(※画像はイメージです/PIXTA)

2023年10月から導入される消費税のインボイス制度について、政府・与党が、従来の免税事業者が課税事業者になる場合に、納税額を売上税額の20%とするなどの案を検討していることが判明しました。小規模事業者・フリーランスが被る不利益に配慮した「激変緩和措置」との位置づけですが、どのような意味をもつのでしょうか。問題点とともに解説します。

「激変緩和措置」の内容と問題点

これに対し、政府が検討している「激変緩和措置」は、以下のような内容のものとみられます。

 

・免税事業者が課税事業者に転換した場合の納税額を売上税額の20%とする(3年間)

・年間売上高1億円以下の事業者は、1万円以下の取引についてインボイスなしで仕入税額控除できるようにする

 

しかし、これらには以下の問題点の指摘が考えられます。

 

第一に、納税額を売上税額の20%とするというのは、簡易課税制度との関係が不明瞭であり、納税の計算をいたずらにややこしくするだけです。

 

すなわち、簡易課税制度とは、前々年度の売上高が5,000万円以下の事業者について、消費税の計算事務の手間を省くために、売上税額の一部のみを納税すればよいという制度です。

 

納税すべき「売上税額の一部」は、業種ごとに以下の通りです(国税庁HP「タックスアンサーNo.6505 簡易課税制度」参照)。

 

・卸売業:10%

・小売業、農業・林業・漁業:20%

・農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡にかかる事業以外)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業:30%

・運輸通信業、金融業・保険業、サービス業(飲食店業以外):50%

・不動産業:50%

・その他の事業:40%

 

これをみると、「卸売業」(10%)と「小売業、農業・林業、漁業」(20%)にとっては激変緩和措置は意味をなしません。また、その他の事業者についても、3年間の時限措置ということは、単なる問題の先送りに終わってしまう可能性があります。

 

また、簡易課税制度と激変緩和措置のどちらが自身にとって有利なのかの判断に悩むことも想定されます。

 

第二に、1万円以下の取引についてインボイスなしで仕入税額控除を認める件については、対象となる取引の規模が小さく効果が限定的です。また、1万円以下の取引とそうでない取引を峻別して計算するとなると、事務がかえって煩雑になる可能性があります。

 

このように、現状想定される激変緩和措置は、いかにも付け焼刃、場当たり的な印象が拭えず、インボイス制度により集中的に不利益を受ける小規模零細事業者にとって、救済措置としての実効性が疑わしいものといわざるを得ません。

 

インボイス制度を導入すること自体の是非、あるいは消費税そのものの是非はさておき、導入するとしても、免税事業者の制度がおかれていることとの整合性、小規模零細事業者がおかれている状況等を十分に考慮し、それらの事業者にとって酷な事態を招かない措置を講じるべきであるといえます。

 

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