財産の権利を確定しておける「生前贈与」
収益不動産をある特定の相続人に相続させたい場合、「遺言書に記載する」という方法もありますが、「生前贈与しておく」という方法もあります。
遺言書の場合、「この人物に相続させる」と記載したとしても、兄弟間の話し合いによりそれが叶わないケースもありますが、生前贈与をすれば、亡くなる前にその財産の権利を確定させることができるのです。
生前贈与には、税法上2つの贈与方法があります。
1.「暦年贈与」
一般的な贈与の方法です。年間110万円までであれば贈与税はかかりません。税率は超過累進税率となり、贈与額により10~55%となります。
2.「相続時精算課税」
相続時に精算することとなりますが、2,500万円までであれば贈与時に贈与税はかかりません。税率は2,500万円を超えた部分に対し20%となります。
たとえば、5,000万円の収益不動産を子どもに贈与した場合の贈与税額は
暦年贈与:5,000万円-110万円=4,890万円×55%-640万円=2,049.5万円
相続時精算課税制度:5,000万円-2,500万円=2,500万円×20%=500万円
と、納める贈与税額にかなりの差が出ます。
このため、収益不動産を生前贈与する場合は、相続時精算課税制度を選択するほうが有利でしょう。
「相続時精算課税制度」のメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
1.金額が大きい物件を贈与した場合、贈与税額を抑えることができる
2.将来値上がりする物件の場合、贈与した時点の価額で相続税を計算できる
3.収益物件を贈与する場合、その物件から発生する家賃等も贈与を受けた人の所得となる
3については、オーナーが所有しているとその収益は増え続け、相続税の課税対象が増えることになりますが、生前贈与をすることで相続財産を圧縮することができます。
一方デメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
1.贈与者が同じ場合、相続時精算課税制度を1度でも使うと暦年贈与へ変更できない
2.相続時精算課税制度を利用すると、その贈与した土地は小規模宅地の特例が使えない
野村・多賀谷会計事務所 税理士
AFP
宮路 幸人氏 監修
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