(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化の進展により、アジア太平洋諸国において、ヘルスケアを支える「医薬・医療・バイオテクノロジー分野」へのM&Aが増加しています。2022年前半の動きを見ていきます。※本記事は、Datasite日本責任者・清水洋一郎氏の書き下ろしです。

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    日韓の高齢化、APACのヘルスケアビジネスの転機に?

    日本や韓国がテクノロジー大国であることはよく知られていますが、医薬・医療・バイオテクノロジー(PMB)分野での実力はあまり注目されていないようです。両国で高齢化が進むにつれ、APACの他の地域にもヘルスケアビジネスが変化・進化し、影響を及ぼす可能性があります。

     

    2021年には65歳以上の高齢者が人口のほぼ5分の1(17%)を占め、2050年にはその数はほぼ半数(44%)になると予想されています。

     

    日本の統計はさらに顕著で、2020年には8万人が100歳以上となり、65歳以上の人口は29.0%に達すると同時に、人口は減少しています。

    「平均寿命の伸長」と「医療費の増加」

    この傾向は、平均寿命の長さ、少子化(女性一人当たりの平均出生数1.4人)、移民の少なさが要因となっています。このような背景から、これらの国々でPMBに関心が集まるのは当然のことでしょう。人口の高齢化を支えるために多くの医療費が必要となり、民間企業では革新的で新しい治療法や療法が開発され、高いコストがかかると思われます。

     

    自国の高齢者と世界各国の高齢者の世話をする間に、日本と韓国のPMBプレイヤーの評判は今後ますます高まることでしょう。

    PMBのM&Aは増加傾向に

    日本や韓国への移民は少ないものの、海外のバイヤーは日本や韓国のPMB分野への参入を強く望んでいます。例えば、2022年1月、フランスのヘルスケア大手サノフィは、ABLバイオ(韓国)からパーキンソン病などの神経変性疾患の治療薬の開発権を10億米ドル超の取引で取得しました。また、今年初めには、サムスン・バイオロジクスは、米国のパートナー企業であるバイオジェンのバイオシミラー合弁会社である、のサムスン・バイオエピスの株式の49.9%を23億米ドルで取得しました。

     

    どちらの取引も韓国でおこなわれましたが、韓国は政府による製薬会社の研究開発支援が盛んといえるでしょう。

     

    日本と韓国は、今年の上半期にPMB分野での買収の取引先においてトップバッターでもありました。日本は22件の入札をおこない、APAC諸国の中で第3位となり、韓国は35億米ドル相当の取引を成立させ、PMB分野における取引金額でAPAC内第3位となりました。

    十分な投資機会が見込めるグローバル・ヘルスケア分野

    欧米諸国においても、このような人口に関する問題は全く関係がないわけではありません。世界銀行によると、EUの出生率は2000年以降1.5前後で推移しており、米国では2007年の2.1から2020年には1.6まで低下しました。欧米が日本ほど100歳以上の人を生み出さないとしても、高齢化は不可避であるといえます。

     

    APACでは、医薬品やバイオテクノロジーのイノベーションはますます発展していくことでしょう。また、2022年には50億人近い人口とそれに伴うヘルスケアの必要性を考えると、このディフェンシブなセクターには十分な投資機会があるといえます。

     

    DatasiteのDeal Driversレポートでは、APAC、EMEA、南北アメリカの現地市場の動きを調査し、M&Aトレンド、トップディールと入札者、今後の課題、そしてセクター固有の情報など、世界各地でM&Aがどのようにおこなわれているかを詳しく解説しています。

     

     

    清水 洋一郎
    Datasite 日本責任者

     

     

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