「ちいかわ」は連載漫画のキャラクター
■共感せずにはいられない、キャラクターなのに人生がある「ちいかわ」のストーリー
「ちいかわ」とは、イラストレーターのナガノさんがTwitter上に描き出した、7コマ程度の連載漫画のキャラクターです。
「ちいかわ」は「なんか小さくてかわいいやつ」の略だそうで、ナガノさんによれば「こういう風に自分も暮らしていきたい」というコンセプトのもと、2017年ごろから不定期に発表されています。
ナガノさんの作品は常時複数のキャラクターによる異なる物語をランダムに発表するパターンで、「なんとなく可愛い」「なんとなくクセがある」世界観が人気を集め、LINEのスタンプとしても様々な絵柄がもてはやされています。
特に「ちいかわ」は大好評で、ついに2020年より単独のTwitterアカウントで他のキャラクターよりも頻繁に発表されるようになりました。そして約1年後には講談社から単行本化されるほどブレイクします。
それから先はフジテレビの占いコーナーのキャラクターに採用され、さらに週に一度アニメーションでも放映されるなど、人気はうなぎ上りとなります。
関連グッズが発売されれば即完売、期間限定ショップができると長蛇の列です。
ところが、実際に「ちいかわ」を見ると、昔で言えば“ウマ下手”系の手描き風の作品で、既存の商業ベースに乗って誕生したキャラクターに比べると、「何がそんなに可愛いの?」と言う人も少なくありません。
しかし! 最初にご紹介したように、「ちいかわ」は単なるキャラクターではなく、「漫画」なので元々ストーリーがあるのです。
しかも、漫画の中で「ちいかわ」とその仲間は労働し、労働賃金を増やすために資格試験を受けたり、友だちと助け合ったり、励まし合ったりもします。だまされたり意地悪されることもあります。漫画の世界なので現実にはない不思議なことも起きます。
でも、「ちいかわ」の物語には筋が通っていて、「悪いことをしたりずるく立ち回るとバチが当たる」ストーリーや、善と悪の間で苦しむ姿も描かれ、実社会での人生に照らし合わせたくなるシーンが満載なのです。
テレビでアニメ化されるまではTwitterに触れられる層だけで楽しまれていたちいかわは、いまや性別年齢問わず大人気となったのです。
ちいかわを通して夫婦が仕事の疲れや思いを語りあうシーンも増えているそうです。
単行本化にアニメ化、数々のグッズ販売が続き、さすがに「ちいかわ」はそのうち飽きられてしまうのではという声もないわけではありません。
ただ、作者のナガノさんは常時何種類ものキャラクターを生み出し、それらを通してメッセージを発信しつづけている方だけに、万が一ちいかわが乱発されすぎて飽きられてしまう日が来たとしても、心残りはないのではないかと思われます。
そして、また新しいキャラクターが新しいストーリーとともに登場するのではないでしょうか。
「ちいかわ」は、ほぼ個人が趣味のように描き始めてSNSを媒介に話題を集めたキャラクターなので、CMをはじめとする広告は一切なく、ここまで人気を集めました。
逆に「ちいかわ」の人気を目当てにコラボレーションした食料品や衣料品などが大ブレイクし、「ちいかわ」は袋麵や人気オンラインゲームのCMにも採用され、認知度を高めています。
江里 洋平
MOPS代表取締役