(※写真はイメージです/PIXTA)

急速に進んだ円安が物価を押し上げ、消費が伸び悩む。今年はこうした円安のデメリットが語られる場面が多く、メディアも「悪い円安」と盛んに報じていました。しかしストラテジストの菅下清廣氏は、むしろ「いい円安」といいます。なぜなのでしょうか、みていきます。

円安によって物価が上がったといわれているが…

株式相場で資産インフレが始まる、このような予想が成り立つ理由のひとつに「円安」があります。いまドル円の為替は、1ドル130円程度(2022年6月時点)ですが、これくらいの円安水準だと日本にとってはたいへんなメリットがあります。

 

いまこの円安について輸入物価が上がって庶民の財布を直撃する「悪い円安」とマスコミはさかんに書いていますが、全然悪くない。よい円安です。なぜかというと、円安になると輸入インフレと言って、輸入した価格が上がりますが、いまの価格の値上がりの主な理由はエネルギー価格の上昇、石油価格の上昇で上がっているからです。

 

実は、円安で輸入インフレになっているわけではないのです。第一生命経済研究所の首席エコノミストの永濱利廣さんの分析によれば、円安が物価に与える影響は25%ぐらいしかありません。残りの75%は石油価格なのです。物価高は石油が下がれば収まってくる。だから、むしろ円安は日本経済にプラスだと永濱さんは指摘しています。

 

なぜ円安がプラスになるのか。円安になるともちろん輸出産業は潤いますが、その結果として設備投資の拡大につながるからです。設備投資が拡大すると、景気がものすごくよくなる。設備投資というのは景気の4番バッターと言われていて、個人消費に次ぐ景気のプラス要因です。円安は設備投資を拡大させる。なぜなら製造業がどんどんモノをつくり出して輸出するからです。これは設備投資の拡大と雇用の拡大の好循環につながります。

 

ちなみに、2020年~2021年にかけてが日本経済の設備投資の底でした。ですから、2022年以降は設備投資が拡大する循環に入ってきている。

 

むしろ円安で物価が上がることで、長い間抜けられなかったデフレを脱却できるようになることのほうが大きいのです。それでなくても、日銀は金融政策の物価目標を2%にしてきましたが、異次元の金融緩和を続けていたのに、まったくできなかった。ところがいまは、黒田東彦日銀総裁が昼寝をしていても、円安でインフレが起きますから自動的にデフレ脱却ができてしまう。黒田日銀総裁の任期は来年の3月までですが、そのころには2%のインフレ目標を軽く突破して、黒田総裁は花道を飾って退任していくでしょう。

 

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本記事は、菅下清氏の著書『史上最強の資産インフレ相場で大化けする日本株を買え! 大円安・インフレで1000兆円が動き出す』(徳間書店)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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