(※画像はイメージです/PIXTA)

一時1ドル151円をつけた米ドル/円でしたが、足元は1ドル140円を挟んでもみ合っています。市場ではいまが「円安相場の転換点」である可能性も指摘されますが、米利上げが続くなかでドルが売られているのはなぜなのか、いったい誰が米ドルを売っているのでしょうか……マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が解説します。

「120日MA攻防」という米ドル下値の正念場

今週は木曜日から12月に入ります。1日はISM(米供給管理協会)製造業景気指数、そして2日には米11月雇用統計など、注目の景気指標発表が予定されています。

 

このなかで、とくにISM製造業景気指数は、好況と不況の境目とされる50を割り込むと予想されており、米金利低下、米ドル売りのきっかけになる可能性は要注意でしょう。

 

すでに述べてきたように、米ドル買いポジションを手仕舞うことに伴う米ドル売りはまだ続いていると見られることから、「米景気指標悪化」といった米ドル売り材料には過敏な反応となる可能性があり、その意味では米ドルは下値波乱含みといえそうです。

 

チャート的に見ても、米ドルは下値の正念場にありそうです。米ドル/円は2021年1月の102円から米ドルの上昇トレンドが展開してきましたが、そのなかでは基本的に120日MA(移動平均線)にサポートされてきました。

 

そんな120日MAが、足元では140円ちょうどなので、先週はまさに120日MAにサポートされてきた米ドル高・円安トレンドの転換を試す動きとなりました(図表5参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表5]米ドル/円と120日MA(2010年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

ここまで米ドル高・円安トレンドが展開するなかでは、米ドルが120日MA前後まで下落した動きは「ダマシ」であり、結果的には米ドル買いが奏功してきました。

 

一方で、足元で140円ちょうどの120日MAを大きく米ドルが下回るようなら、それはこれまで米ドル高・円安トレンドが続いたなかでは見られなかったことだけに、すでに米ドル高・円安トレンドは終わり、米ドル安・円高トレンドへ転換している可能性が高まることから、米ドル下落余地が広がる可能性があるでしょう。

 

個人的には、米利上げが続くなかでの米ドル安・円高には自ずと限界があると考えているため、120日MAの140円以下の米ドル安・円高は「ダマシ」に終わるのではないかと考えていますが、綱渡りの状況が続くことになりそうです。

 

以上を踏まえ、今週の米ドル/円の予想レンジは、10月米PPI(生産者物価指数)発表後に付けたこの間の米ドル安値を割れないとの考え方から、137.5~141.5円中心で想定したいと思います。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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