前回は、リスクマネジメントの基本となる「分散投資」について取り上げました。今回は、暦年贈与と相続時精算課税に設けられている優遇措置を見ていきます。

「特例贈与財産に係る贈与税」は税率が軽減

マネジメントでは節税対策を常に見直していく姿勢が求められることになります。とりわけ税制度については改正が頻繁に行われますので、その動向に絶えず目を配ることが大切となるでしょう。

 

今回の改正でも、相続税対策として活用されることの多い、①暦年贈与と②相続時精算課税について大きな改正が行われました。今後の相続税対策にも大きく影響してくることから、ここでその詳細について確認しておきましょう。

 

まず、①暦年贈与については、2015年以降は、20歳以上の者(子や孫)が直系尊属から贈与を受けた財産(=特例贈与財産)に係る贈与税の税率と、それ以外の人から贈与を受けた財産(=一般贈与財産)に係る贈与税の2種類に分けられることになりました。

 

そして、一般贈与財産に係る贈与税については、2015年1月1日以降の贈与からは、1000万円超1500万円以下の部分については45%の税率に引き下げられ、1500万超3000万円以下の部分については50%の税率となり、3000万円超の部分については55%の税率(最高税率)に引き上げられます。

 

それに対して、特例贈与財産に係る贈与税に関しては、

 

300万円超400万円以下の部分については一般税率より5%低い15%に、

400万円超600万円以下の部分については一般税率より10%低い20%に、

600万円超1000万円以下の部分については一般税率より10%低い30%に、

1000万円超1500万円以下の部分については一般税率より5%低い40%に、

1500万円超3000万円以下の部分については一般税率より5%低い45%に、

3000万円超4500万円以下の部分については一般税率より5%低い50%となり、

 

最高税率の55%は4500万円超の部分について適用されることになります。

「祖父母から孫への贈与」にも優遇措置

次に、②相続時精算課税の改正点です。相続時精算課税は、生前に贈与された財産について2500万円までは非課税の扱いとしておき、非課税とした部分については相続時に相続財産に加算し、相続税で精算するという制度です。

 

この制度を利用すれば、被相続人の生前に、贈与額が2500万円以内の範囲であれば、贈与税を支払わずに済むわけです。また、贈与額が2500万円を超える場合には贈与税が課されるものの、その税率は一律20%になります(しかも納付した贈与税は、相続税額を計算する際に控除されます。控除しきれない金額は還付されます)。

 

このような相続時精算課税制度が適用されるのは、従来、受贈者については20歳以上の推定相続人、贈与者については65歳以上の父母とされていました。それが、改正の結果、2015年1月1日以降は、前者については20歳以上の推定相続人または孫に、後者については60歳以上の父母または祖父母となりました。

 

対象範囲が広がったことから、相続時精算課税制度はさらに使い勝手がよくなったといえるでしょう。

本連載は、2014年11月27日刊行の書籍『地主の相続財産は法人化で残す』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地主の相続財産は法人化で残す

地主の相続財産は法人化で残す

小澤 豊,川本 泰正

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税をできるだけ節税したい、遺産分割で家族がもめてほしくない──。地主にとって相続は、頭の痛い問題です。 多くの地主の相続財産は、現金ではなく土地が大半のため、いざ相続になったときに預貯金だけでは相続税を支払…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録