要がある
補助金には申請締め切り日が設けられています。しかも、締切前でも、補助金が予算の上限に達して終了となるケースも珍しくありません。
したがって、申請するかどうかの判断と申請手続きはできるだけ早く進める必要があります。
また、申請期間が終わっても、新たに申請受付が開始される場合がありますので、国や地方自治体の動向はいつも気にしておくようにしてください。
4.3. 審査に必ず通るわけではない
返済の必要がない補助金には、審査基準を満たしている多くの企業が申請してきます。したがって、申請する企業が多ければ多いほど、競争率が上がってしまうのです。
申請に必要な書類を過不足なく揃えて、丁寧に進めるようにしてください。
4.4. 申請書類に不備がないようにする
申請には事務処理が多く煩雑なことがありますので、申請書類に不備がないように注意してください。
もし不備を指摘されてしまうと、申請の受付が遅れてしまい、結果として受給も遅れることになってしまいます。時間に余裕を持って、申請に必要な内容を正確に把握したうえで進める必要があります。
4.5. 補助金の支給決定前に補助事業を始めることはできない
補助事業は、補助金の交付決定がされた以降でないと着手できません。支給決定前に事業に着手していた場合、補助金を受け取れない可能性があります。
4.6. 事後検査を経なければ支給を受けられない
補助金が支給されるのは事後検査を経たあとです。すなわち、補助金を申請した事業の完了後、補助金が正しく使われたか、金額が公募要領に沿ったものであったかを検査する「確定検査」が行われます。
確定検査において、目的外に支出していることや、正しい処理がなされていないことが判明した場合、補助を却下される場合もあります。
4.7. 補助率が100%でない場合には自己負担が要る
事業に対する補助率は100%でない場合が多く、補助金で事業すべてをまかなうことは難しいといえます。
そのため、補助金の考え方としては「一部の資金をまかなう」というのが正しく、足りない費用に関しては自社の資金から支出しなければなりません。
4.8. 補助金の受給はゴールではない
補助金は受給したら終わりではありません。申請時に事業計画を提出した内容のとおり、事業を確実に進めていく必要があります。
国や地方自治体も申請を決定して終わりではなく、申請内容と一致しない点がないか検査します。
5. DXのための補助金申請を行う前に確認すべき3つのポイント
DX関連の補助金の目的は受給することではなく、それを活用してDXを推進していくことです。そのために、押さえるべき3つのポイントがあります。
5.1. 補助金が通らなかった場合も考えた事業計画になっているか
たとえ補助金の審査が通らなかったとしても、DXを推進できるような事業計画にしておくことが大切です。
補助金ありきの設備購入を計画していると、補助金が出なかったときに経営に深刻な影響を与えかねません。
補助金が出る予定があるとしても、事業実施の際の経費は全額、事業者側の先払いとなります。補助金申請の段階で資金が十分確保できているかも審査対象となるため、事業計画等で資金が不足していると審査に影響します。必要な資金を正確に見積もり、資金を確実に確保できる目途をつけておくべきです。
5.2. 申請マニュアルを抜かりなく確認できているか
補助金の申請では、申請手続きに関する詳細が記された「公募要領」が公表されます。
公募要領のなかでは申請時に守るべき注意点、応募手順などが記載されていますので、事前にしっかり目を通し、内容を理解しておく必要があります。もし申請期限や重要な条件を見落としてしまった場合、準備したことが無駄になってしまう可能性があります。
5.3. DXレポート等を熟読できているか
DX関連事業で補助金を申し込む場合、経済産業省が発行している「DXレポート」を熟読しておく必要があります。日本企業が国内外のデジタル競争に勝ち抜いていくために必要なDX実現に向けた対策が細大漏らさず記載されています。
補助金が受給できたとしても、DXへの取り組み、事業実施プロセスが根本的に間違っていることが発覚した場合、DX事業に大きな影響を及ぼす恐れがあります。それを防ぐために、DXレポートを熟読し十分に理解しておく必要があるといえます。
6. DXを目的とした補助金を申請する一連の流れ
DXを目的とした補助金申請の一連の流れについて解説します。
申請にはそれぞれのステップに合わせた申請方法、手順があり、流れに沿って確実に進めていくことで、補助金受給に向けて大きく前進します。
6.1. 自社のDXへの取り組みに合った補助金を探す
まずは自社のDXへの取り組みに合った補助金を探します。
受付期間が短い補助金も多く、気づいたときにはもう終わっていたというケースも多く見受けられます。とはいえ一体どこで探せばいいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。
中小企業庁の「ミラサポPlus」では、支援制度や支援者、支援機関の検索ができるほか、実際の活用事例等が紹介されています。
6.2. 必要書類を作成して応募する
自社のDXへの取り組みに合った補助金を見つけたら、条件に合わせて書類を準備します。
申込期間が短いわりに申請のために用意すべき書類の準備は時間がかかりますので、余裕を持って準備に取り掛かるようにしてください。
6.3. 補助金を受給するための「交付手続き」を行う
補助金の申請後、審査によって補助金を受けられることが決定した場合は、事務局から通知が届きます。
通知が届いたら、指示された窓口に向かい、交付手続きを行います。
6.4. 計画したDX推進事業を開始する
補助金の交付決定後、計画したDXを進めます。
実施している途中で計画変更をせざるを得なくなった場合は、別の手続きが必要です。計画したDXを行っている最中は経費、経営状況の経過報告義務があるなど、詳細な報告書を作成しなければなりません。経費の領収書や関連する書類など、必要なものは保管しておかなけれがなりません。
6.5. 事業実績の報告をし補助金を受給する
DXを実施後、実績を報告し、補助金受給の手続きを行います。実績報告の内容で補助金額が決定、交付という流れです。
なお、補助金を受給した場合は、事業終了後5年間、関係書類を保管しておく義務があります。
7. 補助金申請代行サービスを利用するという手段もある
補助金の申請は短期間で準備が必要であるため、非常に大変です。
特に中小企業・小規模事業者は、従業員も少なく、通常業務と平行して作業を行うのは困難です。そこで「補助金申請代行サービス」の利用を検討するという手段があります。
補助金申請代行サービスはプロの力を借りられるので、申請作業に時間をとられることなく、通常の業務に集中できます。
8. 2023年のDX補助金の予定は?「令和5年度概算要求」より予測
2023年度の中小企業対策費の予算は1,343億円と、2022年度より200億円以上多く要求されています。DX関連の補助額はどれくらいになるかまだわかりませんが、補助率は2分の1〜4分の3が見込まれています。
「IT導入補助金」についていえば、「通常枠」では、クラウド利用料の補助対象期間が最大で2年まで延長されます。また、同枠の「A類型」では下限が5万円に引き下げられたことで、より安いツール等も補助対象となります。「デジタル化基盤導入枠」の「デジタル化基盤導入類型」では会計受発注用のソフトウェア等の下限額がなくなり、より安いツール等も補助対象となります。
締め切りがすでに決まっている補助金もありますので、中小企業庁のホームページ等を参照し、早めに準備する必要があります。
まとめ
DXは大企業だけのものでなく、中小企業も小規模事業者も検討、導入していかなければなりません。補助金は、限られた資金でもDX推進の助けとなるものです。
補助金の情報は中小企業庁の「ミラサポPlus」で確認できます。支援制度や支援者、支援機関の検索ができるほか、実際の活用事例等が紹介されています。
申請の準備は必要な書類の準備など、大変な作業ではありますが、前向きにDXを進めていけるよう、ぜひ検討してください。