2022年度第3四半期・日本のM&A件数は「前年同期比で最も減少」…加速するインフレ下で起きていること (※写真はイメージです/PIXTA)

世界各国ではロシアのウクライナ侵攻の影響によりインフレが加速しており、日本もその影響を受けています。そのような中、日本のM&A取引高は欧米各国と比較すると好調ではあるものの、パンデミック発生以来の低水準を記録しました。現状を見ていきます。※本記事は、Datasite日本責任者・清水洋一郎氏の書き下ろしです。

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「高インフレ」との戦いに忙殺されるAPAC

国際通貨基金(IMF)は、先進国でおおよそ6%、新興国で9%近くのインフレ率を予測しており、途上国は高インフレに挑戦することになります。これは、ウクライナの戦争による世界的な商品価格の高騰を受けたものです。APAC内では、インド、東南アジアの一部、およびオーストラリアとニュージーランドにおいて、より顕著にインフレの傾向がでています。

 

ほとんどの中央銀行は、低成長にもかかわらず、物価を抑制するために金融引き締め施策を実施しています。ただ、日本と中国は例外です。中国人民銀行は、国内の債務負担を軽減するための緩和政策をとっている一方、日本銀行は大規模な金融緩和施策を続けています。日銀の黒田東彦総裁は、最近のコストプッシュ型インフレは一時的なものであるとの見方から、日銀は超低金利を維持しなければならないと繰り返し述べています。

 

日本のインフレ率は主要国の中で最も低く、8月の消費者物価指数の上昇はわずか約3%でした(米国は8%、EUは9%)。しかし、商品価格の高騰と急激な円安による輸入価格の高騰により、インフレはさらに加速しています。

日本のM&A件数の減少は、構造的な問題も根強く…

第3四半期の日本のM&A件数は、前年同期比で最も減少しています。これは、APACの他の地域が好況であったのに対し、日本国内では、昨年から続いていたM&A活動の減少が要因といえるでしょう。さらに、日本では、人口減少、長年のデフレ圧力と成長停滞など、構造的な問題が根強く残っています。

 

それでも、日本と中国がAPACにおけるM&A取引高でトップであることに変わりはありません。第3四半期のAPAC全体のディール件数は1,240件で、前年同期比25%減となりましたが、米国やEMEAと比較すると、依然として好調です。しかし、合計の取引額は54%減少の1,610億米ドルを記録し、このような低水準は、パンデミック発生以来、初めてのことです。

その他のAPAC地域でのディールメーキングは低水準に

その他のAPAC諸国をみていくと、2022年第3四半期、経済面で困難に直面し、全体のパフォーマンスとしてあまり芳しくない結果となりました。

 

オーストラリアとニュージーランドは、第3四半期に前年同期比で最もM&A額が減少しています。特に昨年は、この四半期がオーストラリアのディールにとって3倍も取引件数が多い期間であったため、大きな差がでる結果となりました。IMFの最新の予測では、オーストラリアのインフレ率は年間およそ7%で、2023年には約5%に緩和されるとされています。

 

2022年下半期、各金融機関が成長見通しを引き下げた中でも、インドは急成長を遂げました。IMFは今年の同国GDPの拡大予想を、従来予想のおよそ7%から、顕著な7.5に修正しました。インドのM&A市場は好調で、取引額は過去2年間ほぼ一定である一方で、取引件数は昨年の急増と比較し減少傾向にあるものの、依然としてパンデミック前の水準を上回っています。

 

第3四半期の韓国は、主要先進国の中で特に際立っていました。IMFは2022年の成長率見通しをおよそ3%ポイント増と前向きに修正し、中央銀行の2022年のインフレ見通しは、ちょうど5%です。これは、25年前にインフレターゲット政策を導入して以来、最も高い予測値であり、輸出の引き締めとともに、経済活動に水を差すことになるかもしれません。取引活動は比較的安定しており、第3四半期の取引件数は127件で、2021年の同時期と比較し、わずか16%の減少です。これはまだ、パンデミック前のレベルを上回っています。

 

東南アジア諸国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)においては、2023年の見通しを下方修正しています。これは、中国、ヨーロッパ、米国との貿易の低迷と、食品・エネルギー価格の上昇による消費者の購買力低下が原因です。M&Aは、APACの他の地域よりも大幅に減速しています。ディール総額はパンデミック前の水準を下回り67%減の144億米ドルで、ディール件数も48%と、激減しました。

 

中国では、本土内での高レバレッジの不動産セクターで広範な債務不履行が発生し、地方政府の債券のデフォルトリスクという課題があります。COVID-19のロックダウンが続いているため、海外投資家はAPAC地域の主要市場へのエクスポージャーを抑制しています。さらに、第3四半期に米国の入札者が中国で行った取引は、総額が19億米ドル未満の6件のみでした。M&Aが中国国内で行われるようになったため、現地入札者による投資に大きく偏っています。

 

APAC、EMEA、アメリカ大陸のローカルM&A市場について調査したDatasiteのDeal Driversレポートでは、市場動向、トップディールと入札者、将来の課題、セクター固有の情報など、世界各地でディールメーキングがどのように行われているかを詳しく知ることができます。

 

Sources:

1. Consumer inflation in Japan capital hits 33-year high- Reuters.com

2. Japan has the lowest inflation of all major economies but will continue feeling pressure. Here's why. World economic forum .com

3. Finance minister vows all-out efforts to fight inflation. Japan today .com

 

 

清水 洋一郎
Datasite 日本責任者

 

 

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    Datasite  日本責任者

    米国で金融、IT、自動車、製造業のマーケティング担当を経て、国内大手IT会社やSIerで金融ITソリューションなどの営業・マネジメントに20年以上従事。

    カントリーリスク管理やマクロ経済学の知識を生かし、様々な国内外資系企業のコンサルティングを経験。

    現在、Datasite日本法人の代表として、日本市場における事業開発や事業拡大を統括している。

    Datasite Japan: https://www.datasite.com/jp/ja.html

    著者紹介

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