介護施設へ入居する70歳母、家を「家族信託」することに…認知症による「資産凍結リスク」と回避法を司法書士が解説

介護施設へ入居する70歳母、家を「家族信託」することに…認知症による「資産凍結リスク」と回避法を司法書士が解説
(※写真はイメージです/PIXTA)

2025年には高齢者の約20%が認知症になると予測されています。認知症になると、資産が凍結されかねないことから、親が子に資産を委託して運用・管理する「家族信託」が注目を集めています。今回は、優司法書士法人、上村拓郎代表のもとへ相談のあった、介護施設へ入居する70歳母と子による実家の信託に関する事例を中心にみていきましょう。
※本連載は、上村拓郎氏の著書『相続をちょっとシンプルに: 気づきをうながすためのケアフル相続入門』(灯光舎)から一部を抜粋し、幻冬舎ゴールドオンライン編集部が本文を一部改変しております。

「倒産隔離機能」とは?

民事信託・家族信託には、受託者(財産を託される人)が委託者(財産を託す人)の財産を受託者固有の財産とは切り離して管理できる機能があります。これを倒産隔離機能と呼びます。

 

受託者が破産や死亡をしたときにも、受託者の個人の財産とは切り離して管理されます。もし受託者が破産しても委託者の財産は影響を受けません。また、受託者が亡くなった際に、委託者の財産として管理しているものを受託者の相続人が承継することも当然ありません。不動産であれば登記がされるので、分別管理が明らかになります。

 

しかし、金銭については、預金口座が信託財産として明らかでないときに、受託者がもともともっていた預金なのか、受託者が委託者の財産として預かり管理しているものか問題になることがあります。受託者が破産や死亡したときに受託者の債権者や相続人に権利を主張されてトラブルになる可能性もあります。それらを回避するために、家族信託専用口座、信託口口座(金融機関によって呼び方が違います)を開設してもらう必要があるのです。

 

数年前までは、家族信託専用口座(信託口口座)の取扱いがない金融機関がほとんどでした。しかし最近では、対応する金融機関も多くなってきたことにより、より信託の目的に沿った運用が実現できるようになってきました。不動産だけを信託するのではなく、そこから発生する固定資産税や火災保険料の支払いができるように金銭を信託することも必要です。また物件の修繕費を積み立てていく必要もあるかもしれません。収益物件であれば、さらに、敷金など返還用資金として金銭も信託する必要があるでしょう。

 

このように、信託の目的によって、必要になる信託財産も異なってきます。よって、本人の想いをしっかり盛り込んだ信託目的と内容にしていかなければいけません。それを実現すべく任された家族も、それを運用していかなければならないのです。

 

遺言の付言事項のように、一方的な想いを伝えるツールではなく、本人の想いを託された者が、しっかりその想いを受け取って実現させる動きに法的責任を負わせる信託契約は、信じて託せる家族がいらっしゃるのであれば、生前対策としての選択肢の一つになるでしょう。

 

 

上村 拓郎

優司法書士法人 代表社員

 

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