(※画像はイメージです/PIXTA)

2023年10月から導入される消費税のインボイス制度について、政府・与党が、従来の免税事業者が課税事業者になる場合に、納税額を売上税額の20%とするなどの案を検討していることが判明しました。小規模事業者・フリーランスが被る不利益に配慮した「激変緩和措置」との位置づけですが、どのような意味をもつのでしょうか。問題点とともに解説します。

◆「益税」叩きは不公平・アンフェア

このことについて、免税事業者は、今まで本来納めなければならなかった消費税を懐に入れる「益税」を行っていたのだからやむを得ないという論調がみられます。

 

しかし、ことはそれほど単純ではありません。「益税」とやらの実態がどの程度のものなのか、疑問があります。

 

すなわち、消費税法上、消費税相当額を価格に転嫁することが強制されているわけではありません。これは、上述した「間接税」という特殊な性格のためです。このことが、話をややこしくしています。

 

まず、もっぱら消費者を顧客とする免税事業者は、消費税の納税義務を負わない代わりに、商品・サービスの価格に消費税相当額を転嫁してこなかった例が多数みられます。むしろ、このような事業者も仕入れを行う際には消費税相当額を支払っているため、その分だけ損をしているとみることもできます。これを「益税」と断じるには躊躇を覚えます。

 

次に、業務委託等で働く個人事業主・フリーランスの免税事業者は総じて弱い立場にあり、これまでどの程度、商品・サービスに消費税分を転嫁できていたかも疑問です。もちろん、建前としては「価格転嫁拒否」は法令で禁じられています。しかし、零細事業者ほど他の事業者との価格競争が熾烈であることを考慮すると、そもそも価格交渉と消費税の価格転嫁拒否との境界は不明確といわざるをえません。

 

そのような実態があるとすれば、むしろ、取引先のほうが、本来、免税事業者に支払っていない消費税相当額を、仕入れ分として控除している可能性すらあるといっても過言ではありません。これも実質的には「益税」と表現できます。

 

このように、免税事業者の「益税」の実態には疑問があり、しかも、免税事業者以外の事業者にも実質的な「益税」の可能性が考えられます。そうであるにもかかわらず、免税事業者の「益税」のみをあげつらってことさら問題視されるのは、公平性を欠き、アンフェアであり、弱いものいじめの構造といわざるを得ません。

 

◆免税事業者の制度趣旨と矛盾する

さらに、インボイス制度は免税事業者の制度趣旨を無にするものであり、法制度内部での整合性がとれません。

 

すなわち、免税事業者の制度の趣旨は、そもそも、零細な事業者の消費税の計算にかかる事務の負担が重くなることを考慮してのものだったはずです。

 

インボイス制度の導入により、多くの免税事業者が事実上、課税事業者になることを余儀なくされることになります。

 

これまでなかった消費税の納税義務を負い、しかも、事務負担が多少なりとも増加するという二重の負担を強いられることになれば、免税事業者の制度がおかれた意味がありません。

 

免税事業者のままで済むのは、インボイスを顧客に発行する必要のない以下の事業者くらいです。

 

・一般消費者が顧客である事業者

・取引先の大多数が簡易課税制度(後述)を利用している事業者

 

このように、インボイス制度は、このまま導入されれば、従来の免税事業者にとってことさらに過酷な制度となることは疑いがなく、税の公平性の見地から大いに疑問があるものといわざるを得ません。

 

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