近年増えた「親なき後問題」
ここ最近の相談で多いのが、「親なき後問題」に関するものです。これは、障がいのある子をもつ親が自分の亡くなった後の子どもに関わる財産管理や生活支援についての漠然とした不安や悩みのことです。
これは、親が亡くなる場合だけでなく、親の高齢化により、障がいのある子の世話ができなくなったときにも、顕在化する問題です。内閣府が発行している「令和二年度障害者白書」によると、身体障害、知的障害、精神障害の三区分について、各区分における障害者数の概数は、身体障害者(身体障害児含む)436万人、知的障害者(知的障害児を含む)109万4千人、精神障害者419万3千人となっています。
これを人口千人当たりの人数でみると、身体障がい者は34人、知的障がい者は9人、精神障がい者は33人となります。複数の障がいを併せもつ人もいるため、単純に合計はできないものの、国民のおよそ7.6%が何らかの障がいを抱えていることになります。
このうち、「親なき後問題」を抱えるのは、主に知的障がい者と精神障がい者が多く、国民のおよそ4.2%となります。このほか、ひきこもりの子どもをもつ家族のいることを考えると、「親なき後問題」を抱えている方はさらに増えるでしょう。
【相談事例】知的障がいをもつ子の「親なき後問題」
この問題について、僕の事務所にあった相談を例に考えていきたいと思います。依頼者の母親(70歳)の悩みは、知的障がいをもつ長女(40歳)のことでした。長女は、グループホームで生活しており、財産管理はとてもできない状態でした。もう一人の子どもである長男(45歳)は、結婚をして子どもがおり独立した生活をしていますが、裕福ではなく長女の世話をする余裕はないとのことです。
母親は、成年後見制度のことは当然ご存知でしたが、自分がしっかりしている間は、成年後見人をつけずに世話をしたいとのことでした。理由としては、専門職後見人(弁護士や司法書士など)がついた場合に、長女が亡くなるまで報酬を払い続けなければならないことに抵抗があるということでした。
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