人生100年時代、再婚の増加で家族関係も複雑に…
人の寿命は長くなってきていることから、早くに配偶者を亡くした人にとって、その後の人生も長くなってきています。そこで、新たな配偶者を得る、即ち、再婚する方も増えていると思います。離婚が増えてきており、それに伴って再婚する方も増えています。
再婚をされると、血縁関係が複雑になり、相続関係は複雑になります。
再婚がなければ、両親のどちらが先に亡くなっても、最終的には、親の財産は子どもに相続されることとなります。
上記の例で、陽子さんが生きているのであれば、太一さんが先に亡くなっても、陽子さんが先に亡くなっても、最終的には、2人の子どもである太郎さんと花子さんに相続されることとなります。
しかし、太一さんが美香さんと再婚した場合、太一さんが先に亡くなると、美香さんに2分の1である2億円、太郎さんと花子さんが4分の1である1億円ずつを相続することとなり、その後、美香さんが亡くなった場合、太郎さんと花子さんは、美香さんの子どもではないため、美香さんが太一さんから相続した2億円は、鈴木家とは何の縁もゆかりもない田中家の勉さんに相続されてしまうのです。
美香さんが、先祖代々受け継いできた実家の土地を相続したら、なぜか、田中家の勉さんが相続することとなってしまいます。
美香さんが離婚して、息子の勉さんが前夫についていったとしても、勉さんは美香さんの子どもですから美香さんの遺産について相続権があります。
したがって、「美香さんは離婚して、勉さんは前夫についていったので、相続権はない」という選択肢①は誤りで、「太一さんが亡くなれば、配偶者である美香さんが太一さんの遺産の2分の1を相続し、美香さんが亡くなれば、美香さんの子どもである勉さんに、美香さんの遺産がすべて相続されることとなる」という選択肢②が正解となります。
そこで、鈴木家の財産を田中家の勉さんに相続させないようにするには、対策を考える必要があります。
鈴木家の財産が田中家に渡るのを阻止できるか?
まず、太郎さんと花子さんが美香さんの所にいった財産が相続できないのは、太郎さんと花子さんが美香さんの子どもでないからです。
そうだとすれば、太郎さんと花子さんが美香さんの子どもになってしまえば相続をすることができるのですから、養子になるという方法が考えられます。
したがって、「美香さんから太郎さんと花子さんが相続を受けるには、太郎さんと花子さんが美香さんの養子となる方法がある」という選択肢③も正解となります。
ただし、太郎さんと花子さんが美香さんの養子になったとしても、勉さんが美香さんの子どもであることに変わりはないことから、養子になっただけでは、太郎さんと花子さんと勉さんが、美香さんが相続した財産を3分の1ずつ相続することになってしまい、勉さんが太一さんの遺産の6分の1である6,666万6,666円を相続することとなります。
次に、養子にならなくても、財産を承継することができる方法があります。それは美香さんに太郎さんと花子さんに遺言を書いてもらうという方法です。
したがって、「美香さんから太郎さんと花子さんが財産を引き継ぐには、美香さんに遺言を書いてもらう方法がある」という選択肢④も正解です。
ただし、単に、美香さんに、太郎さんと花子さんが全財産を相続するという遺言を書いてもらっても、美香さんの子どもである勉さんには、遺留分が2分の1ありますので、美香さんが相続した太一さんの財産2億円のうち、2分の1である1億円も遺留分として田中家の勉さんが取得することとなってしまいます。
勉さんの遺留分を減らすには、どうしたらよいでしょうか。
これは、養子縁組と遺言を組み合わせて、太郎さんと花子さんが美香さんの養子となり、さらに、太郎さんと花子さんに全財産を相続させるという遺言を書いてもらう方法があります。
これにより、美香さんの相続人は3人となり、遺留分は6分の1となります。
すると、田中家の勉さんが取得する太一さんの財産は、全体の12分の1となり、3,333万3,333円となります。