(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

 

大企業・製造業・業況判断DI+6程度と、9月調査+8から低下を予測

 

同・非製造業・業況判断DI+20程度と9月調査+14から上昇、コロナ禍前水準に

 

 

●12月調査日銀短観では、自動車の生産数量が回復し販売が戻るというプラス要因が出てきたものの、エネルギー価格など原材料価格の高騰や、海外需要の減少等で生産用機械工業や電子部品・デバイス工業などの減産がみられたことなどのマイナス要因も大きい。このため、大企業・製造業の業況判断DIは+6程度と9月調査の+8から2ポイント程度悪化すると予測した。

 

●また、大企業・非製造業の業況判断DIは+20程度と、こちらは9月調査の+14から6ポイント程度改善し、コロナ禍前の19年12月調査の+20以来の水準になるとみた。新型コロナ感染の第8波が懸念されるものの行動制限はあまり実施されていない状況であり、全国旅行支援やインバウンドのプラスの影響が表われるとみられる。

 

●この予測は、日銀短観DIと連動性が高いことが知られているQUICK短観(12月調査)やロイター短観(12月調査)などを参考にした。

 

●12月5日に発表されたQUICK短観12月調査の調査期間は11月18日から11月30日である。製造業の業況判断DIは9月調査の+19から8ポイント低下し+11となった。また、非製造業の業況判断DIは9月調査の+21から7ポイント改善の+28となった。

 

 

●12月7日に発表されたロイター短観12月調査の調査期間は11月22日から12月2日である。12月調査400社ベースの製造業の業況判断DIは9月調査の+10から2ポイント低下し+8になった。一方、12月調査200社ベースの製造業の業況判断DIは9月調査の+14から4ポイント上昇し+18になった。

 

 

●ロイター短観12月調査400社ベースの非製造業の業況判断DIは9月調査の+11から14ポイント上昇し+25になった。また、12月調査200社ベースの非製造業の業況判断DIは9月調査の+9から16ポイント上昇し+25になった。

 

●なお、12月調査の大企業・製造業の業況判断DIが予測通り+6程度なら9月調査の「先行き見通し」+9を3ポイント下回る水準になる。景況感が事前予想より下振れたことになる。また大企業・非製造業が予測通り+20程度なら、事前予想の9月調査の「先行き見通し」+11から9ポイント程度と事前の予想よりかなり大きく景況感が上振れたということになろう。

 

●QUICK短観12月調査の製造業の3月までの「先行き見通し」は+6で12月実績の+11より5ポイント低下の見込み、一方、非製造業の3月までの「先行き見通し」は+27で12月実績の+28より1ポイント低下の予想である。

 

●ロイター短観12月調査の3月までの「先行き見通し」は、製造業・400社ベースで+8と12月実績の+8から横這いの見込み、製造業・200社ベースで+20と12月実績の+18からこちらは2ポイント上昇する見込みである。一方、非製造業・400社ベースの3月までの「先行き見通し」は+20と12月実績の+25から5ポイント低下する見込み、非製造業・200社ベースで+16と12月実績の+25から9ポイント低下になる見込みである。

 

●日銀短観の大企業・業況判断DIの3月までの「先行き見通し」は、QUICK短観やロイター短観などを参考にして、製造業は12月実績比横這いの+6程度、非製造業は12月実績比2ポイント低下の+18程度と予測した。引き続き、新たな変異タイプの新型コロナウイルス感染症の拡大の可能性、部材供給不足の影響、物価上昇の影響などの不透明要素が多い。先行きの不透明さが景況感の足踏み材料になりそうだ。

 

●12月調査日銀短観の中小企業の業況判断DIは製造業が▲6程度と9月調査の▲4から2ポイント程度悪化すると予測した。非製造業は9月調査の+2から5ポイント程度改善し+7程度になるとみた。この予測値は、景気ウォッチャー調査の企業動向関連の現状水準判断DIなどを参考にして予測した。

 

●参考データの景気ウォッチャー調査の企業動向関連の現状水準判断DI・季節調整値の最近の推移は製造業が22年3月調査42.0、4月調査42.9、5月調査46.6、6月調査45.3、7月調査44.1、8月調査45.3、9月調査44.5、10月調査45.3と推移している。

 

●一方、非製造業は22年3月調査40.3、4月調査40.8、5月調査46.7、6月調査45.9、7月調査44.8、8月調査45.1、9月調査44.6、10月調査44.3と推移している。なお、日銀短観は水準の調査なので、景気ウォッチャー調査の方向性の現状判断DIではなく、参考データの現状水準判断DIの方を重視した。

 

●日銀短観の中小企業・製造業の業況判断DIが▲6程度と予測通りなら、9月調査の「先行き見通し」の▲5より1ポイント低い水準で、事前の見通しより僅かに悪かったことになろう。また中小企業・非製造業が+7程度と予測通りなら、9月調査の「先行き見通し」の▲3より10ポイント高い水準で、事前の見通しよりはかなり良かったことを意味しよう。

 

●日銀短観の中小企業・業況判断DIの3月までの「先行き見通し」は、製造業で12月実績比1ポイント悪化の▲7程度、一方、非製造業は12月実績比5ポイント悪化の+2程度と予測した。中小企業・非製造業では先行きをいつも慎重にみる傾向があるというクセを考慮した。

 

●日銀短観の設備投資計画の予測には、景気ウォッチャー調査から作成する設備投資DIや、過去の修正パターンなどを参考にしている。他の設備投資計画調査である、法人企業景気予測調査10~12月期調査は公表日が12月12日なので、この12月短観の予測では参考にできない。

 

●景気ウォッチャー調査の設備投資関連・現状判断DIは、22年3月43.8(回答した景気ウォッチャー・8人)、4月37.5(同4人)、5月37.5(同6人)、6月28.6(同7人)、7月42.9(同7人)、8月46.9(同8人)、9月43.8(同4人)、10月51.1(同7人)と推移している。10月では「新規設備投資案件の引き合いが徐々に増えてきている。(東北:一般機械器具製造業〔経営者〕)」というコメントがあった。

 

●一方、設備投資関連・先行き判断DIは22年3月37.5(回答した景気ウォッチャー・6人)、4月25.0(同2人)、5月43.8(同8人)、6月50.0(同6人)、7月50.0(同3人)、8月60.7(同7人)、9月55.6(同9人)、10月31.8(同11人)と推移している。10月は5ヵ月ぶりの50.0割れとなった。10月では「円安による物価高は固定費を圧迫し、著しく収益性を悪化に導いている。日本の金融政策に変更がない限りはこの動向は続くだろうし、現下の不透明要素からは足元の物価上昇を一時的な動きと評価することはできず、社内の収支構造改革にまで踏み込む必要性が指摘されている。半導体などの資材不足の影響は残っており、設備投資の一部は年度内の施工が見通せない状況になっている。(南関東:ゴルフ場〔経理担当〕)」というコメントがあった。

 

●22年度の大企業・全産業の設備投資は前年度比+21.1%程度と予測した。9月調査の同+21.5%から増加率が若干低下すると予測した。

 

●22年度の中小企業・全産業の設備投資計画は前年度比+4.0%程度と、9月調査の同+1.3%から上方修正されると予測した。中小企業の設備投資は例年3月調査が弱く、その後は1年後の3月調査まで調査の度に改善していく傾向がある。今年度の12月調査は9月調査より小幅改善するとみた。

 

 

(2022年12月7日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年12月調査 日銀短観 予測』を参照)。

 

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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