(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産所有者が亡くなった際に、登記名義を変更する相続登記。長年放置してしまうと、思わぬ憂き目に遇うかもしれません。今回は優司法書士法人、上村拓郎代表のもとへ相談のあった、50年以上相続登記を放置した不動産の遺産分割に関する事例について解説します。
※本連載は、上村拓郎氏の著書『相続をちょっとシンプルに: 気づきをうながすためのケアフル相続入門』(灯光舎)から一部を抜粋し、幻冬舎ゴールドオンライン編集部が本文を一部改変しております。

相続登記を放置し続けると…

このケースでは相続人のうちの一人が生活保護受給者であったことにより、まったく疎遠になっていたその相続人も遺産分割協議により法定相続分の承継をしなければならなくなりました。依頼者が不動産の名義を単独で相続するために、その相続人に代償金を支払うことで解決しました。

 

お互いに弁護士が代理人に立つことでそれなりに時間も費用も必要になった案件です。生活保護受給者を交えた遺産分割協議が必要になると、行政として一定の相続分の主張をしなければならなくなることがあります。相続人や受給者本人の意向は叶わないことが多いので注意が必要です。

 

不動産の名義人の方が亡くなられてからある程度早い段階で、相続登記手続きをされていたのであれば、このような状況にはならなかったでしょう。不動産の名義人が亡くなった段階での相続人は四人だけです。それを50年以上放置することで、どんどん相続人の数が増えたのです。四人ならば、話し合いもスムーズであっただろうに、30人以上の相続人一人ひとりに実印と印鑑証明書をいただく作業は、揉めなくても骨が折れます。

 

その業務自体は司法書士が主体になりますが、依頼者にもいろいろな書類をご用意いただかなくてはいけません。相続人が増えれば、取得しなければならない戸籍の数も多くなりますし、それを手配している時間も費用もかかってしまいます。そして、相続人の高齢化によりほかの相続人から印鑑をお願いしている間に、逝去されるケースもあります。

 

時間の経過のリスクはさまざまです。手続きが増えれば、当然費用は増えてしまいます。早く手続きを進めてほしい依頼者の想いとは裏腹に時間はかかり、その上、出費は増えるという司法書士としては心苦しい業務となります。

 

 

上村 拓郎

優司法書士法人 代表社員

 

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※本連載は、上村拓郎氏の著書『相続をちょっとシンプルに: 気づきをうながすためのケアフル相続入門』(灯光舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

相続をちょっとシンプルに 気づきをうながすためのケアフル相続入門

相続をちょっとシンプルに 気づきをうながすためのケアフル相続入門

上村 拓郎

灯光舎

自分だけでなく、家族や身のまわりの人たちと一緒に相続を考えるきっかけにしてもらいたい本。 本書は、相続対策の実務よりも、まずは相続を知るために「読む」ことを意識した相続エッセイです。相続は発生してからではなく、…

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