(※画像はイメージです/PIXTA)

自動車ユーザーが強制加入する「自賠責保険」の保険料が、2023年から引き上げが決まっています。交通事故が減少傾向にあるにもかかわらずです。その背景には、保険料の運用益約6,000億円が「一般財源」に貸し出されたまま未返済という理不尽な事情があります。あわせて、自賠責保険自体の存在意義が問われています。本記事では、自賠責保険の補償内容と存在意義について検証します。

全然足りない…自賠責保険の補償内容

まず、自賠責保険がどのようなものか、簡単におさらいします。

 

自賠責保険は、交通事故のうち「人身事故」で相手方の生命・身体を害した場合に備え、強制的に加入することになっている自動車保険です。

 

交通事故の相手方を死傷した場合に、支払限度額まで損害賠償金等がカバーされます。支払限度額は、被害者1名につき【図表】の通り、傷害の場合は120万円、後遺障害が残った場合は4,000万円、死亡の場合は3,000万円と定められています。

 

【図表】自賠責保険の補償内容

 

しかし、これでは足りないのは明らかです。特に深刻なのが、後遺障害、死亡の場合の「逸失利益」です。これは、働けなくなった、あるいは亡くなったことによって、将来にわたって本来得られたはずの利益を意味します。この逸失利益を得られなくなる損害を「消極損害」ともいいます。

 

交通事故における逸失利益の計算方法は実務上決まっており、以下の計算式によって算出します。なお、法定利率は年3%として計算します。

 

収入金額(基礎収入)×労働能力喪失率×ライプニッツ係数

 

この計算式によれば、収入金額と、労働力の喪失の程度と、働けなくなった残りの年数によって賠償額が決まります。被害者の年収が高ければその分、逸失利益が大きくなります。また、被害者が若ければ残りの働けるはずだった期間は長くなり、それも逸失利益が大きくなる要因となります。

 

事実上、「任意保険」は必須

多くの場合、自賠責保険の上限金額では賄いきれません。しかも、自賠責保険は、自分自身が死傷した場合はもちろん、同乗者が死傷した場合や物損事故はいっさいカバーしていません。したがって、自賠責保険だけでは足りないことを前提として、「任意保険」に入るのは事実上必須となっています。

 

最低限、相手方に対する「対人賠償」「対物賠償」は無制限で加入しておくべきといえます。また、自身および同乗者の死傷の結果は自賠責保険ではまったく補償されていないので、カバーしたいのであれば、「人身傷害」「搭乗者傷害」も必要です。

 

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