会社員世帯夫婦の年金給額の平均「月額約22万円」
読者の皆さんもよくご存じの通り、日本の年金制度は、国民が一律に受け取る「老齢基礎年金」と、会社員や公務員が受け取る「老齢厚生年金」の2階建て構造です。
一般的には「老齢基礎年金」の平均受給額が月額5万円程度、「老齢厚生年金」の平均受給額が月額15万円程度といわれています。
会社員世帯の夫婦の場合の月の受給額の平均値は22万円程度、夫婦とも老齢厚生年金を受給する家庭の場合は、月およそ30万円程度が目安です。一方、自営業等で2人とも「老齢基礎年金」のみの受給なら、月10万円程度が目安です。ご自身の年金額の詳細については、ぜひ「ねんきん定期便」を確認してみましょう。
さて、厚生労働省『令和2年 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、令和2年の厚生年金保険(第1号)受給者は3,581万人。受給者の平均年金額は「14万4,366円」で、従来より目安とされてきた「15万円」からやや目減りしています。
65歳から5歳刻みにした老齢年金平均月額は、下記の一覧を見てください。
老齢年金平均月額(65歳から5歳刻み)
65歳~69歳:143,069円
70歳~74歳:145,705円
75歳~79歳:150,569円
80歳~84歳:159,529円
85歳~89歳:162,705円
90歳以上 :161,506円
厚生労働省の『令和2年 年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)』によると、平均支出額は月額25.5万円。平均年金受給額の15万円を受給していても、毎月10.5万円が不足する計算です。この不足分を補うには、若いときから目標を定めて、貯蓄や資産運用に励むしかありません。
政府も資産形成を促す仕組みづくりとして「つみたてNISA」「iDeCo」といった策を打ち出していますし、70歳までの就業機会確保を視野に入れた「高年齢者雇用安定法」の改正にも着手しています。
万全の計画で「完全リタイア」のはずが…
長く働けることは、老後生活には大きなプラスとなりますが、「この年齢でリタイア」という目標を定め、そこを目指して全力疾走してきた人にとっては、定年退職というゴールが動かされることに納得できない思いではないでしょうか。
定年後の過ごし方について、横浜市在住の元サラリーマンの男性に聞きました。
鈴木さん(仮名)は68歳。60歳で電子部品メーカーを定年退職し、その後は関連会社に転籍して65歳まで勤務しました。
――年金の状況を教えてください。
「勤務先の給料が比較的良かったので、年金は一般的な平均額より少し高めです」
――老後はどのような計画をお持ちでしたか?
「私は結婚が早く、50代のうちに2人の子どもたちは独立しました。ですから、老後資金を貯める余裕があったんです。貯金もでき、退職金もそれなりに受け取ったので、65歳で完全にリタイアするつもりでいましたし、実際しました。なんなら60歳でもリタイアできるぐらいに思っていました」
――リタイア後の生活状況を教えてください。
「退職後、妻は貯金と退職金の金額を見て、自宅をリフォームしたいといい出し、私も賛成しました。2階建ての木造住宅の全面的なリフォームで、屋根・外壁も含めた予算で700万円ぐらいを考えていましたが、あれこれ仕様変更したら1000万円ぐらいに膨らみまして。でも、そのときは全然大丈夫だと考えていたんです」
――その後はいかがでしたか?
「ところがですよ。キレイになった家で優雅な生活を送るつもりが、コロナが蔓延して。妻と二人顔を突き合わせて不安を募らせているうち、飲食関係の仕事をしていた二男から、失業したといわれまして…。〈ギリギリまで頑張ったが、ダメだった〉と泣きつかれ、いまは二男一家総勢4人、わが家に身を寄せている状態です」
――その状況から、いまもお変わりないですか?
「二男は再就職しましたが、給料が下がってしまったため、節約のためにまだ同居しています。私の妻も二男の妻も専業主婦なので、いまは家に女性が2人いる状態で、なかなかの緊張感です。狭い家だし、そもそも二世帯を想定したリフォームではないし、私も家に居場所がない状態です。だから、日中は後輩が経営する小さな会社でアルバイトをしています。いまはまだ資金面でも持ちこたえていますが、今後がどうなるかは息子の状況次第ですよ。こっちの計画も大きく狂って、正直ヒヤヒヤものです」
――想定外の出来事でしたね。
「大事な息子だし、孫たちもかわいい。でも、リフォームは少し待てばよかったです。もしあの金を持っていれば、少しは気持ちにも余裕が持てたのに…」
鈴木さんはうなだれました。
コロナのような不測の事態の発生により、ライフプランの変更を余儀なくされた方も多かったのではないでしょうか。鈴木さんの場合は、従来のマネープランから大幅な変更を余儀なくされましたが、こればかりはやむを得なかったといえるでしょう。「今後、日々の節約に努め、現状を乗り切るしかない」と鈴木さんは語りましたが、実際のところ、ほかに方法はないかもしれません。
幻冬舎ゴールドオンライン編集部
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