「米国10年債利回り」の上昇
米国10年債利回りは3.7%台まで低下してきた。そもそも市場のインフレ期待はこの数カ月、ずっと安定、もしくは若干低下気味で推移してきた(グラフ赤線=ブレークイーブン・インフレ率)ことを考えれば、名目の10年債利回り上昇をもたらしたものは、[1]FEDのスタンスのタカ派化、[2]欧州金利の上昇であろう。
その欧州の状況もかなり落ち着いてきた。一時、大きく売られたイタリアの10年債利回りも4%を下回る。
財政を巡る混乱が一時ほどひどくなくなっていることに加え、エネルギー危機の懸念が薄らいでいることが背景にある。欧州は今年の冬は相当厳しいとみられていたが、実際は暖冬だ。それを反映してか、天然ガスの価格はウクライナ危機前に近づくほど下落している。
[1]のFEDのスタンスについても、FRB副議長のブレ―ナード氏がブルームバーグのイベントで、「恐らく利上げペース減速への移行が近く適切になるだろう」と発言するなど、タカ派の修正がみられる。こうしたことから市場が見込む次回FOMCでの利上げ幅は0.50%との予想が8割を占める。1ヵ月前は、0.75%が3分の2で、0.50%の予想は3分の1しかなかったことからは大きく変化した。
おそらく利上げ幅はサプライズにならないだろう。問題はFEDが示す来年以降の経済見通しである。今年最大にして最後のビッグイベントまであとひと月足らず。もろもろ準備をしよう。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
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