(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、マネックス証券株式会社が2022年11月11日に公開したレポートを転載したものです。

企業の大規模なリストラがおよぼすもの

企業の動きとしても人員整理のニュースが増えてきた。アマゾン・ドット・コムは増員につながる新規採用を停止すると発表。配車サービスのリフトは全従業員の13%に相当する約683人を削減すると明らかにした。強烈だったのはメタのリストラだ。メタは9日、世界で1万1,000人超を削減した。テック業界では10月までの人員削減が前年の2.6倍の3万人近くに増えているとの報道もある。いずれ雇用統計にも減速感がより鮮明に出てくるだろう。

 

FF金利先物は、9日時点ではターミナルレートは5%超、ピークのタイミングは来年半ばを見込んでいたが、CPIを受けてわずか1日で大きく低下した。ターミナルレートは5%を越えない4.875%、ピークも来年の5月に前倒しとなった。FEDの利上げは12月に0.5%に利上げ幅を落とし、来年前半には利上げが打ち止めになるだろう。年後半には利下げに転じるものと予想される。

 

[図表1]FF金利先物フォワードカーブ

 

[図表2]NYダウ平均

 

NYダウ平均は年初につけた高値から9月末の安値までの下げ幅に対する50%をわずか1ヵ月で取り戻した。相場格言では「半値戻しは全値戻し」という。CPIを受けた昨日の大幅高でさらにフィボナッチの61.8%まで上昇している。最高値まで、あと下げ幅の3分の1強を残すだけの水準まで戻ったということだ。

 

利上げ加速、長期金利上昇で下げた相場なので、その反対のこと、すなわち利上げの減速~停止で長期金利がピークアウト~低下に向かえば、戻りを辿るのは道理である。米国株は「不景気の株高」が始まったように思われる。

 

金利がピークアウトしなければ株価の底入れはないと従来から述べてきた。これで金利のピークアウトは、ほぼ確実といっていいだろう。問題は、前回のレポートで指摘したとおり、業績見通しの低下に歯止めがかかるか、である。

 

ほんの、かすかな光明だが、早くも下げ止まりの兆しはある。グラフはNASDAQ100構成銘柄の12ヵ月先予想EPSである。微妙なところだが、確かに直近は上向いている。このまま底入れできるか要注目だ。背景には米国IT企業の素早い危機対応がある。人員削減は確かにネガティブなニュースだが、これほど迅速かつ大胆に手を打てば、立ち直りも早いということだろう。

 

[図表3]NASDAQ100構成銘柄の12ヵ月先予想EPS

 

実際、アマゾン、マイクロソフト、アルファベットなどの予想EPSは上向きになっている。あとは最大の時価総額を誇るアップルのEPSが上向くのを待つばかりだといえる。企業業績見通しさえ下げ止まれば、金利の低下を受けて、株価は上がるべくして上がるしかない。それを待って、本格反騰のスタートとしたい。

 

 

広木 隆

マネックス証券株式会社

チーフ・ストラテジスト 執行役員

 

 

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