(画像はイメージです/PIXTA)

老後資金の柱のひとつとなる退職金。残念ながら、退職金にも課税されますが、最大限の優遇措置が設けられています。最も有利に受け取るには、どのような方法があるのでしょうか。※本記事は『いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2022-2023年最新版』(インプレス)から抜粋・再編集したものです。

「退職所得控除」で税金の支払いがお得に

残念ながら老後資金となる退職金にも税金はかかります。しかし、社会人人生の”ごほうび”とも言えるこのお金には、税金面でも最大限の優遇制度が適用されます。

 

退職金は、会社によっては一時金で受け取るか、年金で受け取るか選択できる場合があります。その際、税制面で有利なのは圧倒的に一時金で受け取る方法です

 

退職金を一時金で受け取ると「退職所得控除」が適用されます。例えば勤続30年であれば退職金から1500万円分が控除額となり、この範囲であれば税金がゼロになります。年収1500万円の給与所得者の場合、所得税と住民税の概算合計で300万円近くが税金としてかかるため、大変な差です。

 

退職一時金にかかる所得税額は図表1の計算方法で確認できます。退職金を一時金で受け取る場合、まず退職所得控除額を差し引きます。この金額は、勤続年数が20年以下の場合「40万円×勤続年数」、勤続年数が20年超の場合「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」となります。

 

課税対象となるのは、控除額を差し引いた金額の2分の1です。この金額を「所得税の税額速算表」に当てはめて計算すると、払うべき税金がわかります。

 

退職金は、老後生活の原資となるため「退職所得控除」というお得な優遇制度が設けられているのです。人事・総務部などにあらかじめ退職金の見込額を聞き、一時金として退職金を受け取ったときにかかる所得税などを把握しておくと良いでしょう。

退職一時金にかかる所得税額の計算方法

退職一時金にかかる所得税額の計算方法については、下記の図表1のとおりです。

 

[図表1]退職一時金にかかる所得税額の計算方法

 

計算例◆勤続年数29年3ヵ月(30年)で2000万円を受け取る場合

計算例については、下記の図表2の通りです。

 

※プラスで復興特別所得税3,202円、住民税(税率一律10%)25万円がかかる
[図表2]計算例◆勤続年数29年3ヵ月(30年)で2000万円を受け取る場合 ※プラスで復興特別所得税3,202円、住民税(税率一律10%)25万円がかかる

退職金を一時金と年金で受け取る場合の税金の違い

退職金を年金で受け取る場合は、公的年金等控除の対象となり、65歳未満は公的年金と企業年金を合わせて一般的に最低年間60万円の控除を受けられます。

 

◆一時金で受け取る場合 →  退職所得控除 

 

・勤続20年超の場合、800万円+70万円×(勤続年数ー20年)の控除あり

・控除後の金額の2分の1が退職所得の金額となる

・他の所得とは合算されない分離課税

 

◆年金で受け取る場合 →  公的年金等控除 

 

・65歳未満は公的年金と企業年金を合わせて一般的に最低年間60万円

・65歳以上は最低年間110万円の控除あり

 

 

福地 健
ファイナンシャル・プランナー
社会保険労務士事務所 あおぞらコンサルティング顧問
(株)近代セールス社前代表取締役社長
CFP®(日本FP協会元理事)

いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2022-2023年最新版

いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2022-2023年最新版

監修:福地 健

株式会社インプレス

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